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「老化は『病気』である」米教授の衝撃仮説…「老化」はなぜ起こるのか?【医師が解説】 202205

2022-05-26 20:54:48 | 気になる モノ・コト

「老化は『病気』である」米教授の衝撃仮説…「老化」はなぜ起こるのか?【医師が解説】
小西 康弘,藤井 祐介
 幻冬社ゴールド onlain より 220526


「老化は人間の運命ではなく『病気』であり、治すことができる」――これは長寿研究の第一人者デビッド・A・シンクレア博士が、自著『LIFESPAN 老いなき世界』の中で唱えた仮説です。
 一般に「老化=生きる上で避けて通れない変化」と考えられてきたことから、この主張に衝撃を受けた人も少なくないでしょう。では、老化とはどんな現象なのでしょうか? 最新の知見を交えて医学的に解説します。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

⚫︎老化は「病気」なのか?
 デビット・A・シンクレア博士はハーバード大学遺伝学教授で、タイム誌が毎年発表する「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた、権威ある人です。

 シンクレア博士は、世界的なベストセラーになった著書『LIFESPAN 老いなき世界』の中で「老化は人間の運命ではなく『病気』であり、治すことができる」という主張をしています。この主張はあくまでシンクレア博士の唱えた「仮説」ではありますが、ハーバード大学の遺伝学の教授の唱えた仮説であるだけに説得力があります。

「老化は病気である」ということだけだと突飛に聞こえるかもしれませんが、老化に関する最新の知見を交えながら、論理的に自説を展開することで、後の老化に対する考え方に大きな影響を与えました。

⚫︎老化は「遺伝的に決められた必然の現象」ではない
 では、そもそも老化とは何なのでしょうか。

 科学的に説明することはなかなか難しいかもしれません。何となく、私たちの身体の中に時計があって、生まれた瞬間から「死」に向かって時を刻んでいるようなイメージがあるのではないでしょうか。

 最新の研究では、老化を決定づける「老化遺伝子」のようなものがあるわけではないと言われています。

■人間の細胞には、身体全体の老化を防ぐ「修復機能」がある
 細胞自身は、分裂を一定回数繰り返すと分裂しなくなり、自然死(プログラム死)していきます。これを「アポトーシス」と言います。最近、細胞分裂を繰り返してもアポトーシスを起こさずに、ゾンビ状態になる細胞があることが分かってきました。これを老化細胞と言います。老化細胞はさまざまな炎症性サイトカインを放出し、私たちの身体に、慢性疾患の原因となる「慢性炎症」を起こすということが分かってきました。

 つまりアポトーシスというのは、細胞が劣化して“がん化”するのを防ぐための一種の防御システムであると考えられます。細胞が老化してくると、細胞死することで、身体全体の老化を防いでいると言うことができます。

「細胞が老化」することがすなわち私たちの「身体の老化」ではないということです。

 このように人間は、身体全体が老化しないようにできています。老化した細胞を排除する修復力があるのです。

 つまり「老化」とは、この修復機能が低下している状態のことです。逆に言うと、修復機能を維持できれば、私たちの身体はいつまでも新生を繰り返し、理論上は老化しないということになります。

■これまでは「遺伝子(DNA)に原因がある」と考えられてきたが…
 これまでは遺伝子が修復不能な障害を持つことで、老化すると考えられてきました。しかし現在、DNAは非常に堅固で容易には障害を受けないことが分かってきています。

「ジュラシックパーク」という映画をご存じの方も多いでしょう。映画の中では、保存状態が良い化石のDNAから恐竜をよみがえらせています。実際に可能かどうかは別としても、遺伝子(DNA)というのはそれほど変質しにくいということです。

 化学に詳しい人であれば、身体の中で発生する活性酸素が、遺伝子の障害に関係するのではないのかと思う方もおられるかもしれません。確かに、活性酸素は遺伝子を障害し、がんなどの病気の原因になります。

 がんは「多段階発がん」と言って、いくつかのプロセスを経て発症しますが、その第一ステップでは活性酸素などによる遺伝子の障害が関与しています。

 活性酸素による遺伝子の障害の積み重ねが老化に繋がると考えられていた時期もあります。しかし、活性酸素によるダメージや遺伝子変異を人為的に増やしても、老化には繋がらないという多くの実験的なエビデンスがあります。

