新渡戸稲造記念 さっぽろがん哲学外来

さっぽろがん哲学外来の活動予定や活動の様子などを
皆さんにお伝えします。皆さんの参加をお待ちしています。

がん哲学校たより・6(0023)

2013年12月26日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです。(2013.12.25配信)

第38回「がん哲学学校」

勝海舟・新渡戸稲造・吉田富三~心悩む者へ寄り添う資質~


今年も、忘年会シーズンになってきた。時の流れの速さを痛感する師走である。

先週、福島県立医大医学部の4年生に「がん哲学外来」の授業をする機会が与えられた。講義後、多数の真摯な質問があり、大いに感激した。授業の前には「吉田富三記念 がん哲学外来」を行った。「吉田富三記念 がん哲学外来」は、福島県出身で「吉田肉腫」&「腹水肝癌」の発見などで世界的に知られ、文化勲章を受けた福島県出身の病理学者:吉田富三 (1903-1973) を記念して、2009年に開設され、月1回のペースで、病院の臨床腫瘍センターで、継続的に定期的に行われている。何時も予約一杯である。思いを超えた「人生の摂理」を感ずる。

筆者は、2003年「吉田富三生誕100年記念事業」を「吉田富三の愛弟子」である菅野晴夫先生(がん研究会 顧問)の下で、実行委員として関与した。吉田富三は、「医学者としてのみならず、癌という病気を通じて社会の原理まで言及す言葉」を多数残している。「癌細胞で起こることは、人間社会でも起こる」を学び、2004年『がん哲学~がん細胞から人間社会の病理を見る~』を出版するという時を与えられた。筆者が「吉田富三の孫弟子」と紹介される所以である。

週末の午後、「第4回勝海舟下町(浅草)がん哲学外来シンポジウム」に招待された。第1部では、三井記念病院緩和ケア科の医師から「浅草の街から~地域における在宅医療・緩和ケアの実践~」、また慶應義塾大学病院緩和ケアチームの医師から「身近になった緩和ケア~QOLを改善するためのアプローチ~」と題して講演がなされた。第2部では、「勝海舟の語り人」から「今なぜ勝海舟なのか?~浅草がん哲学外来が目指すところ~」の講演があった。「特別講演」は、垣添忠生先生(日本対がん協会会長)の講演「妻と生きた私の人生~生きることを楽しむ 於 浅草~」であった。大いなる感銘を受けた。読売新聞記者のナビゲータによる対談「生きることの素晴らしさを共感する」も大変盛り上がった。

「新渡戸稲造記念 がん哲学学校 in 志木」が開催され、多数の参加があったとの嬉しいメールが届いた。「勝海舟の先見性と胆力」&「新渡戸稲造の寛容と賢明」&「吉田富三の俯瞰的ながん学」は、「がん哲学外来」の源流でもある。

がん哲学校たより・5(0022)

2013年12月15日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです。(2013.12.15配信)
第36回「がん哲学学校」

懸け橋をつくる:国を超えて、時を超えて!~国際教養の人材資質~

先週、筆者は、御茶の水の高層ビルのソラシティで、「中皮腫」の講演を依頼された。早速、「本日は大変興味あるお話ありがとうございました。一同、大変勉強になったと申しております。悪性中皮腫に対する治療薬を早期に何とかしなければという気持ちがいっそう強くなりました。」とのコメント頂いた。

<がん哲学外来>名古屋メ ディカル・カフェ開設記念式で記念講演を行う機会が与えられた(名古屋市中区栄)。大都市の真ん中で、患者が来訪しやすい場所と雰囲気でのメディカル・カフェの開設は、「医療の隙間を埋める」・「企業の隙間を埋める」活動として、今後、ますます時代の要請となるであろう。

