別府温泉と湯布院温泉旅行④

ほんの半年ほど前までは、新入社員として配属されて来たばかりの彼女と、親子位年の離れた自分が、まさか、温泉旅行に一緒に行くような仲になってしまうとは、思ってもいませんでした。

いや、実は既に研修中の彼女を一目見た時から、心を奪われていたのかもしれません。　

村下孝蔵さんの初恋の歌詞のように、遠くからいつも姿を探していました。

昨日までは、出張と偽っている今回の旅行のことを、妻に悟られないように、努めて明るく振る舞っていたりしました。

岡山駅で、あらかじめコインロッカーに入れていた私服に着替え、彼女と合流しました。

慌ただしく出勤している人達を横目に、背徳な気分と、まるで青年の頃に戻ったような、初々しい高揚感が入り混じった感じです。

岡山駅を出発します。

新幹線の中で、話をしている最中に彼女がふといいました。

「入社した頃から、よく見てたでしょう。

すぐに分かってたんだから。」

心の中を見透かされていたようで、動揺が止まりません。

小倉で特急に乗り換え、3時間ちょっとで別府温泉に到着しました。

岡山から遠く離れた場所なので、もう人目を気にする必要はありません。

地獄巡りをしている時に、そっと手を握ると、彼女が肩にもたれかかって来ました。

「そろそろ宿に行こうか？」

「…いいよ。」

今夜の宿は、別府駅西口近くの花べっぷです。　

温泉に入ったあと、一階の休憩コーナーで待ち合わせすることにしました。

彼女が浴衣に着替えて出てきました。

有村架純に少し似た感じの彼女の、上気した頬がピンク色に染まり、一段と美しいです。

結婚間近の皇室の方のように、たとえ太陽と月に背くような行動であったとしても、

今の幸せな気持ちを、抑える事はできません。

美味しい夕食のあと、部屋に戻ってのんびりと休憩します。

「そろそろ寝ようか？」

その時でした。　携帯電話が鳴りました。

とうとう奥さんにばれてしまったのでしょうか。　

ホテルのロビーまで来ているそうです。

海地獄にカゴごと突き落とされた、玉子にでもなった気分です。

携帯をみたら、目覚ましアラームでした。

すっかり朝です。

酒の飲み過ぎのため、夢の中でずっと不倫小説みたいな夢をみていたようです。　

隣りのベットでは、嫁さんがまだすやすやと寝ています。

夢の続きをみたかったです。

清々しい天気です。今日も暑くなるのでしょうか。

これから嫁さんと朝食です。

エレベーターの床も畳貼りなので、ずっと裸足のままで旅館の中を歩き回っています。

朝食のメニュー

女子グループや、カップル、自分より年配の夫婦などの方々がいます。

美味しかったです。

お庭の見える所でコーヒータイム

時間がゆっくりと流れて行きます。

今日は、10時過ぎまでのんびり部屋で休憩して、明礬温泉に行く予定です。