備前の古社を訪ねる(備前国内神名帳の研究)

備前の由緒ある神社を巡礼する

コラム84.堰爪神社(岡山市)と石の懸樋・百間の石樋

2008-11-18 20:26:38 | Weblog
「堰爪神社(ひづめじんじゃ)」(岡山市東区瀬戸町万富)の「堰」の字は、正しくは土偏に要であるが、国内神名帳の写本のなかには「堰」としているものもある。「堰爪」という成語はないようだが、例えば「橋爪(橋詰め)」という言葉はある。「橋爪」は橋の袂(たもと)・際(きわ)を意味するから、「堰爪神社」であれば「堰」のそばに守護神として創建されたものと思われる。祭神は「堰爪神」だが、水分神(みくまりのかみ)ともされる。
「堰爪神社」(岡山市)は吉井川に面して、県道96号線(岡山赤穂線)沿いにある。しかし、ここはかつて「熊野の岸険(ほき)」と呼ばれた難所であり、旧山陽道が岡山市東区瀬戸町万富を通るようになっても、北西の「保木城」の北側を通過していただろうとされる。従って、「改修赤磐郡誌」(昭和15年12月)では、「堰爪神社」は別の場所にあり、寛文の寺社整理の際に寄宮にされるのを恐れて、現在地に移転させた(隠した)のではないか、というようなことことが記されている。因みに「別の場所」というのは、現在の山陽自動車道上り線「瀬戸PA」の北側辺りに「松尾」という地名があり、古墳群が発見されている。伝承では、ここに「松尾神社」があったという。瀬戸町万富に条里制が施行された際、これを担った帰化人秦氏が氏神を祀ったのではないか、とする。
その当否は不明だが、その後、田原用水が現在の赤磐市徳富から岡山市東区瀬戸町下までの開削工事がなされる(元禄7年(1694年))など、近くに灌漑施設の史跡が残っているのも興味深い(写真は「石の懸樋」)。
なお、瀬戸内市邑久町福山にも同名の「堰爪神社」があり、こちらは吉井川の左岸(東岸)にある。「上道郡」に坐すということになっているのは吉井川の川筋が変わったためとされているが、創建時から現在地にあったかは不明(同神社が「堰爪神社」となった経緯については、同神社の項(2008年6月16日記事)を参照。)。ただ、こちらも、南約600mのところに福山浄水場があり、市民の水を守っているようだ。


赤磐市のHPから(田原用水水路橋(石の懸樋)):http://www.city.akaiwa.lg.jp/kouhou/200507/jpg/p28.jpg

同(百間の石樋):http://www.city.akaiwa.lg.jp/kouhou/200806/jpg/p32.jpg

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