新渡戸稲造記念 さっぽろがん哲学外来

さっぽろがん哲学外来の活動予定や活動の様子などを
皆さんにお伝えします。皆さんの参加をお待ちしています。

がん哲学校たより・63(0100)

2015年05月27日 | 樋野先生からのメッセージ
第112回「がん哲学学校」
日野原重明先生、柏木哲夫先生~医療改革と宗教改革の懸け橋~

先週は、メディカル・カフェ in 菊名西教会(日本長老教会)、白鷺教会(日本キリスト教団)「がん哲学外来の処方箋~人生から期待されている~」、銀座教会(日本基督教団)「がん哲学外来~個性の完成~」と、3箇所の教会で、講演する機会が与えられた。多くの悩める人々の為に、全国の教会が、「がん哲学外来・メディカル・カフェ」を通して、大きく門戸を開き、カフェの場所を提供するだけで、日本国の医療維新は、スピードアップして、展開されることであろう。まさに、「医療改革と宗教改革の懸け橋」の歴史的・時代的要請・到来となろう。

お 茶の水乳腺研究会「乳癌の手術~温存手術・乳房再建等~」(東京ガーデンパレス)に出席した。一般演題「がん看護専門看護師による妊娠期乳がん患者・家族 の希望を支える支援」、特別講演「乳がんを美しく治す~乳房再建のこれまでとこれから~」には、新鮮なインパクトを受けた。日々学びである。「妊娠期乳が ん患者」の壮絶な生涯を拝聴し、涙なくして語れない。人生の不条理である。

佐賀県医療センター好生館で、講演「がん哲学外来~馬を下りて花を見る~」
をする機会が与えられた。会場は、多数の参加者で一杯であり、感激した。講演に先立ち、理事長から、病院見学と「好生館の歴史」を深く学んだ。江戸幕末(1834年)に、佐賀藩主鍋島直正の命により、「病院と医学校を兼ねた近代的医学校として設立された『好生館』」は、180年の歴史を持つ。まさに、「歴史に学ばなければ、歴史が教えにやって来る」である。「温故創新」の学びである。

週末は、wifeと、佐久がん哲学外来研修会と交流会(がん哲学外来研修センターに於いて)に赴いた。筆者は、講演「家庭哲学~温かい手・温かい心・温かい笑顔~」をし、柏木哲夫先生の講演「いのちに寄り添う」の前座を務めた。
今月は、日野原重明先生、柏木哲夫先生と、日本国を代表する、2人のクリスチャン医師と、講演する機会が与えられた。人生の想い出となる、記念月となった。

終了後、万座温泉(日進館)に訪れ、講演「がん哲学外来~人生から期待されている~」をする機会が与えられた。温泉に浸り人生を静思する時でもあった。







がん哲学校たより・62(0099)

2015年05月27日 | 樋野先生からのメッセージ
第111回「がん哲学学校」

国際教養に通じるセンス~『枠組み』を考えられるようになる~

「順天堂大学国際教養学部開設記念シンポジウム~今、日本人が学ぶべき国際教養~」が開催された(5月13日)。「品性」のあるNHKのアナウンサーの司会のもと( http://www.juntendo.ac.jp/event/20150513-00000102.html )、 木南英紀順天堂大学学長・国際教養学部長の「開会の挨拶」、小川秀興学校法人順天堂理事長の「はじめに~順天堂の国際教養とは~」に続き、明石康元国連事 務次長の「教養学士の60年:仕事と回顧」、池上彰東京工業大学教授の「世界に通用する教養とは」の講演があった。会場は、満席であった。筆者は、閉会の 挨拶「国際教養~純度の高い専門性と社会的包容力~」の機会が与えられた。

