滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

曼殊院 茶室「八窓軒」を探訪

2008年11月13日 | アート・文化
先日、修学院離宮を参観したお話をしましたが、同じ日に曼殊院の茶室「八窓軒(はっそうけん)」を見学して来ました・・・。
曼殊院は、修学院離宮から徒歩で20分ぐらいの距離にあります。良尚法親王の創意により造営された江戸時代初期の代表的書院建築で、その様式は桂離宮と深い関係にあります。

八窓軒[八窓席ともいう]は、小書院上段の間の背後にあり、本勝手の席で内部は桂離宮の松琴亭茶室に似た造りになっています。この茶室は八つの窓を持つことから「八窓軒」と呼ばれていて、八つの窓は仏教の八相成道[釈迦の生涯を八つの場面に分けて説いたもの。]を表現したものだと言われています。
ちなみに八窓軒は、予約を申し込んでおけば、茶室内を見学することができます・・。私は当日予約をしていなかったのですが、見学を希望したところ幸運なことに茶室内を見学させてもらう事ができました。(茶室内の撮影は禁止なので、画像を見せられないのが残念ですが・・。)

躪口右手には虹窓と呼ばれる窓があり、障子に桟の影が写って、虹のような色が浮かぶためそう呼ばれています・・。光の回折現象が応用されていて、季節や時刻、そのときの晴曇の変化によって様々な色彩が現れるそうです。私が見学していたときは、桟の影の部分がうすい緑色に写っていました。おそらく、庭の木々の緑による照り返しと軒裏の光の反射などが微妙に影響しあって(計算されていて・・)、石垣張りされた障子に様々な色の影を写すのでしょうね・・。(だから、新緑がまばゆい季節と紅葉の深まった季節などでは違った色彩が写るのだと思います。)

また、藁(すさ)を散らした土壁は、光が直接照らされる場所にはイカの墨を使ったといわれる黒い藁壁になっていて、光が直接当たらない壁には色が付けられていません・・。これは、窓の多さに対して暗く一定した光が室内に充満するように考えられているのでしょう。
その他にも、高い床天井や雑木の皮付丸太を取り交ぜる公家好みや平天井を客座から点前座へ同じ高さで張る古田織部の好み、躪口側の壁で連子窓の上に下地窓を重ねてあける小堀遠州の好みなどが反映されていて、さまざまな感性が調和されている茶室でした。

八つの窓(見学したときは、天井の突上窓からは光は入っていませんでしたが・・)により光が巧みに操作されている幻想的な三畳台目の空間を目の当たりにして、何とも言えない高揚感(意味なく、うれしくなってきた・・)が込み上げてきたと同時に、私自身もっともっと日々努力と熟考を重ねて、少しでも近づけるように丁寧に建物を造っていかなければ・・と考えさせられる瞬間(衝撃)でもありました・・・。




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