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患克服研究事業)「神経皮膚症候群に関する調査研究班」で、筆者は、「結節性硬化症」について、発表する機会が与えられた(学士会館)。アメリカ・癌研時代の研究テーマ「遺伝性がんモデル疾患」から、単離・同定した遺伝子(1994年)が、ヒト結節性硬化症の原因遺伝子(TSC 2)のホモローグであった。中皮腫のマーカー(ERC)も、このモデルの多段階発がんの解析中に単離・同定したものである(1995年)。まさに「小さな源流から拡がる本流」の川の流れの如くである。

第10回お茶の水アカデミアシンポジウム「新渡戸稲造没80周年記念・新島襄生誕170周年記念シンポジウム~今、懸け橋をつくる。国を超えて、時を超えて!~」(主催:21世 紀の知的協力委員会)が開催された。筆者は、「新島襄ー>クラークー>内村鑑三―>新渡戸稲造->の歴史の流れ」で講演する機会が与えられた。パネルデイ スカッション「国を超えて、時を超えて」は、大いなる学びの時であった。ニューモア溢れる司会(島田義也先生)と渡辺その子氏(文科省科学技術・学術政策 研究所 総括上席研究官、元ユネスコ)、斉藤卓也氏(文科省、21世紀の知的協力委員会事務局長)の胆力ある発言には感動した。また、筆者は、「21世紀の知的協力委員会議長」として、総括「温故創新」・閉会の辞を述べた。現代の「日本国の処方箋」の何たるかを再認識する時でもあった。
真の国際教養の「人材資質」の何たるかを静思・実行する時代の到来でもある。

第3回会合を開きました(0023)

2013年12月13日 | 集まりの様子
瀧元先生ご講演の様子です。後ろは瀧元先生のお子さんです。
飛び入りレポート(東北支援・健康棒ワークショップ)
フェイスブック講習会。苦闘?する講師の田村さん
超ミニ忘年会です

去る12月7日、第3回目にして今年最後の例会を開きました。今回はやること沢山でした。

まずは、樋野先生発行のお節介症候群認定証の授与がありました。授与と言っても事務局長と補助者が席をぐるりと回って該当者に証書を手渡すだけですが、さすがにみんな嬉しそうです。みんな、これで晴れて公認?のお節介焼きになりました。

次は札幌大のスポーツ・武芸文化論担当の瀧元先生による講演「からだとこころが開くとき」がありました。一見、がん哲学とはほとんど関係のないように思えましたが、相手に対する時の心構え、というか自分の意識というか、会話をしていてもそれは外観だけで、自分も相手もそれぞれの心は閉じたまま、それぞれの想定内でやっているだけ、といったこととか、武術の立合いとは構えないで、あるがままに、おじけづかずに、お互いの命をその場に預けること、とか。

別の見方では、一つ一つその場の関連性を大切に、といったようなことを懇切丁寧に教えて頂きました。さて、お話の中に「竹内敏晴」という名前が出来てきました。

竹内敏晴氏は高名な演出家で「ことばが劈(ひら)かれるとき」という本の内容紹介には「からだは、自分と世界とがふれる境界線だ。そこに必死になって生きようとしながら、閉ざされ、病み、ゆがむ“からだ”…。幼時に耳を病んだ著者が、どのよ うにして“こえ”と“ことば”を回復し、自分と世界とのふれ合いを、また、人間関係のダイナミズムをとり戻していったか―。長く苦しい努力の過程を語りつ つ、人間の生き方の根底を照らし出すユニークな一冊。」というものがありました。

また、別の「癒える力」という本の紹介では「私たちの「からだ」はみずから癒える力をひめている。閉じこめられた「からだ」を目覚めさせ、新しい自分を見いだすには、どうすればよいか?出会う。聴く。触れあう。歌う。安らぐ。―からだの語ることばに耳を澄まし、人と人との響きあう関係をひらく。長年にわたり実践してきた「からだとことばのレッス ン」の現場での生きた体験と洞察をもとに書かれた、いま孤立に苦しむひとにおくる本。」とありました。

