独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

きものビジネスの課題(下)

2011-09-18 | 自学自習塾

特別掲載・自学自習塾3期講義/きものビジネスの課題(下)

 きものを着る人が求める価値の方向

きものを着る人は、きものとの関係をどう変えてきたか.

呉服屋はきもの販売業ではないハーレーダビットソンは自らのビジネスをオートバイ販売会社ではなく、レジャー産業と位置づけています。ディズニーランドはエンターティメント産業です。呉服店は「きもの販売業ではなく、お客さまの暮らしを豊かにするサポート業」であるべきと考えます。今までは家中心のきものでした。母や、祖母が、家がきものを用意してくれました。しかしこれからの時代、働く女性が自分で働いたお金できものを買う時代です。しかも海外ブランドはじめ小さい頃からファッションを経験してきた感性が豊かな女性たちです。そのような女性たちが求める「商品」「価格」「売り方」は、といえば、先ずおじさん達が多く、しかもきものを着ない人たちが作る商品に彼女らは、明らかに違和感を覚えています。付加価値として技術を売るのではなく、色をベースにしてシック、シンプル、スタイリッシュ、と言う言葉で表現されるものが足りません。着たいきものがない!状態です。「価格」は適正価格としか表現できませんが、働く女性が自分のお金で買うことを前提に考え、価格の「期待値を超えるサービス、品質」があれば買います。「見せ方」も大事です。ディスプレーと言う言葉には「発情させる」という意味もあるそうですが、見ないようでいてお店の佇まいや飾られている商品を見ています。アパレルはそれこそ命を懸けているので、呉服屋も小さなサプライズを工夫して、女性を発情させるくらいの勢いをディスプレーして下さい。昔は店の力は営業力の差でしたが、これからは「センス力」の差が勝負になると思います。

きれい事を追求しなきゃ、商売が成り立たない時代「着る人」にフォーカスして、良きナビゲーター力を発揮してゆく呉服店がこれから伸びて行くと思いますが、春日井市に「きものの尾東」という呉服店があります。30-40代、50-60代、など年代、テーマで客層を分けて、お客さまにわかりやすい店作りで、7店で展開しています。催事をやめ、テーマを設けたフェアを2ヶ月に1回の割で開催しています。販促活動、訪問販売は一切なし。1店舗8,000万円で成り立つお店を目指し、1人のお客さまに負荷をかけない、多数から支持される店を目指しているユニークな呉服店ですが、未来の可能性にあふれるお店です。厳しい厳しいと言われる呉服業界ですが、最近目立った動きが3つあります。1つは「悉皆業が元気」と言うことです。「着る人」が増えたのですから、当然の結果ですが、悉皆専門店の進出も目立ちます。2つは「メーカー直営店」の進出。流通が機能せず、曖昧になってしまった中、マーケティング、販路、売上げの確保など幾つかの要因があり、アンテナショップや直営店が増えています。また一方で呉服店との直接の取引も増え、流通の再編成がおきつつあります。3つは「和、きものの『学び』たい」に応えるお店の存在です。学びの時代と言われて久しく、○○検定なども相変わらずのブームで、知識欲は高まるばかりです。お店は売場ではなく『学び場』でもあると思います。失われた10年、20年と言われますが、きもの業界も『着る人を主役』に考えた店作りや商品揃え、サービスを早急に再構築してゆく必要があります。「きれいごとばかりでは」成り立たないとはよく言いますが、これからの時代、確約品やお土産のサプライズではなく、『着る』ことの実感から生まれた「きもののある豊かな暮らし」の提案、サポートを第一義に考える呉服店が、着る人から支持されるように思います


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