滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

フェルメールからのラブレター展

2011年08月14日 | アート・文化
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今日は暑さにも負けずに、京都市美術館で開催中の「フェルメールからのラブレター展」に行って来ました・・・。お盆休み中(それも日曜日)に行ったのが無謀だったのか・・それとも普段から人気の展覧会なのか分かりませんが、会場に入るのに30分程並んで待ちました。展覧会に並んで入場するのは、私としては正倉院展以外では初めての経験です・・。

今回の展覧会はフェルメールの3作品「手紙を書く女」、「手紙を読む青衣の女」、「手紙を書く女と召使い」と共に、手紙をはじめとする17世紀オランダのコミュニケーションの様々なあり方に焦点をあて、同時代に活躍したオランタ黄金時代の巨匠たちの手による絵画作品を紹介する内容となっています。

オランダは17世紀のヨーロッパで最も識字率の高い国で、出版の主要な中心地であるとともに、手紙のやり取りが急速に増えた地域でした。
ちょうどこの頃、公的な布告や単なる商業上の情報を発するのとは対照的に、手紙を書くことは、個人の気持ちや強い感情を伝えることができるという考え方が一般的となり、個人間の文字によるコミュニケーションのあり方を一変させました。

オランダの巨匠たちの絵画作品には、こうした一見たわいのない日常生活の側面に影響される感情の微妙な動きを、いかに探求していたか・・、オランダの風俗画において、手紙を読む女性の姿は愛に関連した場合が多く、ほとんどの作品は、隠された意味を解く手がかりを与えてくれています。
例えば、壁の地図は遠方にいる恋人を示唆するものかも知れないし・・また画中の壁に掛けられた海景画の場合、海は愛、船は恋人を表象しているのかも知れません・・。ヤン・クルルの寓意図像集にある「家から遠くにあっても、心は離れていない」という銘文は、これをよく言い表しています。

展覧会の構成としては、最後の部屋にフェルメールの3作品が展示してあります・・。今回、アムステルダム国立美術館で修復作業が行われた「手紙を読む青衣の女」(上の画像)が修復後 本国オランダより先駆けて日本で世界初公開になるという事で、蘇えったフェルメール・ブルー(ラピスラズリを砕いた顔料ウルトラマリンの青の輝き)に注目が集まっていますが、私はそれより「手紙を書く女」(下の画像)を見た瞬間、これがこの世の物なのか・・という神秘性に満ちた衝撃を久しぶりに感じました。

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この作品(手紙を書く女)の素晴らしさは、残念ながら画像ではまったく伝わって来ないですが、若い女性がアーミン毛皮で縁取りされた黄色いモーニング・コートを着て、手紙を書くためにテーブルに向かって体を傾けています・・、彼女の表情、黄色いモーニング・コート、髪に付けたサテンのリボン、机の上の真珠の1つ1つへの光と色彩の織りなす独特の質感は、まさにこの世の物を超越した芸術(神秘性)そのものです。

この作品に描かれた婦人は、私たちと直接・・コミュニケーションをとっています。というのも、プライベートで親密な場で想いにふけっていたところを妨げられた彼女は、こちらに顔を向けて私達を見つめているからです・・。婦人はラブレターを書いているのでしょうが、その内容は明らかにされていません。おそらく、フェルメールは、恋愛そのものが神秘的な性質をもっているということを表現しているのでしょう・・。

現存する作品が30数点しかないという謎の巨匠ヨハネス・フェルメール・・・。「フェルメールからのラブレター展」は、10月16日まで京都市美術館にて開催されていますので、みなさんも是非一度、実物のフェルメールを堪能してみて下さい。
(「手紙を書く女」は、本当に素晴らしいですよ・・・。)


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