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規制改革会議、解雇条件見直し検討 金銭解決を提唱

2013-02-17 12:07:42 | Weblog
規制改革会議、解雇条件見直し検討 金銭解決を提唱 2013年2月15日 日経
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1403F_U3A210C1MM8000/
 政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が15日から議論する論点整理案が明らかになった。正社員の解雇を巡り、どのような条件なら合理性があると認めるかの基準を明確化するよう提起。解雇権の乱用として無効判決が出た場合に、職場復帰の代わりに労使が金銭で労働契約を終了したとみなす解決策の導入も検討する。
 論点整理は(1)健康・医療(2)エネルギー・環境(3)雇用(4)創業・産業の新陳代謝――の4分野、68項目で構成する。15日の会議に示し、経営者や学識者ら民間議員を中心に議論する。安倍政権は規制改革を経済活性化策の柱と位置づけており、政府が6月にまとめる成長戦略に反映する。
 解雇規制は、労働市場の柔軟化に向けて産業界が見直しを求めている。中途採用や若者の雇用機会を増やせるとの意見がある一方、労働界からは反対論が根強い。
 裁判で解雇が不当とされた場合に、労使が金銭で契約終了の条件を決める仕組みは、欧州では一般的だ。金銭解決を労働契約法で定めれば、解雇の条件を巡る話し合いの選択肢が広がる。
 勤務地や職種を限定した労働者の雇用ルールの整備も検討し、女性や若者、高齢者が柔軟に働ける仕組みを考える。最長3年としている派遣労働期間の条件付き制限撤廃、仕事のあっせん時の手数料を企業ではなく求職者側から徴収する要件の緩和も対象とする。
 論点整理案には遠隔地から薬の注文が可能になる処方箋の電子化を盛り込んだ。「ビッグデータ」と呼ばれる膨大な情報の解析事業の普及策も検討する。販売促進や商品企画に活用する動きが広がっているが、個人情報保護法では原則、目的外利用にはあらかじめ本人の同意が必要となる。個人情報の定義を明確化し、誰なのか特定できない状態にすれば適用外として第三者に提供できる制度を話し合う。



 う~ん。この(解雇時の)金銭解決というのは、あくまでも裁判で解雇不当と判決が下った場合には金銭(手切れ金)で解決しようという考え方ですが、日本の場合は、裁判で解雇不当となった時に原職復帰を使用者に義務付けていることから、単に復帰する職場をどうするのか…という目先の問題だけでなく、仮に総務部付の保留扱いとしたうえで仕事を一切与えずに業務命令による休業を命じたところで(会社都合の休業扱いで)6割以上の休業手当を払い続けなければなりませんし、それ以上に大きいのが、一旦裁判に持ち込まれて使用者側が敗訴した場合は(たとえ係争期間中に労務を提供していなくても)未払い賃金の支払い義務も同時に背負ってしまうこと(会社が高裁や最高裁で全面敗訴した労働判例のケースでは、2年間分の未払い賃金の支払いを命じている判決も少なくありません)なんですよね…。
 働き手にとっては、この未払い賃金+解決金でないと応じるメリットがありませんし、使用者側陣営にとってあまりにも都合のよすぎる言い分ではないでしょうか…。

 加えて、仮に100歩譲って金銭解決を導入するとしても、難しいのがその期間設定と日額の定義。
 スペインでは現時点で勤続年数当たり日給45日分(上限月収42カ月=3年分)としているようですが、勤続年数の長い方の場合は、日給の定義(本当の意味での基本的給与だけにするのか、日常的に残業が発生していたり、みなし残業制を導入している場合はみなし残業時間も含めて計算するのか などなど)一つとっても難しいですし、定年まで働けば得られるはずだった退職金との差額の調整の問題をどう考えるのか? といった日本特有の問題も発生してくることが予想されます。

 入社数年での解雇事例ならともかく、入社二十数年・三十数年のベテラン職員の解雇にまで金銭解決を導入するのは働き手にとってあまりにもデメリットが大きいですし、目先のキャッシュにとらわれ働き手がアンフェアな条件で退職に追い込まれることのないように、使用者陣営の恣意性を徹底的に排除する仕組みができない限りは、この制度の導入は個人的にはかなり難しいのではないかと思います。


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