Joe's Labo

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というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

『フクシ伝説』 好きなことを好きなだけやってきた親子の物語

2010-11-16 11:22:37 | その他
フクシ伝説 うちのとーちゃんは三冠王だぞ!
落合 福嗣
集英社


あらたまって紹介するような本でもないのだけど、暇つぶしに読んでみたら、いろいろと
考えさせられてしまったので紹介。三冠王の一人っ子、落合福嗣くんの自伝である。
まだ学生の身分で自伝というのも、なんだか凄い話だが。

様々な芸能人にため口をきいたり、女子アナにセクハラしたり(小学生時)、
篠塚に「おまえの背番号、父ちゃんによこせ」と詰め寄ってみたり、そういう伝説の検証
から入り、後半は父である落合監督との対談に入るのが、ここが色々な意味で深い。

有名な話だが、落合博満というのは、いわゆる野球エリートコースの出身ではない。
甲子園には出たこともないし、大学野球も活躍どころか半年で中退した。
本人いわく、「7回も野球を辞めた」そうだ。
中でも、最後の辞めっぷりが凄い。大学入学して三カ月、野球も大学も何もかもが嫌になり
ぷぃっと寮を出て2週間以上、公園で寝泊まりしていたという。
それから大学辞めて田舎で日雇い仕事を1年以上続け、二十歳になってようやく就職した
のが東芝というわけだ。ちなみに、雇用形態は期間従業員。
ここから、彼の野球人生が事実上スタートすることになる。

あんまり詳しくないからわからないけど、他にこういう紆余曲折の経歴を持つプロ選手は
いるだろうか。まあ、それだけ選手としての落合が凄かったということなんだろう。
要するに、レールに乗らない人生を自ら実践して見せているわけだ。

そんな氏だけに、一人息子の教育も型にははまらない。
じっくり時間をかけて、自分のやりたいことを見つけ出せというスタンスだ。

「まあ、オレだって高校から数えると、東芝府中に期間従業員として入るまで約5年間、
まともに野球をしていなかったわけだ。そんな人間がプロ野球に入って、今では監督を
やらせてもらっている。人生どうなるかわからんぞ」
「うん、とーちゃん。ボクも焦らずに自分のやりたいことを探していくよ。それでこれが
ボクの生きる道だっていうのが発見出来たら、その道を進んでいこうと思う」

それが見つかるのは個人差があって、落合のように十代で大学ばっくれて後楽園で野球
見てるときに運良く見つかった人もいれば、30歳過ぎても見つからない人もいる。
いや、一生見つからずに終える人も少なくないはず。そういう個人差はあっていい。
問題は、それが見つかった時点で、人生の軌道修正ができるかどうかだと思う。
日本においては、そこはとても硬直的である。
結局のところ、個人のキャリアという点で生じている閉塞感というのは、突き詰めれば
ここに根源があるのではないか。

何にせよ、自力で軌道修正できるほどの資質がある落合と、のんびり構えていられるフクシ君
は恵まれているとは言えるだろう。

ときどき、仕事柄、年功序列や終身雇用といった枕木が綺麗に無くなった社会について
考えることがある。そういう社会ではどういう風に生きるべきか。
落合式の生き方、子供の育て方というのは、そのひとつのモデルになっているように思う。
あんまり年齢が重要じゃなくなって、ストレートじゃなくて寄り道してる奴の方が「面白い」
なんて評価されるような時代になれば、好きなこと好きなだけやった人間が本当の勝ち組に
なれるはず。

フクシ君がとくに何か偉いことしたわけでもないのに連載やったり自伝出しちゃったりする
だけの需要があるのは、彼にどこかしら新しい時代の匂いが漂っているからではなかろうか。

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29 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-11-16 12:47:44
フクシさんが何かすごいことやっているわけじゃないのに自伝をだせたのは、

・パパが物凄い偉くなってしまってしまったから。
・パパに取材したくてもできないので仕方なく息子にパパのことを聞いている。

というだけの話です(笑)

野球界は実力主義ですが、実力がない場合は黒い話が耐えませんね。35才で退職することになるが、その後は職がないとか。かつてそれなりに知られた選手(たまに代走などで器用されていた選手とか…)で今どうしているかわからない選手なんて結構いますよ。

