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英ファンドがJTに挑戦状 「物言う株主」再び

2011-06-13 12:05:47 | Weblog
英ファンドがJTに挑戦状 「物言う株主」再び 2011年6月13日 日経
 米国のヘッジファンド、スティール・パートナーズが昨年、保有していたサッポロホールディングスの株式7.8%を売却した時、日本の「株主アクティビズム(行動する株主)」は終わりを告げたように見えた。日本の産業界の抵抗に遭い、世界金融危機の打撃を受けた欧米のアクティビストファンドが多額の損失を負って日本から撤退した後、最後に残っていたのがスティール・パートナーズだったからだ。

■財務省に対し懸念表明
 このため、英国を本拠とするヘッジファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が先日、日本たばこ産業(JT)の経営陣に戦いを挑んだことは、実業界にとっても投資界にとっても驚きだった。
 4億ドルに相当するJT株の1%を取得したTCIは、同社株のパフォーマンスの低さに対する懸念をかき立てるために、JTの全株式の50%超を保有する最大株主である財務省に書簡を送った。
 JTが資本をもっと効率的に管理し、自社株買いを増やしたり配当金を増やしたりしたら、TCIのような少数株主だけでなく、財務省と日本の納税者にとっても持ち株の価値が2倍になる可能性があるとTCIは述べた。

■「日本では通用しない」
 これは、過去に多くのアクティビストファンドが株主価値を高めるよう日本企業を説得する時に使ったセリフで、ほとんど役に立たなかった。このため、投資家とアナリストはTCIが古い戦術を再び使っていることに戸惑っている。「彼らは決して耳を貸さない人々を狙っている」と、日本のあるベテラン投資家は言う。
 「日本で受け入れられなかったのは彼らが主張する内容ではなく、言い方だった。だから彼らがなぜまたやろうとしているのか分からない」。ガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン代表取締役の小口俊朗氏はこう言う。「あの手のトップダウンのアプローチは日本では通用しない。上からいくら北風を吹かせても、彼らは簡単には上着を脱がないだろう」
 日本企業は伝統的に、株式持ち合い制度のおかげで株主にほとんど関心を払ってこなかった。取引関係にある企業同士が友好的に株式を持ち合っており、互いの経営陣への支持を当てにできたからだ。
 機関投資家も一般的に経営陣の意見に従ってきた。多くの機関投資家は、こうした企業と関係がある金融機関の系列に属しているためだ。

■Jパワーとの対立では矛収める
 欧米流の株主アクティビズムの日本における短い歴史は、株主還元を増やす方法を記した「パワーポイント」のプレゼンテーション資料を振りかざすファンドと、こうしたファンドを短期的な利益を狙うご都合主義者として片付けようとする日本の経営者との激しい戦いだった。
 2006年から2008年にかけて、スティール・パートナーズやTCI、フルサ・オルタナティブ、セーフ・ハーバーといった多くのファンドが増配を強く要求した。こうしたファンドの多くは日本で忘れられて久しい。
 電力卸会社の電源開発(Jパワー)の株式を9.9%取得し、経営陣に影響力を振るおうとした時に日本で最も物議を醸すファンドの1つになったTCIは、翌年に持ち株をJパワーに売却し、表舞台から姿を消した。

 堅固な経営陣の抵抗と国民の反発に直面し、これらのファンドが敗北したことは、株主アクティビズムは日本では報われないという強い印象を残した。「一般的にTCIとスティール・パートナーズは欧米流(の株主アクティビズム)が日本でうまくいかないことを示したと、外国人でさえ考えている」と小口氏は言う。

■徐々に浸透する日本流
 だが、投資家とアナリストは、派手な衝突は消えたにもかかわらず、株主アクティビズムはまだ日本で生きていると強調する。「相手を揺さぶり、やり込めるゴードン・ゲッコー流のやり方は一度もうまくいったことがないし、今もうまくいかないが、アクティビズムが死んだとは思わない」と前出のベテラン投資家は言う。
 声高に主張する外国ヘッジファンドは概ね撤退もしくは退避したが、「国内の機関投資家がその後を継ぎ、ガバナンス(統治)の改善を要求している」と同氏はつけ加える。
 大和総研の主任研究員の鈴木裕氏は、1つの重大な変化として、機関投資家が以前より経営陣に反対票を投じるようになったことがあると指摘する。同社の会員企業を対象にした調査では、昨年は全体の60%が、企業価値を高めないポイズンピル(毒薬条項)などの防衛策に反対票を投じたことが分かった。
 野村証券金融経済研究所のシニアストラテジスト、西山賢吾氏は、この種のアクティビズムは「まだ静かだ」と言うが、企業が今のやり方を変えない限り、「投資家は将来、もっと活動的になる可能性がある」とつけ加える。

■歳入源求める政府揺さぶる
 TCI自身は、Jパワーの手痛い経験にもかかわらず、今回は政府を含めた株主を説得できる勝算が大きいと考えている。JTへの投資を担当するTCIのパートナー、オスカー・フェルトハウゼン氏は、1つの理由は、新たな歳入源を見つける必要がある政府がJT株の上昇から利益を享受できることだと言う。
 同氏の計算によれば、JTがバランスシートをより効率的に管理すれば、政府の持ち株の価値は200億円(2億5000万ドル)から400億円に倍増する可能性がある。「客観的に、会社の経営が不適切だということを容易に主張できる」(同氏)。
 フェルトハウゼン氏は、JTは「(外国からの投資を制限する法律に守られていた)Jパワーほど、戦略的に微妙な立場の会社ではない」と言う。
 政府がたばこ会社を所有すべき理由がない以上、政府としては持ち株の価値を高める努力をし、株式を売却していくべきだと同氏は訴える。またJパワーの場合と異なり、JTのケースでは恩恵が明白なため、日本国民を味方につけられると期待している。
 当惑した財務省は、フェルトハウゼン氏がしびれを切らして去っていくことを願って妨害しようとするかもしれないが、本人は長期戦を覚悟していると言う。「私は簡単に諦めません」





 ほぉ。電源開発(Jパワー)の株式を9.9%取得するも、翌年に持ち株をJパワーに売却した投資ファンドのTCIが、今度はJTの株式の1%を購入して50%の株式を保有する財務省に書簡を送付ですか…(吃驚
 JTへの投資を担当するTCIのパートナーのオスカー・フェルトハウゼン氏は、JTは「(外国からの投資を制限する法律に守られていた)Jパワーほど、戦略的に微妙な立場の会社ではない」と主張しているようですが、タバコ税という貴重な財源をいつでもコントロールできる(引き上げられる)ように実質お国の一体のJTの持ち株比率を、国がこれ以上減らすとも思えませんし、経営効率よりも国内のたばこ農家との共存という社会的使命を背負わなければならない(いくら安いから…といっても海外からタバコの原材料を輸入するわけにもいかないでしょう)という いろんな意味で保護の制約の双方を抱えたJT株を保有した上で圧力をかけてくる意図が全く理解できませんが、今回はいきなり10%も保有してきたわけでもありませんし、とりあえずは財務省としても警戒しつつも様子見状態でしょうか…。
 スティールパートナーズの名をあげるまでもなく、アクティビストと呼ばれる投資ファンドは日本から撤退する傾向が強い中、TCIが次にどんな一手を打ってくるのか要注目です。


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