早速、多数のコメントを頂いた。「満員御礼で、関心の高さを感じました。」、「とても面白く、素晴らしい時間でした。」、「国際教養学部開設を記念する、 素晴らしい会であったかとおもいます。学生には、フロンティア精神を、持ち続け多くのことに取り組んでもらいたいと思います。
私自身に取っても、とても 充実したシンポジウムでした。
本当にありがとうございました。」、「明石康さんと、池上彰さんの、お二人のチョイスに、順天堂は国際教養に通じるセンス が輝いているなぁとしみじみと感じました。」、「明石康さんの世代が、懸命に守ってこられた平和を、広々とした教養で守り続けていかねばならないと、教え られたこと、池上彰さんは、やはりとてつもなくお話がお上手で、これからは、日本人が『æ��組� �』を考えられるようにならないといけない…という気づきを与えられたこと、興夫さんの励ましのお言葉に、夫婦二人して、清々しい思いで帰路につきまし た。」、「明石先生、池上先生のお話は、ユーモアもたっぷりで、弊社もグローバル化の波に流れておりますが、考えさせられる事が多く、沢山メモを取らせて 頂いた次第です。樋野先生の最後のお言葉、教養
とは。というお話も、私自身教養があまりないので、痛切に感じた次第です。」

さらに、京都から参加して下さった、知人の京都大学医学部名誉教授からは、「最後で、モソモソ喋っておられたの、結構受けていたではありませんか。」と、 ニューモアに溢れる、励ましの、お褒めの言葉を頂いた。スタッフの皆様と共に、歴史的な、人生の想い出となる、生涯忘れ得ぬシンポジウムとなった。

がんとどう向き合うか 日野原重明氏や「がん哲学外来」の樋野興夫氏招き市民公開講座

2015年05月11日 | 樋野先生からのメッセージ
聖路加国際病院相談支援センター主催のがん診療連携拠点病院市民公開講座が9日、聖路加国際大学(東京都中央区)で催された。第1回目となる今回は、「がん哲学外来」の提唱者である順天堂大学医学部教授の樋野興夫(ひの・おきお)氏と、同院名誉院長の日野原重明氏を招いての特別講演が行われ、患者自身だけではなく周囲の人々も癌(がん)にどう向き合い、どのようにして患者と共に生きていくかが語れらた。講演会の後には、樋野氏と同院腫瘍内科部長の山内照夫氏との対談も行われた。

全国健康保険協会によると、現在日本人の2人に1人は癌にかかり、そのうち3人に1人が死亡しているという。癌は治る病気とされている一方で、死亡率もかなり高く、さらに再発の可能性も大きい。そのような癌と一緒に生きることを真正面から取り組む樋野氏は、対話型外来である「がん哲学外来」を2008年に開設し、現在「メディア・カフェ」としてその働きが全国に広がっている。

がん哲学外来とは、生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、癌の発生と成長に哲学的な意味を見出そうする人との対話の場。一般的な癌相談やセカンドオピニオン相談とは違い、診察室ではなく病院外に設けたメディア・カフェと呼ぶ場所でお茶を飲みながら、患者やその家族の話に耳を傾ける。

がん哲学外来のモットーは、「暇げな風貌」と「偉大なるお節介」。忙しさを感じさせないゆったりした雰囲気の中で、患者の苦しみやつらさにじっくり耳を傾ける。話に共感することで、患者は笑顔を取り戻し、癌であっても自分の人生を生きることができる、と樋野氏はこれまでの経験を話す。また、話を聞くときに欠かせないのが「お茶」だと樋野氏は言う。「人間は沈黙が続くと話し出すが、その沈黙を耐える間のお茶は欠かせない」と話し会場の笑いを誘った。

がん哲学外来の背景には、樋野氏が尊敬する先人たち、内村鑑三、新渡戸稲造、矢内原忠雄、南原繁、そして元癌研究会研究所長の吉田富三の存在がある。彼らの言葉は、がん哲学外来を研究する樋野氏の支えとなっている。言葉は患者をも励ます。たとえば、「人生に期待する」ではなく、「(あなたは)人生の方から期待されている存在」だと言えば、困難にあっても落ち込むことはなくなる。自殺を試みた患者に「人は最後に死ぬという大事な仕事が残っている」と伝えたことで、生きる力を取り戻した人もいるという。

