新渡戸稲造記念 さっぽろがん哲学外来

さっぽろがん哲学外来の活動予定や活動の様子などを
皆さんにお伝えします。皆さんの参加をお待ちしています。

がん哲学校たより・41(0076)

2014年11月30日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです(2014.11.29配信)
第87回「がん哲学学校」
変わらぬ人間の「心」~悠久の「縁結びの旅」~

11月24日(休日)「心に寄り添うがん医療を考える~第1回県民交流大会」 (奈良女子大学に於いて) で、 講演「がん患者との対話:がん哲学外来の現場から~がん人生を生ききるため~」する機会が与えられた。「患者、奈良県総合医療センター腫瘍内科医長、奈良 県医療政策部長、近畿大学医学部奈良病院看護長」による全体交流会「患者・医療関係者・行政の協働」は、充実した一時であった。

筆者は、少し、早目に、奈良に到着して、奈良駅の周辺を散策した。奈良県立美術館での「古事記」展 (10月28日~12月14日) を見学した。太安万侶が編纂されたとされる、今から約1300年前に奈良の都で、完成された『古事記』を、再度、学ぶ機会となった。「国の成り立ちから始まる多くの神話」に触れ、『「何時の時代にも、その時代に生きる、変わらぬ人間の「心」』を再確認する時でもあった。「八百万の神々が全国から集う 神在月」の出雲大社で、生まれた筆者にとっては、まさに、今回の奈良の訪問は、悠久の「縁結びの旅」であった。

翌日、日本国際協力センターの主催による「中国江蘇省医師研修送別会」(新宿に於いて) に出席する機会が与えられた。「江蘇省衛生庁長期医師研修」で、病理医の先生を、筆者の「病理・腫瘍学講座」で、引き受けたことに因る。心優しい病理医であった。送別会は、大変、和やかな、楽しい一時であった。筆者は挨拶をする機会が与えられ、『「組織・臓器の数と、世界の国の数」は、ほぼ同じであり、国際平和は、「臓器論」から具象的に獲得される。 「多様性の統一」=「生命現象」であり、「日本肝臓論」(拙著「われ21世紀の新渡戸とならん」)』を、ニューモア(you more)の心でさりげなく語った。来年は、江蘇省で「日本・江蘇省交流シンポ~医療の懸け橋~」が、企画される予感がする。

新刊『いい覚悟で生きる』(小学館)効果で、生放送のラジオ番組に出演する機会が与えられた(http://www.1242.com/blog/gonohe/2014/11/post-557.html)。
週末、筆者が、代表を務めることになった、遺伝性疾患である「リンチ症候群研究会」のキックオフ シンポジウムが開催された (順天堂大学に於いて)。「医師は生涯書生」であり、日々、「純度の高い専門性と社会的包容力」の修練である。

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第86回「がん哲学学校」
「医療維新」~丁寧な、心優しい、本質的な人間の見直し~

先週の日曜日の午後、「がん哲学外来 in 神奈川 市民公開シンポジウム:チーム医療の架け橋」(横浜市開港記念会館に於いて)が開催された。基調講演として、「緩和ケア イギリスのチーム医療」、「緩和ケア イギリスのホ スピス」があり、引き続いてのパネルデイスカッション「日本のチーム医療の現状」では、熱気ある討論がなされた。会場は満員の大盛況であった。市民の関心 の高まりを肌で感じた。筆者は、「総評・閉会挨拶」の機会が与えられ、会場に相応しい、「医療の幕末」――>「医療の公武合体」――>「医療維新」につい て語った。

島根大学医学部で、「病理学」の学生講義の機会が与えられ、帰郷した。学生全員の講義の感想文を拝読し、また、講義後の学生との語らいの場でも、学生の真摯な態度、思いに接して、大いに感激した。夜は実家に帰り、91歳の母との僅かな一時を過ごし、涙する母を後にして帰京した。厳粛な人生の現実である。

