左はカラヤン指揮プロイセン国立管弦楽団によるブルックナー8番、中央は同によるベートーヴェン3番。 どちらも1944年録音。 右は第二次大戦中にドイツのラジオ局で使われていたマグネトフォン (テープレコーダー ウィキペディアから)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
11月24日朝 届いた『カラヤン大全集』(356枚セット) の戦前の最初期録音 CD 8枚中2枚のオリジナルが KOCH (コッホ) 盤らしく、ジャケット表紙には KOCH マークがありませんが、裏面の曲名などの表示欄には KOCH と記載がありました。
今でもアマゾンで KOCH 盤 CD (冒頭左写真) が 900円台で出ていますから、ユニヴァーサル (DG・DECCA) が『カラヤン大全集』に加えるために版権を買ったと想像します。
そのうちの一枚が、ブルックナー8番から第1楽章の抜けた2~4楽章だけで、しかも第4楽章が何とステレオ録音 (!) です。 1944年にステレオ録音があったんですね。 プロイセン国立管弦楽団と表記されていますが、現在のベルリン国立管弦楽団です。 カラヤンは1941~45年 音楽総監督を務めていました。
ネットで調べると ベルリンの放送局にあった録音済みのマグネトフォンの磁気テープをソ連軍が45年 押収したものを、1990年になってドイツに返還し、それを KOCH が CD 化したようです。 ステレオ録音は実験的な試みだったんでしょう。
試聴してみると、意外に好音質で 歪みなどを感じません。 戦争末期でもこんな優秀な録音ができたんですね。 いずれ 行方不明の第1楽章が発見され、全楽章が揃うかもしれませんね。 3番『英雄』も意外と好音質でした。
………………………………………………
他の戦前の初期録音シリーズで、最初の録音が1938年の『魔笛』序曲です。 カラヤンがまだ30歳の頃です。 音質は … 78回転 SP 復刻ですから それなりでティンパニが強奏の時などは音が引っ込みます。 マグネトフォン録音より劣りますが、予想していたよりはいい音質です (復刻した技術者を褒めてあげたいですね)。 EMI のレッグが聴いて目をつけ、戦後カラヤンを訪ねて契約するきっかけとなった『こうもり』序曲は、今 聴いても躍動感があります。
戦前のレコード録音は貴重で、ソリストは別にして 指揮者とオーケストラとだけの組み合わせでは、高評価の定まった中年以降のマエストロしか出番がなかったという記事を読んだ事がありますから、30歳の指揮者にレコード録音させるというのは非常にまれだっただろうと想像します。 それだけ 当時の30歳のカラヤンはドイツでも “注目株” だったんでしょうね。
今でも 30歳の指揮者にそうそう簡単に CD 録音の話しは来ないんじゃないかと思います。 特に CD・LP 市場が縮んでいる現状では、余程の話題性がないと録音の機会はないと想像します。
色々と思い巡らすと、戦前のベルリン音楽界ではフルトヴェングラーが絶対的な人気を誇っていた反面、ナチスにとっては扱いにくい指揮者で、対抗勢力としてカラヤンを “盛り立てる動き” があったそうですから、30歳の新進指揮者を担ぐ動きの1つがレコード録音だったのかも … フルヴェンが焼きもちを焼くほど人気があったそうです。
………………………………………………
__ などなど 初期録音シリーズのジャケットを眺めながら、過去に読んだ業界話しを思い出してしまいました。 ジャケット写真や曲目、演奏楽団、録音時期などのデータを頭に入力すると、時代背景が自分なりに組み立てられますから、面白いですね。
ネットからダウンロードした情報やデータだけではこうはいかないでしょう。 そういえば 今年2019年はマエストロ没後30年でした。 個人的には90歳くらいまでは、あと十年は活躍して欲しかったですね。
もっとも 亡くなる前は「もう指揮は飽きたよ」といっていたことも … という記事もありましたから、指揮する意欲はあっても 体が思うようにならず、指揮も何もかも面倒になっていた側面があったのかも知れません __ それが “老い” というものなのでしょう。 そう 誰でもトシには勝てませんよね。
今日はここまでです。