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📚 〈追悼〉立花隆の「伝説の東大講義」を、現役東大生たちが読み返す 今なお古びることのない「先見の明」

2021-07-04 18:07:00 | 📗 この本

〈追悼〉立花隆の「伝説の東大講義」を、現役東大生たちが読み返す 今なお古びることのない「先見の明」
        現代新書編集部 より 210704

 多くの優れたノンフィクション作品を著した「知の巨人」立花隆さんが、80歳で亡くなった。今年2月刊行の現代新書『サピエンスの未来 伝説の東大講義』が、立花さんの生前最後の作品となった。

 立花さんを偲び、現役東大生たち3人が「伝説の東大講義」を読み解いて学んだことについて語り合う 。
⚫︎立花隆さんの印象
ケン 立花隆さんには、どんな印象を持っていましたか? 僕の中では立花さんといえば、小学生の時に読んだ『宇宙からの帰還』(中央公論新社)の著者という印象が強いです。この本を読んで、宇宙飛行士の皆さんの体験談の迫力に圧倒されたのが記憶に残っています。

ユウ 私は立花さんについては、以前『死はこわくない』(文藝春秋)のインタビュー動画をYouTubeで見たことがあって、そのイメージですね。立花さんが動画の中でお話されているのを見て、懐の広そうな方だなと思っていました。あとは、立花さんの書庫兼仕事場だった「猫ビル」の印象がありました。

トモ 僕は、もはや立花さんは「歴史上の人物」だと認識していました。僕たちが高校で使っていた日本史の資料集には、立花さんが発表した「田中角栄研究」が田中角栄内閣の総辞職につながったことが載っていますよね。だから、今年2月に現代新書から「生ける伝説」である立花さんの著書が刊行されると知った時には、「あの立花隆さんの新刊が!」と驚きました。

ケン この『サピエンスの未来』の元となったのは、1996年に東大で行われた講義ですよね。僕も実のところ、25年前の講義録がいま出版されることには少しびっくりしました。でも、読んでみたら、25年前ということを感じさせない面白さでした。もちろん読んでいて、当時のテクノロジー水準などの時代背景を感じることはなくはないのですが、議論はまったく古くなっていないと思いました。皆さんはこの本について、どんな感想を持ちましたか?

ユウ 手に取った時に「分厚い本だな!」と思ったのが第一印象でした(笑)。

トモ 現代新書には厚い本が多いけれど、この本もかなり厚いですよね。立花さんも「はじめに」で、「本の内容をすべて理解する必要はなく、面白そうなところだけつまみ食いすればよい」と書いているから、自分は最初つまみ食いして読もうと思ったくらい長い(笑)。でも、読み始めてみたら、この本は最初から最後まで通して読んだ方が絶対に面白いと思いました。

ケン 『サピエンスの未来』は、立花さんがまさに目の前で講義をしているかのようなライブ感のある筆致だから、質量ともに充実しているにもかかわらず、すらすら読めますよね。流れるように話が展開するから、僕も通して読んだ方が楽しめる気がします。

⚫︎「伝説の東大講義」は受け継がれているのか
ユウ ところでケンさんとトモさんは東大の学生ですよね? 『サピエンスの未来』の副題は「伝説の東大講義」ですけれど、本当に東大の中で立花さんの講義は「伝説」なんでしょうか?それと、今でも立花さんがなさったような講義はあるんですか?

トモ 立花さんの講義があったという話は聞いたことがあるので、「伝説の東大講義」は過言ではないと思います(笑)。東大には「全学自由研究ゼミナール」という、講師が自由度の高い授業をできる枠組みがあって、立花ゼミもこの枠組みで行われたみたいですが、今でも「全学自由研究ゼミナール」はあります。残念ながら、僕は参加したことはないんですが……。

ケン 「全学自由研究ゼミナール」には色々なゼミがありますよね。法律、政治学などのゼミもありますし、最近はボカロP・音楽評論家の鮎川ぱて@しゅわしゅわPさんの「ボーカロイド音楽論」(通称:ぱてゼミ)が人気だという話を聞きます。

ユウ へえ……面白そうですね!なるほど、今でも東大には立花ゼミのようなゼミはあるんですね。

トモ でも、立花さんのように講師が学生を挑発しまくるゼミや授業は、最近はなかなかないと思います。この本の中で、立花さんは、本を紹介するときに「これを読んだことのある人、どれくらいいますか?」と聞いて学生を挑発しているけれど、今ではこういう先生はほとんどいないかもしれない。

ケン 立花ゼミですごいのは、立花さんがこういう風に学生を挑発すると、学生もちゃんと手を挙げたりして食いつくところですよね。今の学生は、知っていても手を挙げる人は少ない気がします。

ユウ それに、最近は新型コロナウイルスの影響で対面での授業ができないので、先生と学生の相互コミュニケーションはどうしても難しくなっていますよね。オンライン授業は良いところもあるけれど、立花ゼミのような熱気を画面越しで体感するのは難しい。立花さんの活気あふれる講義録を読んで、やっぱり今自分たちが置かれているコロナ禍の大学の現状は寂しいなと思いました。

トモ そうですね……。ちょっと『サピエンスの未来』の内容から話が逸れていた気がしますが、皆さんはこの本のどのようなところが印象的でしたか?