「希望は、明日死ぬとしても、目の前にある花に水をあげる行為へと導く」と樋野氏は言う。さらに、「自分の命より大切なことがあることは、役割意識と使命感を自覚させる」と、がん哲学外来が人間学であり、医療の枠を超えたものであることを示唆した。

樋野氏の講演に続いて登壇した日野原氏は、「がんになってからの生き方」というテーマで話した。日野原氏によると、癌は今、種類によって6割近くは治る病気になってきているという。ただし、癌の特徴は、肉体的、精神的、スピリチュアル的、社会的苦痛を伴う全人的苦痛(トータルペイン)の病であることを指摘した。その上で、癌になってからの生き方として、「生きる希望を持つこと」を挙げた。人間は将来において希望があるからこそ生きられるのだという。
話の中で日野原氏は、精神科医の神谷美恵子や、ホスピス運動に影響を与えた英国人医師シシリー・ソンダース、哲学者ソクラテスの言葉を通して生きることについて語った。その中で最も力を込めて話したのは、「生き方を変える」ということ。「動物は走り方を変えることはできない。鳥は飛び方を変えることはできない。しかし、人は生き方を変えることができる」このことを信じてほしいと訴えた。
最後に日野原氏は、命というのは、長さだけでなく、いかに深く生きるかということに大きな意義があると語った。

講演後の対談で、腫瘍内科が主導するオンコロジーセンターの働きについて、腫瘍内科部長で同センター長の山内氏が説明した。同センターは、外来での抗癌剤治療を集約して行っている。癌を発症し、たとえ死が間近に迫っていることが分かっても、患者は生きていることには変わりがなく、その生きている瞬間を感謝して、喜んで生きていられるよう手伝っているという。その中で、患者が最後まで生き続けたことの証しとなることが、医師としての喜びだと語った。

この日、会場は350人もの人で埋め尽くされた。今回の市民公開講座は、先着順の申し込み制だったが、人気が高く、早くから定員に達して申し込みが締め切られるほどだった。質疑応答の時間でも、「メディア・カフェをやりたい」といった声や、「病院での診察時にどういうことを医師に伝えたらいいのか」といった質問、また看護師から現場についての話があるなど、活発に質問や意見が出された。第2回の開催は近日中に告知される予定。

がん哲学校たより・61(0098)

2015年05月11日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです(2015.5.11配信)
第110回「がん哲学学校」
「情熱と風貌」~ すべてのものを忘れた後に残る ~

今年のゴールデンウイークは、父の3回忌で、wifeと帰郷した。92 歳の母と再会した。また、今年3月を以て、廃校になった鵜鷺小学校の活用に関して、村の人と、夜遅くまで、話合しの時をもった。各種研修会の教室の提供、Medical village 構想は、時代の要請となろう。帰京の際の、母との別れは、悲しかった。

広 島大学医学部3年生の特別講義「がん病理学~遺伝・環境・がん哲学~」の機会が与えられた。全員のレポートを帰京中の新幹線の中で、丁寧に拝読した。真摯 な感想文と、将来の医師像に対する思いの記述に感激した。まさに、「教育とは、すべてのものを忘れた後に残るものをいう」(南原繁)の言葉が、甦って来 た。教育者の役割・使命にとって、「情熱と風貌」の大切さを、再認識した。

週末、聖路加国際大学 聖路加国際病院相談支援センター主催 がん診療連携拠点病院 市民公開講座「第1回 記念特別講演“がん哲学外来”とは」(聖路加国際大学 アリスC. セントジョン メモリアルホールに於いて)で、筆者は、104歳の日野原重明先生の講演「がんになってからの生き方」の前座で、講演「がん哲学外来~本質的な人間の見直し~」する光栄を与えられた(毎日新聞 朝刊 2015年5月10日付け)。日野原先生は、演壇で、立って、power point を使用しながら、講演された。東京周辺以外にも、札幌、石巻、群馬県、長野県からと、多数の参加者があり、大盛況であった。日野原先生と一緒に写真も撮られ、参加者の皆様にとっては、忘れ得ぬ人生の想い出となる講演会となったであろう。

