亡き父の誕生日は1923年7月31日。その1ヶ月後に関東大震災がある。
もっとも父の生まれは群馬・榛名山の中腹であるから、被害には遭遇しなかったが。
丁度、震災100年の今年、ドキュメンタリーの森達也監督が手がけた劇映画。
映画は予習なしで観る派だが、史実に基づくこの作品はウィキペディア等で予備知識を入れた。
福田村(現千葉県野田市)で起きた、日本人による日本人9人を手に掛けた虐殺事件。
殺害された香川の薬売り一行は、当時の世情で忌み嫌われていた朝鮮人と間違われたわけだが、彼らもまた被差別部落の出自であり、日常的に差別される側に居たのだ。
井浦新、永山瑛太は既にベテランの域であるが、戦争未亡人役のコムアイ(水曜日のカンパネラ初代ボーカル)、
義憤に燃える千葉日日新聞の記者役 木竜麻生の演技が光る。
そして久し振りにスクリーンで見た田中麗奈、全てががんじがらめの日常に奔放に生きる女性役を演じきった。
日常の何気ない会話の中の差別感情が、震災後の流言(ひとえに噂の流布)
とダイレクトに繋がって行くさま、が丁寧に描かれている。いま観るべき作品。