新渡戸稲造記念 さっぽろがん哲学外来

さっぽろがん哲学外来の活動予定や活動の様子などを
皆さんにお伝えします。皆さんの参加をお待ちしています。

がん哲学校たより・36(0068)

2014年08月19日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです。(2014.8.16配信)
第72回「がん哲学学校」
「メディカル ビレッジ構想」の「縁結びの神」~「がん哲学外来・カフェ」~

先週は、wife と 2日間(8月13日、14日)の夏休み、猛暑の東京を離れ、万座温泉で過ごした。1800 m の万座温泉は、涼しくて格別である。早朝、wife と周辺の散策、午後は、日本で最高峰にある国道を車で通って、横手山頂 (2300m)に登った。壮大な景色を眺めながら、山頂のレストランで、昼食を食べた。夕方は、万座温泉の社長、総支配人と「メディカル ビレッジ構想」について語らった。楽しい一時であった。来年1月17日、医療関係者・行政・政治、市民等を対象にした公開シンポ「メディカル ビレッジの時代到来」(案)が企画されるようである。筆者も「がん哲学外来・カフェ in メディカル ビレッジ」を話すことになりそうである。まさに「がん哲学外来・カフェ」が、時代的必然である「メディカル ビレッジ」の「縁結びの神」になる予感がする。乞うご期待である。帰りは、訪問客で、大変賑あう軽井沢で、約3時間過ごし、帰京した。

全国公立学校関係より、「専門分野ではない内容ではありますが,先生のご実績等を踏まえて,教育現場に助言等をお願いできればと思います。」との依頼を受けた。そこで、帰りの新幹線の中 (8月15日終戦記念日) では、冨山県立小杉高等学校の創校50周年記念「南原繁先生(元東大総長)記念講演~世界はどこへ行く~」(1969年10月25日)を拝読した。そこには、「日本国憲法の第9条、福祉国家政策、新渡戸稲造・内村鑑三の教養」が語られている。アームストロングとオルドリンが人類として初めて月面に降り立った年 (1969年7月20日) であり、オルドリンの言葉「地上のみなさん、我我が着陸した瞬間にどうかみなさんが、それぞれの仕方でこれを成功せしめた偉大なる存在に向かって感謝をして下さい。」が引用され、「沈着と勇気と冷静」の由来にも触れられている。

土曜日の午前中は、「日本 AIR Pneumo 講座~アジア肺レントゲン写真読影医養成 (AIR) ワークショップ」(順天堂大学)で、「悪性胸膜中皮腫の病理」の講義を行った。午後は、「東村山がん哲学外来メディカル・カフェ」開設記念が開催され、東英子先生の基調講演「がん哲学外来の全国的な拡がり」の「太陽と惑星」のビデオには、大いに感銘を受けた。筆者は、特別講演で「がん哲学外来~病気も個性の一つである~」を語った。会場は、大変熱気に溢れていた。

がん哲学校たより・35(0067)

2014年08月12日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです。(2014.8.10配信)
第71回「がん哲学学校」
「その人らしいものが発動」~病気も個性の一つである~

朝日新聞の朝刊(2014年8月7日付け)に挿入されていたタウン誌「asacoco」に『自身もがんを抱える女性が立ち上げた 東村山に「がん哲学外来メディカル・カフェ」開設』(2014年8月16日 14:00~16:30 東村山市 市民ステーション「サンパルネ」コンベンションホールに於いて)の大きな記事が掲載されていた。筆者は、特別講演「がん哲学外来~病気も個性の一つである~」とのことである。『タウン紙が出てから申し込みが絶えず、個人面談の定員3名も既に埋まってしまいました。お申し込み用紙に「樋野先生の講演会に伺います」と先生のお話を待っていらっしゃる方が大勢います。』との激励のコメント頂いた。主催者の「役割意識&使命感」が心に深く響く。人間は苦難を通して、「その人らしいものが発動」してくるものであることの、深い学びの時でもある。

「近くで探すがん治療病院」(週刊朝日臨時増刊)の案内を頂いた(2014年8月8日発売)。「がんで困ったときの相談先」として「日本対がん協会の電話・面接相談」、「がん診療連携拠点病院の相談支援センター」と並んで『「がん哲学外来」とは?』も紹介されていた(198~199 page)。驚きであるとともに、さりげなく「現代の医療の隙間」における「がん哲学外来」の存在性を感じた。

週末の午後(2014年8月9日)定例の「<がん哲学外来>お茶の水メディカル・カフェ in OCC」が開催された。台風の接近にもかかわらず、「ほっと憩える交わり求めて」、会場は、満席のカフェ参加者と個人面談6組があった。順天堂大、東京医科歯科大の大学院生、看護師の参加もあり、「お茶の水メディカル・タウン」の中心に存在する共同体的なオアシス的雰囲気を痛感した。早速、「本日も素晴らしい3時間を有難うございました。先生のお話をいつもノートに取りながら繰り返し原点に帰り教えて頂けること感謝しながらお茶ノ水から戻りました。」、 『本日は豊かな学びのひとときをありがとうございました。いつもOCCでは新たな発見や気づきを頂き、自分が病気であることを忘れてしまいます。本当に「良き師、良き友、良き読書」との出会いに感謝です。』と、「涙なくして語れない」温かいコメントが寄せられた。また、旭川では、「三浦綾子記念 がん哲学外来・カフェ」が開設されるようである。歴史的な快挙である。

