胃 癌 日 記 80
-スキルス胃癌手術から1年半(2013年6月9日)までの日々-
-忙しい日々の仕事をこなし、CD学会へ-
仕事のほうは、私が担当する企画がいよいよ本番で、私自身も15日施設Kで開催された、ダイバーシティの学生支援勉強会に引き続き、16日から18日にかけて金沢への出張、ここでは私が責任者として張り付き企画を采配した。帰阪の翌19日は京都での業務と忙しさもピークの状態である。その一山を超えると今度は22日D大学で開催された、やはりダイバーシティ学生のサポート研修会。続く23日は仕事ではなく個人であるが、市ヶ谷のH大学で開催されたCD学会に参加。学会は16時からの開催なので、22日の研修終了後夜行の高速バスで横浜まで移動し、午前中に鎌倉の姉Hを表敬訪問した。
23日は朝7時20分横浜バスターミナル着で、モーニングサービスを食べた後鎌倉へ。8時50分鎌倉着。鎌倉駅から暫くは、次回の鎌倉土産を仕入れる予定である老舗の菓子屋の本店を確認し、確認後姉宅へ歩いて向かう。駅からは5Km強の距離がある。夜行バス旅の疲れを癒すには丁度良い距離だ。
10時15分に姉宅着、挨拶と近況報告を交わす。暫く家族のことや仕事のこと等を話し、11時過ぎに、一緒に昼食をと思い誘ったが、少し脚の調子が悪く、ちょっと歩くのが億劫そうだったので、本日は一緒の昼食は断念。いろんな話をして、12時25分に退出。姉宅の最寄のモノレールの駅から大船に向かい、大船駅で昼食のそばを食べ、甥のYと待ち合わせている飯田橋へと向かった。
飯田橋でYと合流し、喫茶店でコーヒープラススィーツ。Yとはもっぱら仕事の話や、日本人は何故グローバル人材が育たないかといった話。日本人が外国人とコミュニケーションやディペートをできないのは、語学力が低いとか日本人がシャイで謙虚だからではない。日本人の多くは主張すべき理念やポリシー、いわば哲学がないからだと私が言うと、Yは哲学はリーダーだけでよいと言う。私は更に、益川先生はノーベル賞の受賞記念講演を日本語でやったけれど大変な感銘を与えた、と言うと、それでも英語は出来ないよりできるほうが良いと返してくる。まあ、トイック400点の私が国連英語級、外国の賓客の対応もしているYに言うのだから負け惜しみのようではあるが、私はいたって本気である。何やかんやと他愛もない話もしながら、全く質は違うけれど、お互いの超多忙さに生きている実感に充実感を感じたり、ばかばかしさを恨んだりのYとの一時であった。
16時からはH大学で開催されたCD学会に参加した。
本日の学会は、「ブラック企業」についてのK氏の講演。K氏は現役の大学院博士課程に在学中で、若者の労働相談や生活・貧困に関わる相談、東日本大震災の被災者への復興支援やボランティアに取り組んでいる大学院生、学生が主体となったNPO法人の代表である。最近「ブラック企業-日本を食いつぶす妖怪-」という本を著し話題になっている。
講演の内容は本に沿った報告である。「ブラック企業」という言葉は若者たちの間で2010年ごろから広まっているネットスラングであるが、ブラック企業を3つのパターンに分類し、ブラック企業の見分け方等、新しい実践的視点から分析し論じている。ブラック企業は法の網をかいくぐり、過酷な労働条件を強要したり、あれこれと理由をこじつけての超過勤務手当ての不払いといった違法行為やハラスメントによって若者の精神・肉体を破壊し、挙句の果てにはメンタル面で病んでしまうほどに追込んだり、自殺に追い込んだりする。これらを社会問題であると論じているのは、重要な論点である。すなわち個別企業の問題にとどまらず、いわゆる「ホワイト企業」がいつブラック化するかもしれない世の中の風潮を止めさせ、更にはブラック企業を社会から退場していただくためには、社会問題としてブラック企業を位置づけ、社会全体としての共通理解とすることが重要であると思う。
K氏の講演に対しての質疑応答で、2点についてのコメントをした。第1には、「ブラック企業」というのは最近のネットスラングではあるが、実際にはかなり以前から存在していた。暴力団のフロント企業やら、詐欺商法やねずみ講といった反社会的行為を生業とする企業、あるいは以前存在した「日栄」といった中小企業金融会社は、債務返済でトラブルがあると『腎臓を売って借金を返せ』と執拗に脅迫的に迫り、ついには刑事事件に発展し幹部の逮捕、結果会社解散の至ったような例は、以前からある「ブラック企業」であること。K氏が提起する2010年頃からのネットスラングの「ブラック企業」はいわば「新型ブラック企業」ではないかということ。何故「新型ブラック企業」と区別するかといえば、以前から労働問題やキャリア形成支援に関わってきた人たちには、「ブラック企業」と言うと、非合法とか反社会的行為、暴力・恐喝・脅迫といった行為を生業とするといったある種のイメージを持っている人がかなりいる。一方「新型ブラック企業」は法の網をくぐり抜け、あるいはハラスメントを日常的に行うことによって、若者の身体、精神そして人格をも破壊するといった、結果的には日本の社会を蝕む存在であり、その点の認識を共有しておくほうが、ブラック企業を告発し社会から退場願うトレンドの構築にとってより有効と思えるからだ。
私のコメントの2点目は、「新型ブラック企業」を社会問題と論述したことは重要な指摘であるということ。何故なら社会問題であると言うことを、若者のみならず広範な世代に広く認識を広めることにより、ブラック企業が藩社会的存在であるということを共通理解とする、ひいては社会から退場願うということである。あわせてブラック企業に寄生する弁護士や社会保険労務士などの「ブラック士業」にも退場願い、就職率アップのために無批判にブラック企業を受け入れる大学の「ブラックキャリアセンター」にも頭を冷やして頂きたい。といったことを述べた。
以降のコメント、質疑応答は大変活発に行われ、コメンテーターのU先生の的確なまとめもあり、大変有意義なCD学会であった。
(続く)