講演会後、wifeと東京女子医大に入院中の患者のお見舞いに立ち寄った。そして、「暮らしの保健室 かなで がん哲学外来新小岩 メディカルカフェ」開設記念セレモニーに赴いた。スタッフとの夕食会では、楽しく語り、大変盛り上がった。

休日、「がん哲学外来・まちなか メディカルカフェ in 埼玉」(さいたま メディカルタウンに於いて)に招待され、記念講演『対話の力』を行った。多数の参加者があり、スタッフも、看護師、医師、マスコミ、小学校教師、企業経営者、患者、市民と極めて多彩であり、カフェの新しいモデルとなる予感がした。

がん哲学校たより・60(0097)

2015年05月05日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです(2015.5.3配信)
第109回「がん哲学学校」
病理医の役割 ~ 純度の高い、悔いのない人生 ~

順天堂大学保健看護学部での、2コマ(90分 x 2コマ)の授業「ターミナルケア」(4年生)で、静岡県三島市に赴いた。「ターミナルで ありながら 自宅ですごされている がん患者さんの様子、がんばり等・・残りがすくなく なりつつなる中、最後まで 悔いのない人生を送ろうと 奮闘している がん患者さんと ご家族の様子や支援について お話いただけると幸いです。病院、緩和ケア病棟以外に、こんなターミナルの形もあるよ! ということを ご紹介いただければと思います。キーワードとすれば、がん終末期の患者さんの 生きがいや、価値信念、自己知覚と いったところでしょうか・・・」の要望には、出来るだけ、答えながら、全力を尽くした。教室では、多くの質問もあり、また、学生さんのコメント「哲学的な見地からの お話で面白かった」も、後日、送られて来た。

第104回日本病理学会総会(2015年4月30日~5月2日)が、名古屋国際会議場に於いて、高橋雅英会長(名古屋大学大学院医学系研究科 分子病理・腫瘍病理学 教授)によって開催された。大変、「純度の高い病理学」の最先端の発表を拝聴し、大いなる学びの時であった。まさに、「マクロからミクロ」であり、「DNAから臓器」であり、病理学の時代的要請を痛感した。第1日目の夕方、筆者が代表を務める「リンチ症候群研究会」で、コンパニオンミーテイング「リンチ症候群の展望と病理医への期待」を企画する機会が与えられた。日々勉強である。

最終日の市民公開講座「もっと知っておこう、子宮頸がん~あなたとあなたの大切な人のために~」(4:00 ~ 6:00 pm)では、女優:仁科亜季子氏「元気な明日のために~がんに負けない~」、井箟一彦先生(和歌山県立医科大学 産婦人科学)「子宮頸がんを予防しよう~女性の健康を守る~」、筆者「純度の高い専門性と社会的包容力~病理医の役割~」の講演と、高橋会長と吉川史隆先生(名古屋大学大学院医学系研究科 産婦人科学 教授)の司会による、パネルデスカッションが企画された。初めて、仁科亜季子氏と話す機会が与えられた。大変、感激した。拙著『いい覚悟で生きる』を謹呈させて頂いた。会場は、多数の参加者があり、大変、有意義な、心温まる講演会であった。まさに「夕暮れ時に、光がある」時であった。人生の想い出に残る名古屋での学会であった。


がん哲学外来について

患者さんが抱える悩みは病人としての悩みではない。人間としての悩みです。 がんという大病を得たとき、それを背負って人間としてどう生きるかという深い悩みです。それは「心のケア」というレベルではなく、自分という存在そのものを問う領域なのだと思います。ですから、「がん哲学外来」では、来られた方を「病人」の側面だけではなく、ひとりの人間としての悩みに焦点を合わせます。同じ人間として、対等の目線に立って、人間を学ぶ「人間学の場」でありたいと考えるのです …(提唱者であり当会の顧問である順天堂大教授・樋野興夫先生の著書より)

札幌の「がん哲学外来」(開設趣旨)

私達は樋野興夫先生の志に賛同し、車座になって意見交換をする運営をめざします。講演会スタイルではありません。参加者全員が同じ立場、同じ目線で耳を傾け、縁のあった方々に寄り添うことを願っています。