22期生の塩谷です。2023年5月5日に「若かりし日の3種の神器」というタイトルで、高校生の下校時にワカメラーメン、うまい棒、ガリガリ君をよく食べていたことを書きました。その時はガリガリ君(赤城乳業)を題材にしましたが、今回は“うまい棒”について書いてみます。
数日前の日経新聞の記事なので記憶している人もいると思いますが、『うまい棒に「2万円」ケース』との見出しに目がとまりました。何のことかと読んでみると、幼稚園児が“うまい棒”をカバンに入れて持ち帰ったところグチャグチャになり、悲しみに暮れているのを見て、アルミケース職人の祖父がこんな思いを2度とさせたくないと誓ってできたのが、「うまい棒専用ケース」。作ったのは勤務先のアルミケースメーカー。仕上がりも良くて提案を受けた“うまい棒”の販売元である“株式会社やおきん”も公式グッズとして即座に認定。1本12円の“うまい棒”に2万円のケースを買う人はいないと思われましたが、エピソードも手伝ってかクラウドファンディングで目標としていた30倍の150万円も集まったとのこと。
失礼ながら、“やおきん”には赤城乳業のような戦略的な自社のプロモーションは見当たりません。実際、“やおきん”のコーポレートサイト(≠やおきんドットコム)をみてもずいぶん昔に行名が変わっている銀行名がそのままだったり、2023年の情報がいっさい更新されていなかったりと、とても力をいれているようには見えません。でも、安い駄菓子が姿を消して以降も「自分で選んで自分で買えるものを」という子供目線で提供している「国民的駄菓子」は既に老若男女問わず多くの人に知られています。
日経新聞は、物価高騰が続くなかで1本12円にとどめ、「気遣いと優しさ」というマーケティングはぶれていないと評価しました。診断士である私たちは、ブランディングやマーケティング、プロモーションといった言葉を使って語りますが、この隅田区にある企業が提供する「国民的駄菓子」は、多くが経営を通じて自然とできあがったブランドです。そんな同社にはひっきりなしにコラボ依頼がきて、自社で多額の広告宣伝費を掛けずとも、顧客の世代を超えてブランドが引き継がれています。日経新聞のサブタイトルも「マーケの神髄、利他にあり」と素晴らしい。
ただ、“やおきん”はお菓子、食料品の企画販売を行うファブレス企業、実際に作っている企業は他にあります。12円で安心安全なお菓子を作っている企業も含めて、ちゃんと儲けられていれば良いなと思いました。本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。