「高松宮妃癌研究基金 国際シンポジウム:がん免疫療法の近年の進歩」(パレスホテルに於いて)に出席した。最先端のがん治療の現状を学ぶ機会が与えられた。日々勉強である。その後、日本病理学会秋期特別総会(那覇に於いて)で沖縄に向かった。A演説「腎細胞癌の増殖・進展機構に関する研究」の座長を務める任が与えられた。タクシーの運転手の丁寧な、心優しい態度に感動した。

「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン:ICTと人で繋ぐがん医療維新プラン外部評価員会」(順天堂大学に於いて)に参画した。各連携大学から「教育分野」・「地域分野」・「研究分野」・「ICTと大学間連携事業」について、それぞれの成果・現状報告がなされた。順調な進展を感じた。『「しっ かりとした土台」、「しっかりとした骨組み」、「しっかりとした使命感」』を持った、「杭となり、羅針盤」となる「医療の隙間」を埋める「医療人の育成」 を目指す事業であり、まさに、「医療のあらゆる行動に普遍性の烙印を押す、教養ある、本質的な人間教育の見直し」でもある。その手段は、「目的は高い理想 に置き、それに到達する道は臨機応変に取るべし」(新渡戸稲造)である。これこそ「医療維新」の心得であろう。本事業が「医療維新」の舵取りなる予感がする。

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第84回「がん哲学学校」
「魂を揺さぶる言葉」で語る~がん哲学者~

文化の日の「南原繁」シンポジウム「南原繁と平和~現代へのメッセージ~」(学士会館に於いて) は、大変盛況であった。筆者は、「閉会あいさつ」する機会が与えられた。「真のリーダの在り方、洞察力のある、胆力ある人物像」を語った。早速、「今日は先生の閉会のお言葉が、質疑の後半の会場の雰囲気にさわやかな風を吹き込んでくださったような感じがありました。先生のメッセージ、共感するところ,響くところ多く、ありがとうございました。」との心温まるコメントを頂いた。今年、改めて岩波文庫に収録された『国家と宗教~ヨーロッパ精神史の研究』(南原繁 著)を通読した。まさに「自分が生きている時代の問題の解決を求めて学問に向かい、その学問から引き出した原理を理念を」
語る「政治哲学者」の姿勢は、「がん哲学者」としての大いなる学びでもある。
 
筆 者は「永山公民館現代課題講座(多摩医師会共催事業)~あなたは、どこで“終末”をむかえますか?」で、「がん哲学入門~生きること、とは~」を、また、 客員教授を務める信州大学医学部で、「がん患者さんと向きあう研究者そして医師として」で、講演する機会が与えられた。病院長、教授をはじめ皆様との懇親 会では、「medical village in 軽井沢」構想について、話が大いに盛り上がった。「医療維新」を目指して、実現する気配を感じた。週末の早稲田大学の社会人講座では、「がん細胞と化学発がん」を話す機会が与えられた。

新刊『いい覚悟で生きる~がん哲学外来から広がる言葉の処方箋~』(小学館)http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093883894 が、大変好評のようで、Amazonでは、1位にもなり、「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」との事である。驚きである。「どこからでも読めて、言葉の処方箋ごとに読み切れるのもいいですね。心地よく軽やかに楽しめる一冊です。リビングのテーブルに置いて、誰でも気軽に手にとって読めるようにしました。」、「一章一章、一言一言が心に沁みるようです。 またとても軽くて、病床の患者さんでも読みやすくされているのがわかり、随所で先生の心遣いが感じられました。」などの多数の励ましのメールを頂いた。まさに、『専門分野で発見した真理を「魂を揺さぶる言葉」で語る=がん哲学者』の時代の要請でもあろう。


がん哲学校たより・40(0075)

2014年11月07日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです(2014.11.3配信)
第83回「がん哲学学校」
「誰でも実現可能な生き方」~『後世への最大遺物』~