ユウ この本、刊行当初の帯には「現代の困難を乗り越える鍵はここにあった!」って書いてありましたよね。私、この「鍵」というのは何なんだろう? と思いながら本を読み進めていたんですけれど。

ケン 確かに、「鍵」というのは本書の中で明示的に書かれているものではないですよね。ユウさんは何が「鍵」だと読み取ったんですか?

⚫︎「見る」ということの重要性
ユウ 本書の第三章に、「七つの感覚」というのが紹介されていますけれど、私はこれが一番の「鍵」なんじゃないかと思いました。立花さんが本書で大きく取り扱っているテイヤール・ド・シャルダンが提唱した概念ですが、たとえば「無限大のものから無限小のものまでを一望のうちにとらえる」感覚のような、ものの見方についての感覚です。

 具体的な例で考えてみると、環境問題などについては、地球全体を見渡すマクロなものの捉え方が必要です。逆に、新型コロナウイルスのパンデミックが起きると、ウイルスや細胞といったミクロの世界にも目が向けられるようになりました。どちらも、肉眼だけで見ているのでは何が起こっているのか分からないことではないでしょうか。ですが、普段から「七つの感覚」のような捉え方ができていれば、そういったものごとにも対処できるのではないかと思います。

 テイヤール・ド・シャルダンの提唱する「七つの感覚」というのは「自然界における人間の位置」をつかむための感覚ですけれど、こういう感覚というのは、立花さんも書いているように、どんなことを考えるときにも役に立つ感覚なのではないかなと思いました。この本を読んでいると、立花さんの先見の明を感じますよね。

トモ 僕も「七つの感覚」は印象的でした。何かを考える際に思い出せるように、頭の片隅に留めておきたいなと思っています。

⚫︎文理の枠を超える
ケン 僕は、立花さんといえば文系・理系の枠にとらわれない人だという印象を以前から持っていましたが、本書からも、文理の垣根を超えて俯瞰的に見る視点が大事だと改めて感じました。

 テイヤール・ド・シャルダンが、北京原人の発掘に参加したことでも知られる古生物学者でありながら、イエズス会の神父であったように、本書の内容でも文理の垣根を超えてつながるところが面白いなと。

 そもそも『サピエンスの未来』は、人類の未来を数万年という単位で見通そうとするという、既存の学問体系の枠に収まりきらない本ですから、文系とか理系とかの分類はできないですよね。

 緑慎也さんによる本書の「解説」でも書かれていますけれど、この本はテーマが壮大すぎます。でも、そんな壮大なテーマにも、学問を総合することで取り組めるんじゃないか。そういう可能性を提示したのが本書の意味なのではないかという印象を受けました。普通の人なら、こんな壮大なテーマを語ろうという発想にはまず至らないのではないでしょうか。それなのに、立花さんはこのテーマを語ろうと考えて、実際に語った。それがまず凄いと思います。
 そして、この本は数万年単位の未来を考える本ですから、数年・数十年という単位で未来を見通す本と違って、簡単には古びないというのがいいところですよね。

ユウ 立花さんの巨視的な視点からすれば、講義が行われた1996年と現在に大きな差はないですからね。そう考えると、本書が現在でも通用するのは当然な気がします。

⚫︎「古い思想」と決めつけないこと
トモ 僕が個人的に『サピエンスの未来』を読んで驚いたのは、立花さんがいわゆる「社会進化論」を高く評価し、本書全体をこの思想が貫いているところです。

 社会進化論というのは進化論を社会のあり方に適用する考え方ですが、歴史的に優生思想を正当化する論理として使われてしまった過去があるため、あまり良い印象を持たれないことが多いです。僕なんかも、社会進化論は時代に取り残された思想で、現代において学ぶ価値は一切ないんじゃないかとさえ思っていました。

 でも、立花さんはそんな一面はもちろん承知しているけれど、良いところはきちんと評価していこう、という姿勢で社会進化論を取り入れている。本書に出会ったことで、僕もそういった立花さんのような態度で色々な思想に向き合うべきだったなと反省しました。

ユウ それについては、第二章の中盤に書いてありましたよね。この部分は私も印象に残っていて、「哲学を『お勉強』してはいけない」とか、はっとさせられる文章が多かったです。

トモ そうそう。この部分は、立花さんが当時の学生に向けて語ったアドバイスが詰まっていて、臨場感もあって面白いですよね。

 僕の中で印象的だったのは、目新しい思想ばかり追うのではなくて、自分の眼で見て考えることが重要だということです。流行の思想だからといって鵜呑みにしてはいけないし、逆に古い思想でも評価できる部分はあるわけで、それはどこなのかを自分で考えて、うまく自分の中に吸収していくことが重要なんじゃないでしょうか。

 この本にしても、元になった講義が25年前ということで、「古い思想」と決めつけてしまうことは簡単だと思います。でも、古いとか新しいとかいう尺度で初めから良否を決めつけたりせずに、「良いところを吸収してやろう」という気持ちで向き合う態度が必要ではないかと感じました。

ケン 『サピエンスの未来』は今改めて読む意味がある、というのが僕たちの総意になりそうですね。

ユウ そうですね。立花さんが逝去されて、もう立花さんの考えていることを伺うことができないのが、とても悲しく残念です……。

トモ 立花さんには一度でいいからお会いしてみたかったです……。改めて、立花さんのご冥福をお祈りいたします。

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