瀧元先生の今回のお話はご専門の武道に関連したお話でしたがこれをイントロとして、次回では「からだとことばとこころ」の本質についてのお話をして頂きたいと思います。

さて、講演の次はメンバーの一人である気功家の小山内さんの飛び入りレポートで「2013年秋 東北支援「健康棒ワークショップパート3」の説明がありました。
今回の訪問の目的は岩手県大槌町の仮設住宅で暮らす4600人(人口の40%)を対象に仮設住宅での健康棒ワークショップを開くことと釜石市で健康棒楽々マッサージ指導員養成講座を新たに実施することでした。訪問先は①小槌第4仮説団地、②旧安渡小学校仮設団地、③吉里吉里第2仮設団地、④大槌第10仮設団地、⑤サポートセンター和野っこハウス、⑥釜石市コミュニティ消防センター他の7カ所を4日間で、という強行軍でした。

レポートの最後では小山内さんの所感が述べられているのですが、①参加者数がどこも少なかく、理由はイベント慣れして集まりにくくなっているのと集まってくる人の固定化、②アルコール依存症が増えているとか認知症が進んでいるとか、仮設生活の様子がなかなか掴めなくなっている、③積極的に出てくる人と閉じこもりがちな人に2極化しているようにみえる、④年2~3回の訪問では閉じこもりがちの人にアプローチするのは難しい、⑤3年目を迎えていままでのやり方にもう一工夫が求められている、といったことが書かれています。そして次回は歌あり、踊りあり、温泉と食事、子供からお年寄りまでの世代間交流といった多彩な内容のイベントを構想しているとのことでした。

小山内さんご自身が腎臓がんの生還者でもあり、大いなる慈悲の心をお持ちですが、まさに瀧元先生のお話ではありませんが、「からだとこころが開くこと」に苦闘されています。またイベントという点ではがん哲学外来としても同じ悩みを持っています。ともにからだとこころが開くことに哲学しつつ、お互いに知恵を出して助け合っていけたらいいな、と思います。東北支援の旅、お疲れ様でした。

さて、次は同じくメンバーの田村さんによるフェイスブック講習会でした。こういうコミュニケーションツールは、正直、昭和世代には取っつきにくく、やらず嫌いの人が多いので、講師も苦労ばかりしてなかなか前進しないのですが、今後もなんとかその気になって頂けるよう、しつこくあきらめずチャンスあらば第2第3の矢を放ちたいと思っております。さっさとフェイスブック版のがん哲学外来を開いてしまうのが勝ち?かも知れません。

次も事務的なお話ですが、がん哲学外来の名刺を作ろうと名刺の内容を説明しつつ、記入用紙に氏名とかの表示項目を一人一人に記入して貰いました。職業は主婦にするわ、なんていう人もいてなかなかユニークな名刺ができそうです。みんなそれぞれに思いを巡らせていて予想外に盛り上がっていました。

最後は超ミニ忘年会でした。もちろん立ったまま、ビールとかおつまみをつまみながらの楽しい時間でした。(J)

ちょっと一息・おかげ人生(0022)

2013年12月02日 | ちょっと一息
最近、女優の高峰秀子さん(1924-2010)に興味を持っておりまして、彼女がらみの本を読んでいます。その本の中の「おいしい人間」というタイトルのエッセーの中に「おかげ人生」と題しての短文がありまして、すこしご紹介します。

彼女は結婚以来、ご主人の映画監督松山善三氏の脚本の口述筆記を受け持っていました。1日に50枚、100枚と原稿用紙のマス目を埋めるのはなかなか辛いことで、「いくら愛する主人のためとはいえ、ものには限度というものがある。ただ、その限界を超えたとたんに、その作業は主人のためではなく、自分とのたたかいに切り替えるまでのことなのである。そのちょっとした切り替えがまた別の力を生んでファイトがわく。人のためにすることと、自分を試すのとは全く別なことで、私のような欲の張った人間にとっては意外と利用価値があるのだ。」というようなことを書いております。

