原発問題

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第9章 黒い雪 ※10回目の紹介

2015-05-29 23:25:03 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第9章 黒い雪を複数回に分け紹介します。10回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「第9章 黒い雪」の紹介

前回の話第9章 黒い雪 ※9回目の紹介

「奇策ではありますが、この手しかありません」

 この手しかない、という日村の言葉に、もはやすがるしかない。

 明治憲法下での法令の多くは戦後廃止されているが、明治憲法下で有効に成立した法令は、それが廃止されていない限り、日本国憲法下でも有効である。

 官報正誤とは、本来は、出稿した役所による「原稿誤り」か、印刷局のミスである「印刷誤り」かのいずれかとされる。そして、官報正誤の手続きで実際の法規範を変更することは、平時であればもちろん禁じ手・・・しかし、いまは平時ではない。

 異論が誰からも提起されないことを確認して、日村は再度、口を開いた。

「官報正誤と戒厳令を直ちに官報で発して下さい。戒厳令は、あくまで一時的に国民の基本的な権利を制約するものですので、期間と区域を区切って発出することが肝要かと存じます。一都四県を対象に、差し当たり1週間だけ戒厳の宣告を発していただければ、暴徒も沈静化すると存じます。以上であります・・・」

 全員がうなった。ここまでのことをスラスラと述べる日村は、畑山原子力政策課長に法制的な可能性を研究させながら、原発災害による首都圏のパニックという事態を頭のなかでシミレーションしていたということになる。

 上畑内閣法制局長官が慌てて日村の言葉を継いだ。

「官報正誤、大丈夫です。平成16年8月10日に閣議決定した内閣参質160第13号の質問主意書の答弁書において、内閣から国会に対し、次のように回答しております。

『官報正誤とは、法文の「表記上の誤り」、すなわち、実質的な法規範の内容と法文の表記との間に形式的な齟齬があることが客観的に明らかであると判断されるものについて、法文の表記を実質的な法規範の内容に則したものに訂正するものであり、実質的な法規範の内容を変更するものではない。憲法上、内閣は、法律の公布について責任を負い(第3条及び第7条第1号)、また、法律を誠実に執行することを職務としている(第73条第1号)ことから、実質的な法規範の内容と法文の表記との間に形式的な齟齬が生じている場合に、法文の表記を速やかに実質的な法規範の内容に則したものに訂正し、それを広く国民に知らせることは、内閣の当然の責務であるということができ、従来から官報正誤によってこれを行うことが慣例条認められてきているところである』

 したがいまして、現下の状況に鑑みますれば、戒厳令が実質的な法規範の内容になっている、という判断で、官報正誤を行うべきと考えます」

 議論の潮目を見て、いち早くその流れに乗る。上畑が、法制局長官の政治任用という荒波を乗り越えて、その地位に辿りついた所以であった。

第9章 黒い雪」の紹介は、今回で終わります。

引き続き第10章 政治家と官僚のエクソダス」の紹介を始めます。6/122:00に投稿予定です

 

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)

 


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