ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
好きなことを、心から楽しもうよ。
しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

象牙色の嘲笑 新訳版

2017年01月07日 | もう一冊読んでみた
象牙色の嘲笑 新訳版/ハヤカワ・ミステリ文庫   2017.1.7

 ほんとにおかしいのはね
 愛している相手は絶対にこっちを愛してくれないってこと。
 こっちを愛してくれる人、そういう人たちはこっちが愛せない。


長い人生のなかで、いやというほど見聞きしてきましたよね、この真実。
ここに、未練が加わると、もう大変、地獄ですね。
身もこころも、ぼろぼろだよ。


 「訳者(片割れ)によるあとがき/松下祥子」

 本書が出版された一九五二年といえば、ミッキー・スピレインが超ベストセラー作家として君臨していたころだ。
 マクドナルドの伝記でトム・ノーランはこの時代の出版状況に触れ、スピレインの荒っぽい私立探偵小説が何百万部と売れまくっていて、ハメット=チャンドラー系の洗練された作品を買うような読者の多くが怖気づいて書店に寄りつかなくなった、と書いている。
 出版社から『象牙の嘲笑』にはもっとアクション場面を加えたほうがいいと指摘され、修正を試みたこともあったが、最終的にはマクドナルドが説得して、出版社はバイオレンスはスピレインに任せ、マクドナルド本はもっと文学のわかる読者に売っていくと決めたという。


 マクドナルドは「(彼を創造したとき)私はアーチャーそのものではなかったが、アーチャーは私だった」と「ボヴァリー夫人は私だ」と言ったフローベルにならった表現をしている。

 あとがきを読む楽しさは、このような説明が読めることです。

 「やれやれ、自分の人生だもの、すべてを含めて生きていくしかないわね。さてと、時間を無駄にしているわ。私が言うとおりにやってくださるの、それ以上でもそれ以下でもなく?」

 街の上流地区から脱走してきた数人は、酒にいつもの自分を溺れさせて、別人に生まれ変わる

 なにをするときでも優しく、ほとんど後悔するような仕草で、行動とはすなわち危険なギャンブルだとでも思っているようだった。


このような詩的な文章を作品中の随所で拾うことが出来ます。

 『 象牙色の嘲笑 新訳版/ロス・マクドナルド/小鷹信光・松下祥子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« たか田八祥 さんのお弁当! | トップ | 1年は短いようで長いから! »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

もう一冊読んでみた」カテゴリの最新記事