Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

宇都宮日弁連会長と西尾幹二氏の奇妙なロジック

2010-04-13 11:16:37 | 世代間問題
VOICEは論壇誌の中で「漸進する保守」というキャラが立ってきた気がするが、それでもまだまだ
後退する保守も顔を出す。
西尾幹二の「愛国心なき経営者は職を去れ」を読めば、“後退”と言う意味がよくわかると思う。

書く気もしないが、トヨタは米国の罠にはまった、だいたいグローバル化、脱日本なんて言葉を使う
経団連の連中はけしからん、自社の利益より日本を第一に考えろ、と続く。
要するに、愛国心を忘れたからバチが当たった、ということらしい。
この人は企業の国際競争力が国力に直結しているということすら理解できていないのか。
僕は保守ってよく知らないんだけど、他の論者もこういうノリなんだろうか。
だとしたら左より救いようが無い。

まあ編集部も分かっているのか、ちゃんと「トヨタ メーカー目線の敗北」(片山修)という優れた論考も
載っているのでこちらをおすすめしたい。
ちなみに、そちらの分析では西尾論文とは真逆の結論で
「急激な成長の一方で、取締役が全員日本人男性という風に、質的に
グローバル企業というには程遠かったこと」
に求めている。誰がどう考えたってこっちだろう。

一方、文藝春秋5月号の宇都宮日弁連会長「弁護士の貧困」も負けじと凄い。
どう凄いのかというと、取り戻した過払い金の過半をピンハネするような悪徳弁護士の増加は
「司法制度改革の結果、弁護士が増えて、一人頭のパイが減ったから」だそうだ!

つまり、この人の頭の中には、健全で心優しい弁護士像みたいなものがあって、それを可能とするだけの
収入は無条件で(国民が)負担するべきであり、その収入額で総売り上げを割った数しか弁護士に
しちゃいけないということだ。
それって身分制度じゃないか。

博士が余っているから「大学院博士課程を減らそう」しか言えない大学教授もたいがいだが、
どうしてこういう人達は椅子が無かったらすぐに入口を絞ろうとするのか。
新規参入で競争をうながし、サービスや生産性を向上させようという発想がどうして無いのか。

まあ、自身が手掛けたグレーゾーン金利撤廃で結果的にその手の弁護士が増えたわけで、
「お上が悪い」と責任転嫁したくなる気持ちもわからんではないが、それにしても氏のダブルスタンダードぶり
は目に余る。
たとえば、氏は国が支出削減の一環として進める司法修習費の貸与制(現在は国からの給付制)を
以下のように批判する。

経済的な余裕のある人ばかりが法曹を目指すようになれば、それ自体問題だろう。
私が今の時代に生まれていれば、弁護士にはなれなかった。


では聞くが、志も能力もある若者が「もう定員いっぱいだから」というだけの理由で法曹に進めなくなること
は問題ないのか。

論文は「労働組合等と連携して闘っていきたい」と締められているが、僕にはどうしても連合あたりと
既得権死守のための反動タッグを組んで「労働者は連帯しよう」と空疎なスローガンをがなっている
イメージしか湧いてこない。

さて、この両者、立場も価値観も大きく違い、おそらく一緒にされるのは嫌がるだろうが、
発想はとても近いものがある。
簡単に言うと、どちらも頭の中に「こうあるべきだ」というひな形があって、現状をよりよく
改善するための進歩的視点が欠落している。

今でもたまに保守か、リベラルか?なんて質問をされることもあるが、そんな区切りは前世紀の残骸
なので無視して構わない。21世紀世代に必要なのは、ただ改革のみであり、上記のような老人は
どちらも単なる守旧派である。

