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あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

国立劇場で歌舞伎2本立てをみる 

2019-12-21 13:36:47 | Weblog


蝶人物見遊山記第327回


まずは近松半二作の「近江源氏先陣館」。大坂の陣で敵味方に分かれた真田信之、幸村兄弟を鎌倉時代の佐々木盛綱、高綱兄弟に置き換えた一族悲劇の物語だが、前者のイメージはあまり思い浮かばず、むしろアンチ北条に終息するまとめ方になっている。

それにしても二股膏薬を貼る盛綱、大人の不可解な共同戦略の犠牲になる高綱の子、小四郎の訳知り顔の切腹など、半二の脚本はどうにも後味が悪い。

かてて加えて松本白鸚の細くて甲高くて外へ向かわず喉の中へ内攻するセリフの連発は、ますます観劇の印象を暗くして、泣くに泣けないお涙頂戴演目であった。

後半の「蝙蝠の安さん」はチャップリンの「街の灯」を原作にした珍品だが、木村錦花の脚色に松本幸四郎の演技が見事にはまっていて、これは思いがけない師走の贈り物であった。

 
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