滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

鈴木大拙館を訪れに金沢へ・・・。

2017年11月19日 | 建築

昨日は、鈴木大拙館を訪れるため金沢まで行って来ました。あいにく天候は雨でしたが、雨の日の鈴木大拙館もいいかな・・それに人も少ないかも・・と思いつつ行って来ました。(最近、仕事が忙しくないので遊びまくっています・・・。)、鈴木大拙館は、金沢が生んだ仏教哲学者である鈴木大拙の考えや足跡を広く国内外の人々に伝えることによって、大拙についての理解を深めると共に、来館者自らが思索する場として利用することを目的に開設された建物で、建築家の谷口吉生氏の設計によるものです。以前から、友人に名建築だと聞いていたので、この機にと思い訪れて来ました。

 

 〈往路となる外部回廊から水鏡の庭に浮かぶ思索空間棟を見る〉

鈴木大拙館は、「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」を回廊で繋ぐと共に、「玄関の庭」「水鏡の庭」「露地の庭」によって構成されていて、3つの棟と3つの庭からなる空間を回遊することによって、来館者が鈴木大拙について知り、学び、考えることが意図されています。建築は、動線に沿って展開する内部空間の連鎖と関連して移り変わる外部への眺望を強調するために、極力単純な意匠とされていて、まさしくモノクロームの自然素材による「無の意匠」となっています。

 

 〈思索空間棟から水鏡の庭超しに展示棟と外部回廊を見る〉

画家などのための記念館や美術館であれば、作家の作品を展示することによって、それらの建築は性格づけられます。しかし、日本文化の根源を説く哲学者にふさわしい空間をどう構成するかという難題について、設計者である谷口氏は「床」や「床の間」といわれる空間に答えを求めました。「床」や「床の間」といわれる空間は、軸が掛けられ、縁の品が置かれ、季節の花が添えられるまでは、全く機能を持たない無の空間です。最小の設えによって姿を変える家の中の小美術館とも言える「床」は、日本の文化の一面を顕著に象徴するものであって、鈴木大拙館の計画を構成する要素としてふさわしいものと谷口氏は考えました。

 

 〈昨日も、思索空間に空けられた開口部には、秋の朱に染まる彩りが添えられていました〉

水鏡の庭に浮かぶ思索空間は、全体が設えによって変化する「床」の空間そのものであり、壁面に空けられた開口部からは、四季によって移り変わる周囲の景観が切り取られて見えるようになっています。訪れた昨日も、谷口氏が目指した「無の意匠」に秋の朱に染まる彩りが添えられていました・・・。

 

 

 

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第69回正倉院展

2017年11月01日 | アート・文化

前回お話した京都国立博物館で開催中の国宝展に続き、昨日は奈良国立博物館で開催されている正倉院展に今年も行って来ました・・・。毎年の恒例行事として、古の文化と職人技(そのセンス)に敬意を表しに奈良に行って来ました。例年なら入場するために並ばないといけないのですが、昨日はタイミングが良かったのかどうか分かりませんが、並ばなくてもあっさり入場することができました。この調子だと、館内も人が少なくて宝物がじっくり見れるかも・・と思いつつ展示室に入ると、そこはやはり「正倉院展」だけあって、宝物の周りには多くの人で混み合っていました・・。(それでも例年に比べれば混雑が少ない方だったので、宝物が鑑賞しやすかったです。)

毎年、正倉院展にはすばらしい宝物が多く出品されているのですが、今年の出品されている宝物は、全体的には・・ちょっとハズレだったかな?という感じがしました。とは言っても、昨年も同じことを言っていましたので、私が宝物を見慣れてきただけかも知れませんから、あまり参考にはされないように・・。そもそも「ハズレ」とか言ってますけど、私は正倉院展に何を期待しているのでしょうね・・?

 

前置きが長くなりましたが、今年も出品の中から宝物を1つ紹介したいと思います。画像は、「緑瑠璃十二曲長坏」というガラス製の長楕円形の坏(さかづき)です。長側面にひだが三段ずつ付き、口縁に十二の屈曲ができることから十二曲長坏という名前が付いています。緩やかな曲面には植物文様が線刻されており、ガラスの光沢や鮮やかな緑色に波打つ形状があいまって、水や酒をすくう大きな葉の器を想像させます。

材質は、酸化鉛を55パーセント含む鉛ガラスで、緑の発色は銅の混入によるものであることが判っています。鉛を多く含むガラス製品は中国に多いことから、本品は中国産であるという見方が有力だそうですが、いまだに中国で同等品は発見されていません。八曲長坏や十二曲長坏の原形は、ササン朝ペルシヤの金銀器に求められると言われています。八曲長坏は、西アジアや中央アジア、東欧、中国から銀製の八曲長坏が発見されています。それに対して、本品の原形となる十二曲長坏の例は、ウクライナで発見された金製十二曲長坏が有名だそうですが、確実な遺品はごくわずかしかなく、本品のようなガラス製となるとさらに希有(非常に珍しい)であるとのことです。

まさに、奇跡の遺宝と称するにふさわしい宝物の1つです・・。(正倉院の宝物は、世界の宝物ですからね。)

 

せっかく奈良に行くのだから、今年も正倉院展に行く前に他の社寺を訪れて来ました。今年は、法華寺と海龍王寺と新薬師寺に行って来ました。

 

画像は、新薬師寺の本堂です。(元々は本堂ではなく、修法を行うためのお堂だったそうです)、7年ぶりに薬師如来坐像と十二神将立像にお会いして来ました・・。円形の土壇の上で薬師如来坐像を円陣に取り巻いて護っている十二神将立像は、まさに圧巻です。また、この十二神将立像は、塑像(木の骨組みに縄を巻き付け、そこにワラを混ぜた粘土をつけて大まかな形を造り、紙の繊維と雲母を混ぜた土で上塗りしたもの)だというのですから驚きです。1200年前に造られた塑像がひび割れなどせずに、原形のまま残っているというのが信じられないです。

という事で、昨年訪れることが出来なかった安倍文殊院には、今年も行くことが出来ませんでした。来年こそは行けるといいんですが・・、行く直前もしくは当日の気分で訪れる社寺を決めているようなところもあるので、来年もまた別の社寺を訪れているかも知れませんね・・・。

 

 

 

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