さて、きょうは将来世界で活躍する”建築芸術家”をめざす仕事に必要な、アイデアを視覚化する力である、デッサン力という話を今まで直接指導した生徒の作品などをもとに、美術やデザインという絵や図絵や映像などをもとにした”視覚芸術”でなく、隣接芸術である”音で表現する芸術家である現代作曲家のアイデアなどを見てみましょう。
■今年は自然物の”水”に関してですので、普通に考えると建築科の試験ですので、湖面に映る樹木、海面と船、小川と空、京都などの古建築の庭園と池(金閣寺ほか)など建築との関係などが想い浮かべられますが、一度も描いた事がないと塔のデッサンは構造の再現を正確にデッサンするは少し難しいかも知れません。やはりふだんからまめに、建築の雑誌を見ていろいろとスケッチすることが良いと想います。むろん、建築に関しての優れた本を読むのもいいですね、
▶まず、美大受験生の作品を見てみましょう。テーマは:身近な自然物を選び構成して鉛筆デッサン”する。または、色彩構成や”背景を想定鉛筆デッサン”の作品をみてください。
■ この2つの作品はテーマは身近などこにでもある”石”です。だから、まず身近なものをデッサンする習慣を見につけることです。
1. 最初のこの作品は縦長のデッサンはB1ですので、早稲田建築のA3サイズより約3倍以上も大きいですね。こういうサイズは机上デッサンでは難しいので、室内イーゼルを使います。イーゼルは時々離れて観察しながら制作を進めますので、全体と部分のバランスが分かり安いのです。
特に構成がよく背景も全体に白い紙の折れ線や左上の小さな石を配置しています。下部の多くの石の構成も左右対象系というルネサンス系の構図法を使用してあります。つまり背景の白地に見える余白空間と、下の石のグレーの階調と画面全体が明暗の対比とリズムもとても静的な中にも動きがあります。
2. 2番目の作品は、机などの上に3つの石を配置し、中央の石を紙で包んでいる構成デッサンです。背景の壁の亀裂は想像画ですので厳密に言うと”構成と想定デッサンと言えます。この作品も画面の約半分の画面を、明暗の色面で分け机上に紙を自由にシワをつけ、その上に3つ石を配置していますので基本的には左右対象系ですが、手前右の石を少し中央にずらしています。
3. この油彩作品は、”ひからびたとうもろこしと落ち葉を自由に構成して、背景は先ほどの壁のひびを想像画で描いている作品で水滴も想像です。
4. これは卵を割る瞬間を、高速度のシャッター撮影し背景は黒色です。もとの作品は70年代に活躍したハイパーライアリストの”上田薫氏”の作品の不透明水彩絵の具のポスターカラーで、模写した最初の石の作品を制作した受験生です。
5. 最後の数多くの”葉”の構成作品も、1つでは画面が持たない場合はそこであきらめずに、好きな形の葉を数多く集めておくと良いでしょう。特に秋から冬の季節の今はそういう葉を集める良い季節です。この作品は左右対象系ですが斜めの対角線を構図の主要なアンダーレイにして、左右を明暗で分けている作品ですが、背景は空間で設定している点で前の”石の作品”とは異なります。
▶ 隣接芸術である”音で表現する芸術家である”現代作曲家のアイデアやデッサンと発想”などを見てみましょう。これは現代作曲に大きな影響を与えた”ジョン・ケージ”という現代作曲家の、「ロサンジェルス美術館の個展:ROLLYWHOLYOVER A CIRCUS -JOHN
KAGE」のアルミ箱に入ったとても美しいこの企画展のための作品集/RIZZORI NEW YORKの中の”石とドローイング”とFontana Mix 1958の美しい絵画的な楽譜です。
ジョン・ケージは音楽家だけでなく、隣接芸術分野のさまざまな画家やデュシャンなど絵画史に残る美術家たちと親交やコラボレーションがありました。つまり、彼にとっては絵画のイメージは1つの音楽に聞こえたといえます。表現手段が違うだけで内面的世界観は同じだと言えるではないでしょうか?
▶そういう意味で”建築は総合芸術”ですので、さまざまなイメージやアイデアをまずは最初に絵にしてそれを立体模型などに表現しないと、発注する側にうまく空間イメージが伝わらず共有する事ができないからです。だから、早稲田建築科をはじめとする工学部建築科では実技入試が美大建築系、あるいは横浜国大建築科ほかで”デッサンと立体構成”などの、専門実技試験が実施されるわけです。
学科だけのペーパーテストではイメージを形にする力や、自分の内面の価値観などは分からないからです。欧米大学のアート系での入学試験での実技作品ポートフォリオ+面接とプレゼンテーションがそれに相当します。
ヒントはあげましたので、君は今すぐに始めましょう。こんどではなくいますぐに始めましょう。安藤忠雄さんは建築への情熱だけを胸に独学で17歳からさまざまなデッサンを自作のスケッチブックに描き溜めています。それは安藤さんが手本としていたコルビジェが午前中は画家でさまざまな絵やデッサンを描いていて、午後から建築事務所に出向いていたことの意味でもあるからです。