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27 コメント

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Unknown (@)
2010-04-13 12:29:05
誰かが指摘していたのですが、人間は物事を認識する際に自分にとって見たい現実を見る生き物だと。一般人でもそうですが、お偉いさんくらいは多様な物の見方を提示してくれと思います。
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宇都宮弁護士!!! (新卒制度を禁止しろ!)
2010-04-13 12:39:17
素晴らしい。
今回の文面は気持ちいいですね!
今週の日経ビジネスでも宇都宮弁護士は同じこと言ってます。
既得権者!!!
いい人ぶってる悪い人なのか、本当にいいことだと思っているのか。。。
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弁護士の貧困による濫訴の恐れ? (ns)
2010-04-13 13:36:36
という理由付けも良く見ますが、そんなことはないでしょう。
正当な権利の主張ならどんどんやればいい。
むしろ、町の顔役さんとか広域指定の方々とかが出てきて解決してくださる方が構造として怖い。

稼げないならそれ相応に暇でしょうから、弁護士法・弁護士職務基本規程等に反しない範囲でバイトでも起業でもしながら、サービスや知識を磨けば良いと思います。
実際に、訴状に請求原因すらまともに書けなかったり、依頼者に訴状の写しすら送付しなかったりするようなひどい代理人もいるので、とっとと淘汰された方がよっぽど市民や社会のためになります。

付言するなら、一義的に正義が定まるかのような妄想が、弁護士のみならず、審級の高いところの裁判官にも散見されることがとても残念です。
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Unknown (おかゆ)
2010-04-13 16:27:28
(本当かどうか知らないですけど)一人あたりのパイが減った事によって、悪徳弁護士が増えたのであれば、

「弁護士なんて給与次第で、社会のゴミに変貌する犯罪者予備軍に過ぎない。オラオラ庶民ども、俺たちにお金よこさないと悪さしちゃうよ~?」って言ってるようなもんじゃないかと。


ところで「悪事の非を問われるや、関係ない話持ち出して”俺は被害者だ!”と喚きまくる」って、タチの悪い犯罪者がよくやりますけど・・

マスコミとか弁護士とか教授、医師などなど・・「権威&聖職者」的な人達って、自分たちが問題が起こすと、取り合えず「政府のせいだ!社会のせいだ!」ってなってるような。気のせいですかね・・。









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Unknown (kenji)
2010-04-13 16:58:21
弁護士などと聞こえはいいが内実は代言人の事で、世間商売で言えばたかり屋の部類にすぎない。
<控えろう、下賎の者>と水戸黄門なら言うだろう。何時から弁護士が今のような意識を持つようになったか不思議である。
 知人に全くの素人だが、さる県の弁護士会の副会長と、遣り合って、勝った人がいるが、彼は<弁護士はやくざより酷い>といっている。また弁護士が<あれほど莫迦の集まりとは知らなかった>とも言った。
 彼に言わせれば弁護士でまともな人は十人に一人で、あとは離婚訴訟と遺産相続と破産管財人で飯を食っているだけで、破産管財人は裁判所が決めるから、弁護士相撲所みたいなものさと私に話した。
 とにかく付き合わないように生きることだが、これだけ弁護士が増えると、人々は困るだろう。何しろ頭がいい、たかりやだから、始末に終えない。

現代社会はごく普通の生きている人があんぐり口を開けるようなことを、社会のお歴々人が真顔で言うから、一瞬ぽかんとするか、冗談だろうと思うことが多いが、冗談ではなく本気である世界が来たという事だろう。
 本来頭がいいとされている人々が、実は頭が悪いというかなんと言うか。100円の収入で101円使っていけば貯金がなくなったときにはそれができなくなる事とが分かっているのは分からないのか、それが分からない、不思議な世界である。
 皆さん自己防衛ををといわざるを得ない。
極端な話、ピストルを持て防衛する必要が来ているとkenjiは思わざるを得ない現象がネットにながれている。
 弁護士と法曹を維持する人々とは全く別である。
 
 
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こっちのほうがいい (みたむら)
2010-04-13 18:40:51
ツイッターのまとめが続いてたんで、いつも通りのブログだと安心して読めますね。

