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パライソメッセージ20130719 No.20

2013-07-19 18:27:59 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.07.19 N0.20

    Mail : isokawas@goo.jp

     Blog : http://blog.goo.ne.jp/isokawas

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  「パライソメッセージ20130719 No.20」を送ります。「不要だ」「余計なお世話だ」といわれる方は、お手数ですがその旨ご連絡お願いします。

 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:何故日本は『壊滅的な』状況になってしまったのか④ 

 BIS規制は1988年、国際決済銀行(Bank of International Settlement)による取り決めで、バーゼル合意とも言う。この規制(合意)とは、国際業務を行う銀行の自己資本比率を8%とする、という内容である。その背景は、1980年以降国際金融市場が飛躍的に拡大し、その一方ではデリバティブ商品(金融派生商品)のリスク管理などの懸念ということである。8%という根拠も定かではない。ちなみに最近バーゼル3規制が合意されたという記事が掲載されていた(2013年7月12日 日経新聞)。バーゼル3では、経済のファンダメンタルの堅さから、3+2の5%の自己資本比率と書かれていたが、詳細な記事ではないので、後日検討。

 当時日本ではバブルの真っ只中で15行あった都市銀行は、絶好調の極みだった。世界の銀行の資産残高のトップ10のうち、日本の都市銀行が6行を占めるといった具合だった。当時は日本中の不動産が投機対象となり、やがて飽和状態になり海外にも進出するといった状態であった。マンハッタンやウォール街の多くのビルは、三菱地所、野村不動産、森ビルや今では民事再生会社となった日本総合地所などが買収するといった状態になった。なお、日本総合地所はその後民事再生法の適用をうけ、再生会社となり、当然新卒採用もゼロというのに、なぜか未だにトップ150にリストアップされている。

 熱狂的なお祭り騒ぎに浮かれるのはトップクラスのディベロッパーだけでなく、庶民・大衆も大いにバブルに踊る。普通の大衆が不動産投機に走り、物件を購入するとそれを担保に銀行は湯水のごとく追加融資を実行し、さらに不動産を買い足していく。頃合を見て物件を売り、そのときには購入時の数倍から10数倍といった値段がつく。土地ころがし、不動産ころがしで資産が何倍にも何10倍にも膨れ上がる。当時私は、会社といっても街工場の社長であったが、銀行からは融資話が良く持ちかけられた。私は性に会わないのと、本業が赤字であったのとでバブルに浮かれなかったが、同業の社長などは、

 「イソさん。わしは死ぬまでに10億円を残すことが出来る。」

 と豪語し、日経新聞などに不動産広告が出ると、やれ博多や岡山や高松やなどと、完成もしていない物件を電話一本で売買していた。その社長は飛ぶ鳥を落とす勢いであったが、バブルがはじけて暫くすると、破産も出来ず夜逃げしてしまった。

 そんな狂気じみた世の中を煽り、演出してきたのが銀行だ。金融の超緩和で溢れる資金をジャブジャブと貸し付け、融資残高は膨大に膨れ上がり、分積み・両建てで預金も膨れ上がる。当然資産残高も膨れ上がり、世界トップ10のうち6行が日本の都市銀行といった凄いことになったのだ。一方でマンハッタンやウォール街のビルをどんどんと買収されることは、アメリカとアメリカ国民の愛国心を痛く傷つけることとなったのみならず、アメリカに日本脅威論が大いに高まる。バブルに狂奔する『行け行け』の日本はアメリカのみならず、EU諸国にとっても大いに危機意識を煽った。そこで出てきたのがBIS規制(バーゼル合意)である。

 自己資本は総資産に占める自己資本の割合だ。当時の日本の都市銀行は、分母となる総資産が貸付資産の膨れ上がりで膨大になり、つまり自己資本比率が小さくなっていた。自己資本比率を上げるためには分子の自己資本を大きくするか、分母の総資産を小さくするしかない。自己資本は剰余利益の蓄積であるから、増やすのに一定の時間を要する。分母の総資産は、手っ取り早く減らそうとすれば貸付資産を減らせばよい。そのため都市銀行は『貸し渋り』『貸剥がし』を強引に進めた。そのターゲットはリスク資産と見做された中小企業であった。

 もうひとつ、バブル崩壊の原因は金融緩和による資金の超飽和状態が基本的な原因であるのだろうが、日本経済を壊滅的にしたのは、都市銀行による『貸し剥がし』『貸し渋り』による中小企業への大打撃だろう。

 BIS規制によって、北海道拓殖銀行つまり都市銀行の倒産という資本主義にとっては大恐慌に匹敵する事態が発生した。それまで15行あった都市銀行は4行のメガバンクに再編される。すべてのメガバンクに1,000億円単位で公的資金が注入され、新生銀行に至っては未だに完済されておらず、実態は国による管理銀行である。かつて、世界の預金量ベスト10に6行の都市銀行がランクインしていたのだが、現在では1行のみがベスト10である。

 銀行の『貸し渋り』『貸し剥がし』は現在も続いており、冒頭のように世界的にはバーゼル3が合意されたとのこと。アベノミクスで『異次元の金融緩和』と喧騒してもごく一部でバブルを演出しているが、BIS規制やバーゼル3の枠組の内で、日本経済が好循環に転じるとは、とても思えない。

 それにしても、日本のマスコミは、アベノミクスと囃し立てるが、全く信用していない研究者・知識人は沢山おられる。外国人の経済アナリストはもっと辛らつである。そういった世論が無視される一方、参議院選挙がらみか無批判にアベノミクスを礼賛する日本マスコミの退廃には辟易とする。

 次回のパライソメッセージは、日本はどう生きていけばよいのかについての私論を述べたい。

(続く)

 

「一押しBook」

 POSSE VOL.19...

書名:POSSE Vol.19

著者:NPO法人POSSEの定期雑誌

出版社:NPO法人 POSSE あまり市販していないが、大手書店には販売しているところも有る

内容:

 NPO法人POSSEは若者の労働問題や貧困問題に取り組み、その解決を目指して実践することを目的に、大学院生、学生、若手社会人らで設立され、実践している団体。代表の今野晴貴氏はいま話題のベストセラー「ブラック企業~日本を食いつぶす妖怪~」の著者。

 6月発行の本号は、特集で「ブラック企業の共犯者たち」を組み、ブラック企業に加担のみならず自らの『商売』の為ブラック企業をも食い物にする悪徳ブラック士業(弁護士・社会保険労務士等)の告発や、児美川先生他のキャリア教育のあり方論、麓幸子さんの「親に出来る対策」、出版物紹介など、多視点からの論が載せられている。特集「アベノミクスは雇用を救うのか」では3人の経済学者の論が紹介されているが、現代経済学者・左派経済学者をバランスよくチョイスしたのだろうけれど、いささか評論的。ブラック企業大賞に選ばれたワタミの社長を、参議院選挙の比例候補に担ぎ出す安倍自民党なのだから、テーマに沿った論点を絞り込んだほうが良かったのではないかと思う。

 もうひとつの特集である「各政党に聞くブラック企業対策」は参議院選挙中でもあり、タイムリーで良い企画だと思う。対策が大変明確な政党もあれば、歯に衣を着せた煮え切らない政党も有る。ただ、参議院選挙目当てなのだろうが、各政党ともブラック企業について社会問題として取組まなければならないといったことについては、共通して述べている。運動の到達点なのだろう。

 小冊子ではあるが、内容が大変豊富でバランス感覚もよく、お勧めの一冊。

イソの評価:★★★★☆

蔵書:キャリアセンター就職資料にあり。

(続く)

コメント
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