野球のいけないところは、メディアと相互利益の関係にあるので、メディアもそういう部分はあまり流さないんですよね。

よく野球界の雇用は昭和の雇用に比べて華々しく語られることが多いですが、よくいえば実力主義、悪くいえば業界が人を使い捨てにしている構造だと思います。

ああいうのをみると、競争のためには企業・国のどちらかがセーフティネットをもたなければいけないと感じますね。
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おぉ・・ (井出 隆一)
2010-11-16 13:02:36
城さんの紹介がなかったら多分、本屋で見かけてもスルーしちゃうところだったと思います。(笑
凄いんですね、落合って・・。
僕には小学生の頃からプロ目指して野球やって、高校で諦めた友人がいます。彼なんて相当なレベルなのに一体どういう世界なんだと思いました。
「五年まともにやってない」って・・(笑
天才は違いますね。
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凄い波乱万丈な人生 (スターチスの花言葉)
2010-11-16 14:55:07
落合監督の采配は
良く言えば堅実で
手堅いのですが一部 のマスコミでは面白くないと言われてしまいます。
しかしこのブログ
の内容の落合博満さんの波乱万丈の人生は赤の他人が見ると 凄い人生ですね。
落合博満さん本人は 大変だったでしょうが、マスコミにあまり良くかかれない
前西武ライオンズの 森まさあき監督にちょっと似てるかもしれませんね。
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Unknown (Unknown)
2010-11-16 14:57:13
ちょっと落合博満さんの何もかも嫌になっての所に感情移入してしまいました。 落合博満さんだけは応援したいです。
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自分なりの生き方を探す (落第小僧)
2010-11-16 17:04:00
プロ野球の落合さんが、(野球の)典型的なエリートコースを歩いてきた人ではない、ことをはじめて知りました。イチローも甲子園を経験していませんが、隠れた才能の持ち主は、意外なところにいるものですね。

そういえば、今回、16歳の少年が公認会計士試験に合格しましたが、彼など、ほぼ独学で簿記を学び、そして難関の試験に合格したわけです。だから、彼は有名大学の経済学部を受験する必要は全くありません。20歳から公認会計士として働くことが出来るのです。

最近、私は、「学校は要らない」というタイトルで城さんのブログに投稿させていただきましたが、学校や大学、企業に自分の人生の大部分を管理され、能力を評価され、点数や貨幣価値に換算される生き方はどうなのでしょうか?

もちろん、アウトロー的な生き方を勧めているわけではありません。が、年功序列&終身雇用などのシステムは、個人だけでなく、組織にとっても、社会全体にとっても個性的で独創的な人材を潰してしまうような気もします。
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別の (Ts)
2010-11-16 21:47:18
>16歳の少年が公認会計士試験に合格

彼の父親は公認会計士。たぶん資格予備校にも行ってるっしょ。まぁ、優秀層の「日本の大学離れ」の一例にはなるかもしれんが。
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落合博満氏の若い時は (ブラウンタビー)
2010-11-16 23:18:40
落合監督は大学をすぐに辞めて東芝の期間従業員になった事を初めて知りました。彼が若い時は期間従業員も自分が好きでなったから、問題にならなかったのですが、今は正社員になれなくて期間従業員になる事が少なくないため、問題になるのです。
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Unknown (Unknown)
2010-11-17 06:12:58
落合博満さんは
確か巨人や日本ハムでも現役プレイヤー として活躍していた と思います。
現役生活を長く続けられたのは人の見ていない所で相当努力 されたのではないでしょうか?
また以前から野球選手の頃からうまく言えませんが悟りを開いたような個性的な 印象を受けていました。落合博満さんの 歩んできた人生が
平坦なものではなかったらからでしょうか?
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異論 (yi.)
2010-11-17 11:49:44
確かに、若い頃の落合の自由奔放なマイペースぶりは魅力的ですが、人気低落著しいプロ野球界のことを全く配慮することのない、現在のマイペースぶりは、偏狭、偏屈としか映りません。

背負うものの全くない時の振る舞いと、重くのしかかっている時の振る舞いは、自ずと違ってくるべきかと思います。

私益ばかりから、社益を考えることまでは出来るようになったが、公益までは思いが至らない。監督としての落合はこんな感じで、民主党とよく似ています。

野球界の権力者とバカ息子の甘やかしのだらしない関係という意味では、最近世間を騒がせた元首相の息子の件を思い出しました。

この息子は、城さんが常日頃批判している既得利権者そのものではないですか。落合自身も、自力でここまでのし上がってきたにせよ、功成り名遂げた今、やっていることは既得利権を守るようなことばかりで、プロ野球界全体に貢献するようなことは何もしていません。

落合監督で中日はずっと強いんだから凄いじゃないかという人もいるかと思いますが、三冠王を二度取った様な人間には、長嶋、王のような振る舞いが求められるかと思います。

そもそも落合が億万長者になれたのだって、彼の才能によるものだけでなく、日本全体が長らく野球というスポーツを破格に優遇してきたからです。自力だけでなく、社会がそうしてくれたのです。そのことへの感謝の気持ちが彼には全くない。その意味では、高給を取ってふんぞり返っているマスコミにも通じるものがあります。

私からすると落合親子は、現代日本を停滞させている既得利権勢力とそのパラサイトの典型のように見えます。


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Unknown (Unknown)
2010-11-17 15:55:37
生ダラの自宅訪問のときにチョロチョロしてたガキか。

大きくなったな。

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