8月例会を開きました(0066)

2014年08月09日 | 集まりの様子
例会の様子1 例会の様子2養成講座でのグループ発表例遺伝子解析、今はここまで来た遺伝学とは遺伝子診療室のカウンセリング遺伝的シックツリーの例分類の問題これでいいのだ

さっぽろがん哲学外来の8月例会が8/2(土)、いつもの愛生舘サロンで開かれました。今回は札幌医大の櫻井先生(教授・医学博士 遺伝医学 遺伝子診療室)を講師にお願いして、7月12、13日に福井で開かれたがん哲学コーディネーター養成講座の様子と、ご専門である遺伝子医療についての勉強をしました。(櫻井先生は養成講座講師陣の一人です)

がん哲学外来コーディネーター養成講座については、当会の女性コアメンバー2名も出席しましたが、なかなかの人気講座で満員120名の参加者は2日間に渡って多彩な講師陣による中身の濃い研修と、数人毎のグループに分かれの「がん哲学外来の可能性」をテーマにしたグループ討議を行い、最終日にグループ発表を行いました。

もう一つの話題の遺伝子医学・遺伝子診療は初めて聞く人ばかりでしたが、遺伝学とは縦の遺伝継承と横の多様性から成り立っているという説明にまずは一回目の目からうろこがポトンと落ちました。何せ、遺伝というと縦の方向しかないと思っていた訳ですので。

で、次は遺伝子診療の場の様子で二回目の目からうろこが落ちました。遺伝子診療を受診するケースは、自身や子などが遺伝性の病気だと言われ、病気のことを詳しく知りたいとか、家族への影響、あるいは今後どうなるのか不安だ、といったことのようです。これって自分だけではなく、子や孫へ自分の病気が伝わるかも知れないし、現代ではその有無が分かってしまうということなのです。これは患者さんの受け取り方次第では救いのない一種の予定説(キリスト教で救われる者と救われない者とが神の意志によりあらかじめ定められていると考える説。カルバンの説は代表的)では、と思いました。

では、この診療室の仕事は、というと、正しく正確な知識による面談によって患者さんや家族などの思い違いや、信じてしまっているまことしやかな俗説などを取り除き、本人にとって一番望ましい対処法を共に考えていくことのように思えました。診療室の仕事は事実を見据えながらも思いやりあふれた治療法を提示する、ということなのでしょう。
とすれば、櫻井先生の遺伝子診療室はがん哲学外来と基本的なところで共通点があるということなのでしょうか。(専門と非専門という違いはもちろんあります)

最後に、遺伝子の持つ予定力?とは絶対的ではなく、確率にすると、たとえばありふれた病気である糖尿病ではとして30%ほど病気のリスクがあがるということでした。また、遺伝要因の関与の程度(遺伝率)は形質(身長とか)によってさまざまであると言うことでした。

日本医師会のホームページによると喫煙者の中年期での死亡率は非喫煙者の約3倍ということですが、それがどうしたと頑張ってたばこを吸っている人はまだまだ沢山います。で、3倍とは300%のこと、30%なんて大したことではない?
一方で遺伝子は個性の素でもあるわけで、それぞれ一人一人が先祖代々連綿として持つ遺伝子という縦の糸のおかげで、となりの人と同じではない個性を持つことが出来ているわけです。冒頭の遺伝子学は縦の遺伝継承と横の多様性から成り立っているという説明での多様性とは、それぞれに個があってこその多様性であって、「みんなちがってみんないい。これでいいのだ(バカボンパパ)」という説明が櫻井先生のスライドの最後の締めくくりになる、というお話でした。(文責 J)

がん哲学外来について

患者さんが抱える悩みは病人としての悩みではない。人間としての悩みです。 がんという大病を得たとき、それを背負って人間としてどう生きるかという深い悩みです。それは「心のケア」というレベルではなく、自分という存在そのものを問う領域なのだと思います。ですから、「がん哲学外来」では、来られた方を「病人」の側面だけではなく、ひとりの人間としての悩みに焦点を合わせます。同じ人間として、対等の目線に立って、人間を学ぶ「人間学の場」でありたいと考えるのです …(提唱者であり当会の顧問である順天堂大教授・樋野興夫先生の著書より)

札幌の「がん哲学外来」(開設趣旨)

私達は樋野興夫先生の志に賛同し、車座になって意見交換をする運営をめざします。講演会スタイルではありません。参加者全員が同じ立場、同じ目線で耳を傾け、縁のあった方々に寄り添うことを願っています。