週末、筆者は、「神在月シンポジウム~がん治療とその後の生活~」(出雲市)での講演「医師の2つの使命~純度の高い専門性と社会的包容力~」で帰郷した。 「八百万の神々が全国から出雲に集う神在月にあわせて、地域の皆様を対象として、健康・医療について語り合うシンポジウム」と謳われている。今回は16回 とのことである。まさに、「継続は力なり」である。筆者の講演に引き続いて、島根大学医学部の御2人の教授から、「子宮がんの正しい知識~安心して子供を 産み育てるために~」、「寝たきりにならないために重要な骨と血管の健康」の講演もあり、大変、勉強になり、本当に、充実した一時であった。

講演後は、故郷の鵜鷺(鵜峠+鷺浦=鵜鷺)で、区長をはじめ村民の方々と、夕食を共にしながら、来年3月の鵜鷺小学校の廃校後についての語らいの時を持った。その場で、小学校の跡地の活用課題を含め、「鵜鷺メディカル・ビレッジ構想 運営委員会」が発足された。来年5月には、小学校の体育館で、「鵜鷺メディカル・ビレッジ構想」シンポジウムが、開催されることが決定された。歴史的な記念すべき会合となった。鵜峠の実家に帰り、91歳の母親と再会し、一夜を共にした。翌日早朝、空港に向かった。空港で、山陰中央新報を購入した。前日の講演会の記事と共に、広告ページには、「新刊『いい覚悟で生きる~がん哲学外来から広がる言葉の処方箋~』(小学館)が好評発売中」と、筆者の顔写真入りで、大きく紹介されていた。顔写真の隣りに、「私の故郷は 出雲市大社町鵜峠です !」と記述されていた。驚きであるともに、大いに感激した。

帰京し、定例の読書会に赴いた。今回は、1894年7月箱根の「夏期学校」で、内村鑑三が、「誰でも実現可能な生き方」を語った『後世への最大遺物』(内村鑑三著 岩波文庫)であった。内村鑑三の「だれとも対話を成り立たせる語り口」は、筆者の「がん哲学外来」の原点でもあり、「日本が嘗て生み得た人物中最大の人物」として「内村鑑三・新渡戸稲造」を、深く感ずる日々でもある。

文化の日(11月3日) は、学士会館にて、「内村鑑三・新渡戸稲造」を師とする「南原繁」シンポジウム「南原繁と平和~現代へのメッセージ~」が、開催される。

10月例会の様子です(0074)

2014年11月07日 | 集まりの様子
林先生です 集まりの様子です。<写真はクリックすると拡大します>


去る10月25日(土)、14時から日本医療大学 保健医療学部看護学科の林美枝子先生をお迎えして「医療人類学の紹介・病い、健康、死を相対的に見るためのセミナー」というタイトルで講演を行いました。

今回は医療人類学なる聞き慣れない分野のお話でして、これは一種のカルチャーショックと言っても大げさではない? 話は多岐に渡っていて最初は?でしたが「ジェンダー」の説明以降、なるほど、林先生の研究というか志というものはこういうものか、というのが見えてきました。
それは1946年に発効したWHO(世界保健機関)憲章における健康の3定義(①身体的健康、②精神的健康、③社会的健康、に1998年改定による4番目の健康・・・Spiritual Health・・・魂・霊的健康(文化的健康)への注目と「真の健康に奉仕する医療であるためにはこれからの医学は女性的(ジェンダー)なものによる補完が必要である(ジーン・アクターバーク)」という問題提起と実現であると思いました。というのは「健康とは究極のバランスを意味し、癒やしとは全体性の回復を意味する(ジーン・アクターバーク)」からです。

そしてさらに癒やしとは何か、を考察していくと、①全体を目指す生涯の旅、自己の全体性の探究、②万物のつながり、相互依存という失われた記憶の回復、③最も恐れているものの包容、④命への信頼感を体得することになるとのことです。

で、これらを実現していこうとすると女性的なるもの、つまり生物的な性差以外の女性的要素(ジェンダー)が重要だという指摘です。
時代は医療とは単なる生物的治療ではなく、癒やし(人間としての全体性の回復)に向かっていかなくてはならず、それを追求しているのが医療人類学という学問であるというお話でした。

