日本ユーラシア協会広島支部のブログ

本支部は、日本ユーラシア地域(旧ソ連邦)諸国民の相互の理解と親善をはかり、世界平和に寄与することを目的とする。

2011.03.26 チュートリアル講演

2011-03-29 08:46:47 | 日記
学術講演会 (2011.03.26) チュートリアル講演 中村 聡さんからの提言です。

松田 様、皆様
 申し訳ありません。出席はしていましたが、その場の雰囲気で「必要ないのか
な」と思って、エネルギーの資料は出さず仕舞いでした。後から「どうせ不要に
なる荷物を持ち帰るんだったら、蛯名さんにでもお渡しすれば良かった」と思い
ました。何とか廃棄を避けて、該当する授業を受けていない学生に先ほど渡しま
した。
 基本的に本などの数字を集めただけで、それほど多数の文献に当たったわけで
はないのでコンパイレーションと言うほどでもない。そのため、研究として発表
するにはおこがましく、しかし環境問題を考える上で基礎となる重要なデータな
ので議論の対象にはしたい、そんな具合に感じていてどうしたものか、以前から
迷っていたのです。
 少なくとも私の集めたデータからは次のように結論されます。
1. 仮に温暖化問題に適当な解があって石炭を使うことができたとしても、資源
量から推定すると、数十年後(石炭抜きなら十数年後)には供給量のピークを迎え、
次の手立てに移行しなければならない。従って、今から徐々に電力設備を置き換
えていくべきである。
2. その時に頼れるのは原子力ではなく、太陽光や風力である。
 註:ウラン-235は資源量が少ないので、核燃料サイクルや核融合炉を対立候補
と見なし、技術開発段階などを比較すると「風力や太陽光の圧勝」になる。また
バイオマスは食糧生産に精一杯と推定、しかもエネルギー変換効率が太陽光発電
の1/10で、優位点は保管性のみ。
3. 風力だけでは不足しそうだが、太陽光は単独でも需要を満たす。水力は完全
に不足である。
 註:前提に、世界人口100億人(国連推計)に日本人並のエネルギーを供給する。
また電力だけでなくエネルギー全体の消費量とした。目標が高いかも知れないが、
日本人の私が他民族に向かって「今まで通り我慢せよ」とは言えないので...。
4. 生態系への影響を低減するために、砂漠に設置した場合のシミュレーション。
計算の前提:送電損失は既存の論文から強引に外挿した(平均35%の結果)。蓄電
損失は揚水発電を一回挟むものとする(30%)。(.65*.7=.45 結局55%損失)
 結果的に世界全体では砂漠の1/3-1/2を使用すれば足りる。しかし東アジアは
砂漠面積に比して人口が多いため、日本が頼るものと仮定したゴビ砂漠は100%使
用してしまう。
 揚水発電の要求する立地条件(通常の水力発電とは違う)のサーチはしていない
けれど、その気になれば不可能ではない(怠慢)。アルベドの変化と、それによる
気候の変化を(不確実性が大きいのを承知で)シミュレーションすべきだと思うが、
全く私の手には負えない。
 また設置費用を見積もったところ、毎年日本政府予算の10倍を投入して太陽電
池購入費を賄う計算。そのペースで設置すれば世界の需要を全て置き換えるのに
間に合う。けど、設備の全面置換って言うのは、実に高い買い物だ!
--- 4.の部分だけは学生の卒論なので一応オリジナリティーがあります。そこに
焦点を当てて発表するのもありでしょうか? 半年後の学会発表の話題として可能
か、少し考えて見ます。

 元から以上のような試算をしてあったのですが、まさかこんなに早く現実問題
としてエネルギー問題に取り組む必要が生じるとは。
 先週改めてゴビ砂漠の衛星写真を確認しました。中国の領域は黄砂の原因地域
で、もしかしたらほとんどが砂砂漠の可能性がありメンテナンスに苦労するかも
知れない。しかしゴビ砂漠の一部分がモンゴルに掛かっていてその地域は岩砂漠
のように見える。--- 砂砂漠部分を太陽電池で覆い尽くせばメンテナンスと同時
に黄砂問題も解決するが、それが良いことか否かは別問題だと思う。一説では黄
砂が止むと日本の耕地の地力は落ちるとも。
 送電は中国(最短)かロシアを経由することになるが、その辺の国際的ルールを
調べていない。パイプラインとかで他国を経由する場合の枠組みをご存じだった
ら教えて下さい。
 特に中国に関して国際的環境が安定していないのが手足を縛る原因ですが、今
はそう言う困難や不透明さも含み考えた上で「日本の決断を下す時」なのかも知
れない。そんな気がします。
 その決断の選択肢は他にもあるのだけれども、どれも非常に苦しい決断だと思
います。繰り返される事故の危険(と放射性廃棄物や廃炉の困難)を承知で敢えて
(もう少しだけ)原子力を続ける、と言うのもあるし、エネルギー消費を抑えて生
活する(これも当面の話)と言うのもあるけれど、多分後者の場合に多くの人が分
かっていないのは「高度医療や福祉、栄養バランスの取れた食生活など、概して
環境に熱心な人が好むものを真っ先に断念する」覚悟があるかどうか。これらを
我慢しても日本人は(世界全体も)増えすぎてしまっていて、バイオマスだけでは
全く不足して養えなくなっている、と言うのが推定結果です。だから節約だけで
は化石燃料依存を止めるには全く届かないです。結局どの選択肢も過酷な現実に
向き合うことに変わりがないと感じます。

 先日、洋上太陽光発電の研究状況も調べましたが、感触としては「大規模発電
には技術的問題が大きい」印象を持ちました。洋上でも風力発電なら既存技術で
ある程度の電力供給ができそうなのですが、沿岸域が風車に占領されてしまって、
それでも電力が足りるかどうか怪しい(要試算)。
 その他にまだ調べていないのは、日本の電力に限った場合の太陽電池の必要面
積などです(怠慢)。できる限り日本の陸域や沿岸域の生態系を犠牲にしたくない
が、まず我が国だけの場合の必要面積を見積もっておかないと、犠牲の度合も不
明なので。

 他に「電気自動車の消費電力はガレージ上の太陽光発電だけで賄える」と言う
試算も学生卒業研究でやっていて、その資料も持参していました。少し昔の学生
なので、試算に使った電気自動車が古くて状況に変化がありそうなので、新しい
車種での計算を今いる別の学生にさせようとしています。まじめに仕事するかど
うか、なかなか難しい学生なのですが...。

 これらのデータ収集の目的は、個人的興味だけでなく、授業などで必要に迫ら
れた部分もあります。同じようなデータ収集をされている方がいらっしゃるので
はないか、と言う気もするのですが、もしデータをお持ちなら、(このML上では
迷惑かも知れないので)個人的にでも連絡いただけないでしょうか。
 いずれにしても早めに考えをまとめて民主党や自民党に意見しようかと考え始
めています。たとえ無視されても何もしないよりは良い思うので。--- 因みに社
民党は洋上太陽光発電推進みたいですが、二大政党以外には意見をするとしても、
少し遅れてするのが良策と判断しています。

 長い文章をMLに流して、申し訳ありませんでした。
      2011.3.28 中村 聡

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