「活性酸素が遺伝子に障害を与える」ということと「活性酸素が老化の原因になる」ということとはまったく別の話なのです。

■「遺伝子より劣化しやすく、身体への影響力が大きい要因」がある
 最近では、遺伝子自体ではなく、遺伝子を取り巻く周りの「情報環境」こそが、老化と関係していると分かってきました。遺伝子を取り巻く情報環境のことを「エピゲノム」と言います。エピとは「近くの」とか「周囲の」という意味を持つ接頭辞です。ゲノムとは遺伝子のことです。

 このエピゲノムは、どの遺伝子情報を読み取るか否かを決めています。たとえば受精卵が細胞分裂して、赤ちゃんに成長していく過程をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

 細胞分裂を繰り返して、私たちの身体ができていく過程を「分化」といいますが、細胞がどのタイミングでどのように分化していくのかは長い間、謎でした。
 まるで遺伝子の中に分化を調節する時計があるかのように思われていました。しかし、その分化のタイミングを調節しているのが、実はこの「エピゲノム」であることが分かってきたのです。

 分裂したばかりの細胞にどのような種類の細胞になればいいのかを教えてくれるのです。エピゲノムは分化、成長を調節する「タイムスケジュール」だということができます。

 今では、さまざまな病気の発症において、遺伝的要因は20〜30%程度で、エピゲノム要因が70〜80%であると言われています。環境要因のほうが大きな影響力を持っているということです。このように、遺伝子の周りの環境が遺伝子にどのような影響を及ぼすのかを研究する分野を「エピジェネティクス」と言います。

 たとえば、病気になる遺伝子を持っている人がいたとしても、すべての人が発症するわけではありません。病気になる遺伝子が読み取られれば発症しますし、読み取られなければ病気にはならないわけです。そして、この病気になる遺伝子が読み取られるか否かを決めているのがエピゲノム、つまり遺伝子を取り巻く環境要因なのです。

 病気になる遺伝的要因は変えることはできませんが、環境要因は変えることができます。環境要因を整えて、病気にならないようにしようとするのが「機能性医学」の考え方です。

■「老化」とは「エピゲノムの劣化」である
 話を老化へと戻しましょう。では老化とは何なのでしょうか。

 シンクレア博士によると、老化とは「エピゲノムの持つ情報の消失」であると定義しています。先に述べた、遺伝子読み取りのタイミングといった「タイムスケジュール」の情報が消失するということです。

 これだけでは話が抽象的すぎるので、より具体的に理解したい方のために少し詳しく説明しましょう。

 遺伝子は二本鎖DNAからできています。このDNAはヒストンタンパク質という丸い球形のタンパク質の周りにぐるぐると巻き付いて束ねられています。ちょうど毛糸を心棒に巻き付けて、絡まないようにしている感じです。このDNAの情報が読み取られるときには、ヒストンタンパク質に巻き付けられているDNAが緩んで、弛む必要があります。ヒストンタンパク質にDNAが巻き付いて一塊になっている状態をヌクレオソームと言います。

 そして、DNAが巻き付いているヒストンタンパク質が、メチレーション化やアセチル化されることで、遺伝子が読み取られるか否かが変わってきます。

 つまり、ヒストンタンパク質へのDNAの巻き付けを緩めたり締め付けたりすることによって、メチル基やアセチル基と遺伝子との結合しやすさを変え、遺伝子の読み取りが調節されるのです。

 これ以上の説明はかなり難しくなるので、専門書に譲るとして、要するにメチレーション化やアセチル化とは、遺伝子が読み取られるタイミングを調節している科学的修飾だと理解していただくといいと思います。

 遺伝子は私たちの身体の働きをすべて決定している「設計図」で、変えることはできないデジタル情報ですが、ヒストンタンパク質へのDNAの巻き付き具合というのは、調節が可能なアナログ情報だということができます。