がん患者さんはもちろんのこと、私たちは日常の様々な局面で癒やしを必要としていますが、それはやはり魂・霊的健康(文化的健康)を抜きにしては実現できない。つまり人を単に生物として見立てての診察や治療だけでは真の健康は取り戻したことにならないのだ、という点を今回の講演を通して勉強しました。
さっぽろがん哲学外来も大上段に振りかぶれば、第4の健康(魂・霊的健康(文化的健康))に微力ながら貢献している、ということになるのでしょうか。・・・かくありたいものであります。

がん哲学校たより・39(0073)

2014年11月03日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです。(2014.10.27配信)
第82回「がん哲学学校」
「がん哲学外来のチーム医療」を支える偉人たち~歯をくいしばって~

先週、福井県済生会病院に於いて、「浅井三姉妹記念 がん哲学外来」が開催された。筆者は、それに先だって、講演『がん哲学外来~謙遜と奥ゆかしさ~』する機会も与えられた。入院患者を含め、多数の参加者があり、会場は一杯の盛況であった。病院総長を始め、スッタッフの皆様の熱意と愛情を肌で感じた。早速、「レクチャー、癌哲学外来と、お忙しい中、昨日はありがとうございました。患者さん、スタッフも大喜びでした。さらなる目標もご提示していただき、やる気が倍増しました。」との、温かい励ましのメールを頂いた。まさに、「真の医療維新=患者の必要のすべてに答える」の歴史的スタートでもある。

日本テレビ『NNNドキュメント:がん哲学外来~それは言葉の処方箋~』(2014年10月5日)に続いて、先週は、NHK TV「おはよう日本首都圏」の放送『患者が生きる意味考える ”がん哲学”』で、「埼玉のがん哲学外来・カフェ」が紹介が放映されたようである(2014年10月21日)。多数の反響が届いているとのことである。筆者にも、再放送と全国版の続編の要望が寄せられている。驚きである。週末の午後「がん哲学外来 大宮メディカルカフェ」で、講演『がん哲学外来の秘訣~誠実本位~』する機会が与えられた。NHK記者も参加されていた。

週末、早稲田大学オープンカレッジ(中野校)で、患者・一般市民の方を対象に、公開講座『がんと生きる哲学~医師との対話を通して「がん」生きる方法を考える~』の機会が与えられた。大坂からの聴講もあり充実した時であった。
「自分の置かれた如何なる境遇」にかかわらず、「歯をくいしばって、人を褒める」ことの大切さと、「人生のversion upの邂逅」の深い学びの時でもある。

この度、新刊『いい覚悟で生きる~がん哲学外来から広がる言葉の処方箋~』(小学館)が、発売される。Amazonでも購入可能とのことである。本の末尾には、『「が ん哲学外来のチーム医療」を支える偉人たち』として、「新渡戸稲造・内村鑑三・南原繁・矢内原忠雄・吉田富三」が紹介されている。若き日の筆者の先人との 出会い、また、我が故郷「鵜鷺」(島根県出雲市大社町)、「最後の章」には、今は亡き父の思い出についても触れた。涙なくして語れない!  



























がん哲学外来について

患者さんが抱える悩みは病人としての悩みではない。人間としての悩みです。 がんという大病を得たとき、それを背負って人間としてどう生きるかという深い悩みです。それは「心のケア」というレベルではなく、自分という存在そのものを問う領域なのだと思います。ですから、「がん哲学外来」では、来られた方を「病人」の側面だけではなく、ひとりの人間としての悩みに焦点を合わせます。同じ人間として、対等の目線に立って、人間を学ぶ「人間学の場」でありたいと考えるのです …(提唱者であり当会の顧問である順天堂大教授・樋野興夫先生の著書より)

札幌の「がん哲学外来」(開設趣旨)

私達は樋野興夫先生の志に賛同し、車座になって意見交換をする運営をめざします。講演会スタイルではありません。参加者全員が同じ立場、同じ目線で耳を傾け、縁のあった方々に寄り添うことを願っています。