また、人間関係について、「考えてみると、四十余年という長い間、すぐには心に浮かぶ特定の人の面影はなくても、数えきれぬほどにたくさんの人たちの恩恵を受けて私は生きてきた。たとえ、それらの全部が「親切」や「愛情」や「教育」でなかったとしても、なんらかの意味で私に問題を投げかけてくれたことに変わりはない。私はそれらの人のおかげで生きてこられた。私は私の人生を「おかげ人生」だと思っている。」と言っています。潔いという言葉が似合う人ですね。

がん哲学校たより・4(0021)

2013年12月02日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです。(2013.12.1配信)
第35回「がん哲学学校」

「わたしの目には、あなたは高価で尊い」~メディカル・カフェの理念~
先週、VIPクラブ創設20周年を記念して「国会クリスマス晩餐会2013」が開催(ホテル・ニューオータニ東京)され、筆者は、wifeと招待された。イスラエル国、ルワンダ共和国、タンザニア連合共和国、ナイジェリア、ウガンダ共和国の駐日大使や、現職の農林水産大臣の林 芳正氏、参議院、衆議院議員と面談する機会が与えられた。日本の政・財・官界、及び、ビジネスマン、専門職の方々など、各界の指導的立場にある方々も多数参加されており、くつろいだ雰囲気の中での温かい出会いの場であった。ギインズ(国会議員によるバンド)の演奏には楽しんだ。VIPとは、「わたしの目には、あなたは高価で尊い (Very Important Person in God’s eyes)」(イザヤ書 43章4節)に由来するものである。

文科省がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン採択事業「がんプロ市民公開シンポジウム(東京理科大学主催 神楽坂キャンパスに於いて)が開催された。基 調講演では、「不治の病から切らずに治す時代への展望と問題点」、「団塊の世代の高齢化を迎えこれからのがん医療の課題と解決策」が話され、大変勉強に なった。また、『研究者・医療人の育成:医学・理学・薬学の視点から』
「医学と物理学を結ぶ研究者育成を目指して」、「基礎薬学を処方提案に活かす試み」が、発表された。筆者は、「研究者・医療人の2つの使命」のタイトルで講演の機会が与えられた。早速、「先生のお話を拝聴するたびに,人材育成の重要さと難しさを痛感します。」、「本当に素晴らしいご講演をありがとうございました。暇気な風貌と偉大なるお節介を心がけ、精進致します。」など、心温まるメールを頂いた。大変、実りある有意義なシンポジウムであった。

週末の午後は、定例の「<がん哲学外来>お茶の水メディカル・カフェ in OCC」が開催された。「患者・医療スタッフ・専門家との対話を重視したサロン形式のカフェ」の一つのモデルケースとなり、「地域社会において期待される役割を果たすきっかけ」として、大きな足掛かりになればと願い、昨年(2012年5月)にスタートした。 毎回50名を超える参加者がある。今回は、大坂、福井からの出席もあり、優しさ・思いやりに包まれた一時であった。今後、「お茶の水メディカル・タウン」の拠点的なユニークな器として、展開して行く予感がする。

がん哲学外来について

患者さんが抱える悩みは病人としての悩みではない。人間としての悩みです。 がんという大病を得たとき、それを背負って人間としてどう生きるかという深い悩みです。それは「心のケア」というレベルではなく、自分という存在そのものを問う領域なのだと思います。ですから、「がん哲学外来」では、来られた方を「病人」の側面だけではなく、ひとりの人間としての悩みに焦点を合わせます。同じ人間として、対等の目線に立って、人間を学ぶ「人間学の場」でありたいと考えるのです …(提唱者であり当会の顧問である順天堂大教授・樋野興夫先生の著書より)

札幌の「がん哲学外来」(開設趣旨)

私達は樋野興夫先生の志に賛同し、車座になって意見交換をする運営をめざします。講演会スタイルではありません。参加者全員が同じ立場、同じ目線で耳を傾け、縁のあった方々に寄り添うことを願っています。