滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

開設20周年 その2

2014年03月23日 | 建築
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春らしくなってきましたね・・・。
皇子が丘公園の初御代桜(ハツミヨザクラ)も満開になっています。初御代桜は彼岸桜の一種ですから、今年はちょうどお彼岸の時期に満開になりました。3連休が見頃だったので、今日も皇子が丘公園は多くの人でにぎわっていました。
それで・・私はというと、花粉症が絶好調で苦しんでいます。今日は特にひどいです、朝から鼻をかみ過ぎて、鼻が赤くなっています。京都と滋賀は例年より花粉がやや多いという予想は、やはり当たっているのかな・・。

という事で、20年間をふり返りながら建築について色々お話していくシリーズの今回は2回目になります。今回は、前回にひき続き構造設計のお話をします。
建築の構造設計者と言っても、色々なタイプの設計者がいます。私は、構造設計業務を専門に行っている親友と昔よく話していた事があります。それは、構造設計者には、大きく分けると3つのタイプがあるというものです。

一つ目のタイプは構造家と呼ばれる人たち、二つ目のタイプは構造屋さん、三つ目のタイプは計算屋さんという3つのタイプです。
構造家は、新しい構法や解析を開発し、構造技術の先端を担う人たちのことです。構造屋さんは、いわゆる構造実務設計者の中で一番スタンダードなタイプの人たちのことを言い、設計する建物の用途やグレードに合わせて、構造計算より出てくる結果(数字)を形にしていく人たちです。
計算屋は、文字どおり・・構造計算をするだけ(結果を形にしない)人たちのことです。

構造屋さんと計算屋さんの違いについて、もう少し詳しくお話します。
構造計算の結果というものは数字で表されます。構造実務設計者(構造屋さん)は、計算結果の数字から部材の並べ方や取り付け方法を検討し、不具合が生じるようであれば、構造計算をやり直し部材の並べ方や取り付けが上手くいくように調整していきます。
この部材の並べ方や取り付けが上手くいくように調整しておかないと、建物の工事中に色々な問題が起こり、すぐれた構造耐力のある建物を建設する事ができなくなります。

計算屋さんは、構造計算結果をそのまま図面化し、部材の並べ方や取り付けを調整しない傾向にあります。建築確認の審査では、建築基準法に抵触しないかの審査に重点がおかれ、部材の並べ方や取り付けまで審査されることは少ない(建築基準法には、部材の並べ方や取り付けなどの細かい規定はありません)ので、計算屋さんが行った構造計算でも建築確認はとおりますし、そのまま建物を建設することは可能です。

構造設計者には、実務経験の豊かさが求められます。構造設計において、高度な判断を行うためには、豊かな実務経験が必要だからです。
この実務経験というものは、純粋な構造技術だけではなく、工事監理者や実際に工事を行う建設会社の技術レベルを見抜く能力などを養うための経験も含まれています。

ですから、構造実務設計者(構造屋さん)は、建物の用途やグレードだけではなく、建物の工事をする建設会社の実績や施工技術も考慮して、構造設計を行う必要があります。
建物の用途やグレードさらには工事予算などから、どのぐらいの実績や施工技術を持った建設会社が工事を行うかを想定し、実績や施工技術が不十分な可能性がある場合は、構造計算の安全率を高くして余裕のある設計を行い、また、実績や施工技術が十分な場合は、経済性を重視して安全率を低く設定するなどの判断をしていきます。

もちろん、設計段階では、どのような建設会社が工事を行うか、まったく分からない場合もあります。そのような場合は、建て主に構造計算の安全率や余裕度について説明を行い、どのような実績や施工技術を持った建設会社を選定する必要があるのか理解しておいてもらう事が重要になります。

ここまでお話すれば、構造設計者は、構造屋さんであることが望ましいとお分かりになると思いますが、それでは、なぜ計算屋さんが存在するのか疑問に思われますよね・・。
計算屋さんが存在する原因は、大きく3つ考えられます。一つ目の原因は、構造計算ソフトの発達によって、豊かな実務経験や構造の基礎知識がない構造設計者でも、構造計算だけなら建物データを入力すればできてしまう土壌があるという事です。
二つ目の原因は、構造設計の報酬が安すぎたり、値切られたりした結果、構造設計者が業務の省略化を図る傾向になるという事です。
三つ目の原因は、構造設計を依頼する意匠設計者や建設会社が、利潤を追求するために構造設計の報酬が安ければ計算屋さんのような業務内容でも構わないという考えから、計算屋さんを生み出す土壌を依頼者が作っている事です。

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私が構造設計業務を専門に行っていた頃は、構造屋さんとしての業務をしていたつもりです。しかし、残念なことに、私が構造設計業務から離れていった理由の一つには、計算屋さんが存在する原因の二つ目と三つ目があるのも事実なのです。
私もこのまま構造設計を続けていくと、計算屋さんになっていくかも知れない・・と思ったのです。(もちろん、構造設計から意匠設計に活動の場を移していった理由は、他にもあるので追々お話していきます。)

計算屋さんが存在する原因の二つ目と三つ目は、法整備で解決する問題ではなく、建築士の社会的地位を建築士自らが上げていく努力をすることが問題の解決につながると私は思っています・・。
この事については、もっとお話したい事がいっぱいあるのですが、この記事がかなり長くなってしまったので、このあたりでやめておきます。

いろいろ書きましたが、本来の構造設計者というものは、工学的な判断以外にも多岐にわたって高度な判断力が求められる業務であり、そのような人材が養われるような土壌を設計業界全体が作っていく必要があるというお話でした・・・。
















コメント
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