岩田家のガラス芸術 BLOG 岩田の事

炎の贈り物 藤七・久利・糸子が織りなす岩田家のガラス芸術

久利への言葉  彩ガラスの四季 8月 辻井 喬

2010-08-01 09:00:01 | 久利への言葉
岩田久利 彩ガラスの四季  8月

2010年は(久利への言葉)の第一弾として、「彩ガラスの四季」を
12ヶ月にわたって掲載しております。
これは、1983年婦人画報に年間掲載されたものです。

今月は、久利が若い頃から交友があった詩人で作家の辻井 喬氏です。
久利とその作品を、深く冴えた目で見つめた、美しい言葉をいただきました。


静けさと激しさと   辻井 喬(詩人・作家)

撮影 藤森 武

深い色である。青でも緑でも、見ていると引き込まれていくように澄んでいる。
これは技術だけで出る色ではないと思う。あの細い久利さんの、
何処にそんな烈しさが潜んでいるのかと不思議に思う。
それでいて作品は静謐な趣を湛えている。
むしろ静かだから強く訴えてくるというのが、久利さんの作風だと思う。
ガラスは透きとおるのが生命である。その本質をそのままに残しながら、
変化させ、あえて表面に皹を入れ、曇らせ、そのことによって
より一層透明度を感じさせる手法は「秘すれば花」と言った
世阿弥に通じているだろうか。
そこにあるのは凝視と呼んでもいい創作態度であり、形である。
声にならない無数の叫びが、緑のざわめきが、燃える赤が見る人の心に迫ってくる。
もし彼の内的世界が、このように屈折し、かつ澄明なものだとしたら、
それは才能が持つ不幸と言ってもいい純粋の哀しさである。


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