いつも中身のある文章を書かれるので、ツイッターのまとめがどうにも違和感を感じてしまいます。

ツイッターはやってないんですけど、直近のつぶやきならそれでも読めますし、つぶやきは泡雪のようにネットの海へ消えていくのが美しいのかなとも思っていたり。

一読者の戯言です。ご容赦を。
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宇都宮弁護士はいかにも貧困ビジネスですが (氷河期戦士)
2010-04-13 20:02:11
>博士が余っているから「大学院博士課程を減らそう」しか言えない大学教授もたいがいだが、どうしてこういう人達は椅子が無かったらすぐに入口を絞ろうとするのか。新規参入で競争をうながし、サービスや生産性を向上させようという発想がどうして無いのか。

Fランク大学を見ればよく分かるでしょう。大学定員を増やし、城さんが受験された頃のように、一生懸命勉強
したけれども、どこの大学にも受からなかったという人はまずいなくなりました。(=入り口の拡大)しかし、
それによって、日本の大学の質は上がっているのでしょうか?むしろ、大学の入り口を拡大し、大学を乱立させ
たことで、企業側も「大学卒」というモノに対して懐疑
的になり、何度も面接をして、学生の就職活動を長期化
させなくてはならなくなりました。

また、弁護士や博士を養成するには彼ら自身だけのカネではなく、我々の多額の税金を投入される羽目になりま
す。だから、予めペーパーテストのような客観的な基準で入り口で選別する必要があるのです。

あと、司法試験改革によって、試験一発からロースクー
ルに変わったところで、既得権保持にはなり得ません。
元々、間口が激狭だったところの間口を広げたのを昔に
戻すだけです。企業が年次によって新卒一括採用を絞るのとは話がちがいます。

宇都宮弁護士自身は、いかにも胡散臭さがにじみ出ていますが、とにかく規制を撤廃すればよいという考えはおかしいでしょう。



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Unknown (QEE)
2010-04-13 20:33:31
雇用は健全な三権分立から
http://www.jcer.or.jp/column/takenaka/index124.h
tml

現在の労働市場の歪みも、(一面的)正義感に溢れた司法が作り出したもの、と言えそうですね。
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弁護士の資格 (sakyo)
2010-04-13 20:41:25
 宇都宮さんの主張されるように悪徳弁護士が増えたのならば、例えば司法試験にその様な人を排除する適正検査を行えば良いはずです、あるいは開業後にも数年ごとに適正検査を行う、などすれば良いのではないでしょうか。
 入り口を絞ろうとする発想は、小生の知人で博士取得後に旧国立の研究所に勤める人間も同様なことを言っていました。博士を取得しても(大学、国公立の研究機関への)就職口がないのならば博士課程の定員をふやすな、と。民間企業に勤める、あるいは海外に職を求める、という発想がありません。
 VOICE5月号は、購入しましたが、西尾幹二さんの記事は読んでいません。タイトルからしておよその内容は想像がつきますから。VOICEにはあまりこの手の記事は掲載されなかった気がするのですが、少し文芸春秋に近づいてきたのでしょうか。VOICEは経済という切り口からみた理屈で割り切った記事が掲載させることが多かったので時々購入していたのですが。あまりこの手の記事が増えるなら今後購入することはなくなります。ただでさえネットで記事を読むことが増え、雑誌を買わなくなってきたのに。
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派遣村の主導者だったんですよね。 (松本孝行)
2010-04-13 20:50:00
 宇都宮さんって確か派遣村の主導者だったんですよね。いろいろとよくないウワサを聞いていますので、まぁ既得権益者という意識だと前から判断していました。

 今、たちあがれ日本が注目されたこともあって、「保守か革新か」という流れになるという評論家なんかもいますけど、完全に時代遅れの考え方としか思えません。

 やはり城さんの言うように「既得権益か非既得権益か」の二極対立が一番わかりやすいし、今後広まっていくと思います。
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