 アナログ情報ということは、環境の変化に対応して自由に調節することができるということを意味します。しかし、一方ではデジタル情報よりも不安定で、環境の影響を受けて劣化しやすいということでもあります。

 このアナログ情報が劣化し、遺伝子の読み取りのタイミングが正常に機能しなくなることで、私たちの身体に微妙な「不具合」が溜まり始めます。この不具合の蓄積が老化の原因だということです。

 DVDやCDなどのデジタル情報は劣化しませんが、ビデオテープなどのアナログ情報はダビングするほど画像が劣化するのと似ています。

⚫︎老化のコントロールは慢性疾患リスクを低減するカギ
 ここまでのところで、老化とは遺伝的に必然で決められたものではなく、遺伝子を取り巻く環境要因が劣化して起こる現象であることが分かっていただけたと思います。

 つまり、この環境要因がどのような条件の影響を受けているのかを明らかにし、環境要因が劣化しないようにコントロールできれば、老化はある程度コントロールできるということです。

 世の中には「アンチエイジング」をうたったさまざまな情報や商品が溢れていますが、根拠の乏しいものも多く見られます。遺伝子を取り巻く環境要因に影響を与えているのかどうかという視点から情報を見極めることはとても有用ではないかと思います。

■「老化」はさまざまな慢性疾患の最大要因
 また、さまざまな慢性疾患も老化をベースとして発症することが分かっています。たとえば、老化との関係が一番はっきりとしている疾患にがんがあります。

がんは、死因別死亡率で見ると1981年以降ずっと1位を占めています(図表2)。
([図表2]主要死因別死亡率年次推移(1947年~2020年) 出典:国立がん研究センターがん情報サービス『がんの統計2022』)
 図表2を見ると、がんで死ぬ人が年々増えているように思えるかもしれません。しかし、実はこの図にはトリックがあるのです。

 がんは歳をとるにつれて発症率が増えてきます。つまり、平均寿命が伸びれば伸びた分だけ、発症率が増え、当然死亡率も上昇します。

 この寿命の伸びた分を補正した統計として年齢調整死亡率というものがあります。年齢調整死亡率は、集団全体の死亡率を基準となる集団の年齢構成(基準人口)に合わせた形で求められます(図表3)。
[図表3]主要死因別年齢調整死亡率年次推移(1947年~2020年) 出典:国立がん研究センターがん情報サービス『がんの統計2022』

 年齢調整死亡率で見ると、死因の1位であることに変わりはありませんが、年次推移では増えているどころか、2000年以降は減っているのです。
 つまり、死亡率の推移で見ると、がんが年々増えているように見えるのですが、実は一番の要因はがん自体が増えているということではなく、寿命が伸びて高齢の人が増えたということなのです。

 がんに限らず、動脈硬化が原因で起こる心筋梗塞や脳梗塞などの慢性疾患も、年齢調整死亡率で見るとむしろ減少傾向にあります。

 老化は、これまで考えられてきた「避けることのできない運命」のようなものではなく、遺伝子を取り巻く環境要因を整え劣化させないことでコントロールできる可能性があります。そして、老化をコントロールすることが、それに伴うさまざまな慢性疾患をコントロールすることにもなるのです。病気を早期発見・早期治療しようという予防的な考えではなく、根本的に慢性疾患が発症するリスクを減らす可能性が見えてきたと言えるかもしれません。

このことをシンクレア博士は以下のように表現しています。
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「色々な病気は老化の結果として起こる『症状』に過ぎない。老化こそが、色々な病気の正体であり、原因である。
がん、動脈硬化による病気、アルツハイマー病などの変性疾患。『老化』を治療しさえすれば、これらの病気は起こらなくなる。
老いは治療できる病気である」
(『LIFESPAN 老いなき世界』より)
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 老化が死亡原因の上位を占める慢性疾患の一番大きな要因であることを考えれば、老化をコントロールすることは、慢性疾患のリスクを下げて健康に歳を重ねるために極めて重要なのです。これこそが本当の意味での「アンチエイジング医療」であると言えるのではないでしょうか。

次回は、どうすればこの環境要因を整えることができるのかということについてお話ししたいと思います。

小西 康弘 医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士

藤井 祐介 株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者

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