保津川下りの船頭さん

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‘川根性’全開!はっちん船、爆弾低気圧に遭遇する!

2010-12-03 20:34:32 | 船頭
今日の保津川は前線を伴った低気圧が発達する爆弾低気圧の影響で大荒れの天気に。

その「大荒れ」の真っ最中に私はっちんの舟は、な、なんと、渓谷の川の上に浮かんでいたのです。
しかも、その爆弾低気圧と呼ばれる強風にさらされながら!

出航時は青空と太陽が照り、汗ばむほどの穏やかな陽気だったのに・・・
嵐山までの航路が半分地点を迎えた頃、上空一帯に濃いグレー色の雲が覆いだし、
川の周辺はまだ午後2時前というのに夕方のような暗さに一変。

と、突然、水面をもの凄い風が波立て、唸り声をあげながら舟へ向かってきたのです!

雨よけのテントをして運航していた舟に容赦ない雨と風が襲い掛かります。

強風に捲り上げられ三角型の雨用テントはアーチ型に膨れ上がり、
テントごと舟を吹飛ばさんばかりの勢いです。

こんな強風を受けたのは私の船頭経験上、あまり記憶にないほど勢いでした。

操船の要となる舵を持つのは私。
舟の舳先を思い切って強風の風向き方向へ舵を切ります。

高瀬舟である保津川下りの舟は船底が平らなため、横風が一番の強敵です。

風の強さでどれだけ舟が風下に流されるか、瞬時に読み、
舟一艘分しかない岩と岩の間を正確に通り抜けることが求められます。

この時ほど保津川船頭に高度な操船技術が必要とされる場面はありません。
五感すべてをフルに活動させ、体力の限りを尽くし、強風吹き荒れる難所を乗り切るのです。
しかも、乗船されているお客さんには悟られないように、顔はポーカフェイスで。

これぞ、保津川下りの船頭に400年間脈々と受け継がれてきた‘川根性’‘舟根性’です!

昨日まで艶やかな紅葉で訪れる人の目を楽しませてくれた雄大な自然が、
今日は牙を剥き猛威となって保津川の小舟に襲い掛かってくる、これが
ありのままの‘自然’なのです。

こんな時に頼りになるのは、自身の体に備わった操船技術と同じ舟に乗り込んだ船頭たちの協力だけ。
この時ほど保津川船頭として、師匠や先輩から厳しく操船技術を学び、
身に付けたことが心強く思えるときはありません。

舟を飲み込むほどの嵐は10分もすると嘘のように去り、舟が嵐山に着く頃には
曇り空の隙間から青空がのぞき、時折、太陽が射す穏やかな天候へと戻っていました。

あの大荒れの渓谷が同じ日だとは思えないほど・・・

まさに‘魔の10分’。

一時間後に出航予定だった私達の後の舟は出航目前に運航中止となりました。

それほど今日の低気圧はもの凄いものでした。

400年の歴史が生み出した保津川舟の操船技術の正確さと心を一つにして力を合わせて下った
乗り込みの船頭たちに感謝したい気持ちでいっぱいです。



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