中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

過屠門而大嚼

2009年08月10日 | 中国語成語

2005年に三聯書店から出版された、範用編《買書瑣記》、これは文豪をはじめ、本好きの人の古書店、新刊本書店での本の購入をめぐる話をまとめたものである。
このなかで、日本の古書店のことを書かれた文がいくつかある。
その中で、大阪の老舗古書店、天牛書店のことが書かれている。

              《天牛書店》 田洪宝

作者は大阪で暮らしていた時、緑地公園にある天牛書店から電車で一駅のところに住んでいたので、度々天牛書店に通っていた、とのことだが、

日本物価之高,天下聞名,書価也高得吓人,国人赴日逛書店,往往只能“過屠門而大嚼”,有前輩学人逛神田買旧書那份瀟洒
[訳]日本の物価の高さは、天下に名高く、本の値段もびっくりするほど高く、中国人が日本に来て書店をぶらついても、しばしば「肉屋を過ぎて口だけパクパクやる」しかなく、先輩の留学生たちが神田をぶらついて古書を買ったようにスマートにはいかなかった。

●  xian3 少ない。めったにない
● 瀟洒 xiao1sa3 立ち居振る舞いが鷹揚である。あか抜けしている

過屠門而大嚼  guo4tu2men2er2da4jiao2』
ほしいと思っても手に入れることができず、実際にそぐわない方法で自分をなぐさめざるを得ないことの譬え
● 屠門 肉屋
【出典】
●漢・桓譚《新論》:“人聞長安楽,則出門而向西笑;知肉味美,則対屠門而大嚼。”
[訳]人は長安が楽しいと聞くと、家を出て西に向かってほほ笑む。肉が美味しいと知ると、肉屋を向いて口をパクパク動かす。
●三国魏・曹植《与呉質書》:“過屠門而大嚼,虽不得肉,貴且快意。”
[訳]肉屋を過ぎて口だけパクパク動かす。肉を得ることはできないが、高貴で気持ちがよい。

説来慙愧,虽然出入天牛数載,検点寒斎蔵書,却没有一冊可称作珍籍秘本,大都是日本旧書業内称作“雑本”的通用書,惟購価極廉,堪可自誇
[訳]恥ずかしいと言えば、天牛に数年通ったけれども、自分のみすぼらしい書斎の蔵書を見ても、珍本奇本と呼べるものは一冊も無く、大部分が日本の古書業界で「雑本」と呼ばれる通用書で、ただその購入価格が極めて安いことだけは、自ら誇るに足ることである。

ところで、天牛書店であるが、創業者の天牛新一郎は、和歌山から6歳で大阪に出、小学校を卒業すると夜店の本屋から商売を始め、24歳の時、日本橋南詰に間口一軒半の店を構えた。
この時、1915年当時は、伝統的な和綴じ本から洋装本への転換時期で、一般の本屋では符丁で価格を表示していたので、客は一々店員に価格を聞く必要があった。

新一郎討厭這種做法,在大阪第一个明碼標価賣書
[訳]新一郎はこういうやり方を嫌い、大阪で初めて明確に価格を表示して本を売った。

新一郎は薄利多売で規模を拡大し、1923年には本店の在庫20万冊、支店7店、と大阪一、日本でもトップクラスの規模の書店に発展させた。

然而,這一切都在1945年的大空襲中于一旦,連書帯店焼了一干二浄
[訳]しかし、これら一切が1945年の大空襲で一朝にして烏有に帰し、本も店もきれいさっぱり焼けてしまった。
● 于一旦 hui3yu2yi1dan4 一朝にして烏有に帰す
 一干二浄 yi1gan1er4jing4 きれいさっぱり

直到1946年才用女兒的二百冊蔵書打底儿,租了一間小屋再次開張,憑着誠心和百折不撓的精神,几経搬遷,終于使天牛又逐歩地恢復了起来
[訳]1946年になって娘の200冊の蔵書を元手に、小屋を借りて店を再開し、誠実さと不撓不屈の精神で、何度かの移転を経て、遂に天牛はまた一歩一歩と復活した。
 ● 打底儿 da3di3er 基礎を打ち立てる
 百折不撓 bai3zhe2bu4nao2 不撓不屈(ふとうふくつ)。何度挫折しても意志を曲げない。どんな困難にもめげない

新一郎認為,開書店的不能在書店里看書,應該看人。在天牛,“立読”随便,就算有人“万引”(窃書),也不軽易抓,因为書店丟几本書不了,但一个人往往会因为被抓行窃而毁了一生。所謂的看人,就是忠于職守,看住要行窃的人,使其難起。店主有如此胸懐,書店焉能不
[訳]新一郎は、書店を営む者は店で本を見るのではなく、客を見なければいけないと考えた。天牛では、立ち読みは自由で、客が万引きをしても、軽々しく捕まえてはいけない。なぜなら書店は本が何冊かなくなってもつぶれることはないが、客の方はしばしば窃盗で捕まると一生を台無しにしてしまうからである。いわゆる客を見るとは、職務に忠実で、万引きをしそうな客をよく見ていて、犯罪行為をしづらくさせることである。店主がこのような心持であるから、この書店が繁盛しないことがあろうか?
 黄 huang2 店がつぶれる。約束がだめになる
 歹意 dai4yi4 人を害する考え。悪意
 火 huo3 盛んである。商売が繁盛する

新一郎就是這様,兢兢業業従事古旧书籍的買賣八十余年,在晚年還栄獲了“大阪産業功労奬”和“大阪文化奬”。
[訳]新一郎はこのように、まじめにこつこつと古書の売買に八十年余り従事し、晩年は「大阪産業功労賞」と「大阪文化賞」を受賞した。
● 兢兢業業 jing1jing1ye4ye4 まじめにこつこつと

書物が愛された時代の、古き良き話である。



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