保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

保津峡の自然が語りかける心の旅へ。

2012-11-29 08:36:39 | 船頭の目・・・雑感・雑記
日に日に肌寒さを感じ、深まりをみせる晩秋の頃。

錦絵をおもわせる雅な風景を演出した保津峡の紅葉も
散るときを知り、木々の根が張る地面を赤く染め始めました。

河畔という自然環境の厳しい条件下で育った今年の‘もみじ葉’。

初夏に新緑として芽吹き、目に沁みるほどの青葉は、渓谷中を
いきいきとた誕生の輝きを見せ、自然の生命力を感じさせてくれました。

保津峡の‘もみじ’たちは、上品に育った社寺仏閣の‘もみじ’にはない、
荒々しいく、逞しい力強さを感じさせる野趣に富んだ色づきがあります。

うねる激流となる洪水や真夏の日照りという、自然の猛威に耐え抜き、
しっかり山深く 根を張った木々の葉は、秋になると、もっも華やかに赤く染まります
その堂々とした姿は観る者に ‘逆境’に耐え抜き、力強く生きることの大事さと
生きていることの偉大さを教えてくれ、勇気を与えてくれます。

いのちの炎を燃えあがらせて、渓谷の山々を彩った保津峡の紅葉も
いよいよ最後の時を迎えようとしている。

初夏に新緑の葉を出した‘もみじ’ もあと数日で‘いのちの炎’を真っ赤に
燃え尽きて、終焉の時を迎えます。

しかし! 葉は落ちても、また来年になると芽を出します。

その姿に‘死’は終局を意味しないことを教えてくれるようです。

いのちは生まれ変わり、出変わりを続け 永遠に‘いま、ここ’にある。

保津峡の自然の中に、いきることへのヒント、視点が凝縮されています。

偉大なる自然の営みを愛でながら、自らの感性を磨き、心がほっと暖かくなる、
そんな自然とのふれあう旅を保津峡で体験していただきたく思います。

雨中嵐山・・・その風景にみる「ひとすじの光」とは?

2012-11-26 19:53:37 | 船頭の目・・・雑感・雑記
小春日和の昨日から一転、今日は秋雨が降るという寒い日となりました。

一晩でこうも天気が変わるとは・・・
しかし、秋の観光シーズン本番を迎えた京都にとっては、まさに水を差す冷たい雨。

保津川下りに乗られたお客さんも寒い船旅になったことと思います。
こんな日にもかかわらず保津川下りにご乗船いただいたお客さまには
‘感謝’の言葉以外見つかりません。本当にありがとうございました。

渡月橋から見る嵐山には霞が掛かり、紅葉が薄らと浮き上がる姿が秋の情緒を際立たせます。


今日の様に「雨にけぶる嵐山」の美しさに魅せられた一人の人物がいます。
その人物とは中華人民共和国の元首相・周恩来氏(1898~1976年)。

氏が雨の嵐山を眺め、詠んだ詩が「雨中嵐山(うちゅうらんざん)」です。
氏の詠んだ詩碑は嵐山の亀山公園に今も建てられています。
日本ではあまり知られていませんが、中国や台湾、香港などから来られる
観光客の間では、日本に来ると必ず訪れる有名な観光スポットなのです!

氏については、いまさら説明はいらないと思いますが、一応紹介しておくと
中華人民共和国の祖でもある毛沢東首席とともに、新政国家の基礎を築き上げた名宰相で、
1972年に当時の日本国首相・田中角栄氏と日中平和友好条約を締結したことであまりにも有名です。

周恩来氏は、1917年に官費留学生として来日、約2年間、早稲田大学や京都大学などで
聴講生をしながら受験勉強をされていましたが、受験した2校(東京高等師範と東京第一高等学校)は
いずれも不合格となり、失意のなかで帰国を余儀なくされました。

この詩は彼が「日本で学ぶ」という夢が破れ、帰国する前に訪れた嵐山で詠まれたもので、
夢破れた失意の中で見た雨の嵐山の風景に「ひとすじの光(希望)を見出した」という喜びを
詠った詩なのです。いわば、この詩は「中華人民共和国建設」を決意した重要な詩なのです。

この「一すじの光」とは、当時、聴講生として通っていた京都大学で出会った人物にあります。
その人は、当時、マルクス主義研究の第一人者として知られた河上肇教授。
教授の共産主義思想に出会い、強く影響を受けたといわれる周恩来青年は、この思想に
より、理想とする祖国を建設しようと意を強くしたのです。

失意に覆われ、押し潰されそうな厳しい現実の中、この新しい思想を知ったことで
暗い闇に包まれた心に‘一光’が射したような衝動、その心の震え、歓喜を、
雨が降る嵐山に差し込めた‘光’風景の中に見出したのでした。

この詩碑は、1978年8月に日中平和友好条約が調印されたことを記念して
ゆかりの地・嵐山に建立されたもので、日中両国の友好が未来永劫続くことを祈念しました。

今だからこそ、あらためて友好について考えるよい機会になる場所かもしれません。

周総理が失意の心で見た、雨降る嵐山の美しい風景に、ひとすじの光を見出した様に、
私も‘希望’という光を、この風景の中に見出した気分に浸りました。
「雨の日の嵐山」・・・なんとも奥深い風景であることでしょう。


*「雨中の嵐山」
 
 雨の中を再び 嵐山を散策
 川の両岸には松や桜花もまじえ
 見あげると 高き山を見る
 水は緑に映え 川の石は人を照らす
 雨や霧に溢れているが
 一すじの日の光 雲間よりさして
 いよいよなまめかし
 人の世のもろもろの真理は糢糊たるも
 糢糊たる中に 一すじの光を見るは
 いよいよもって なまめかし

10年に1度の美しい紅葉、いのちを燃やすもみじ葉。

2012-11-25 23:48:33 | 保津川下り案内
今年の京都の秋、紅葉の美しさは「十年に一度」と言われ、
この三連休はどこも大勢の行楽客で賑わいを見せました。

夏から秋への移り変わりが早く、冬型の天候も多く、
朝晩の寒暖の差も激しかったことなどが、
今年の美しい紅葉を演出できた要因らしいです。

特に保津峡の紅葉は、大雨や強風、また夏の日照りなど
厳しい自然環境にさらされて一年を過ごします。
その環境下の中で、強く逞しく育ったもみじたちの色づきには、
野趣の富んだ自然の中の紅葉美を感じることができます。

初夏の新緑で目に沁みるほどの眩しい青葉だったもみじたちは
この晩秋に終焉の時を迎えます。

年中、保津峡を訪れる人の目を楽しませてくれた木々の葉たち。
赤く染まる葉に、いのちの炎が燃えているのを感じます。

いのちを燃やし色づくもみぢ葉の今年最後の演出をお楽しみ下さい。





不況を乗り切れ!現場から生み出されるもの。

2012-11-24 00:25:58 | 船頭の目・・・雑感・雑記
京都は今、秋の紅葉シーズン真っ盛り!日本全国はもとより世界中から、雅にして艶やかな京都の紅葉を求めて大勢の観光客が訪れておられる。

今日はそのシーズンの中でも、最も賑わうと予想される三連休の初日だった。しかし、天候には恵まれず生憎の雨混じりの空模様となり、予想より少なめの来客数となった。とはいえ、そんな悪循環にもかかわらず、約80艘のも舟が流れたのだから‘よし’とするべきだろう。


世の中、本当に景気が悪いようだ。
京都のお土産もの屋さんも観光客の財布の紐がかなり固く、悪戦苦闘されていると聞く。

今の時代、いったいどうすればモノが売れるのだろう?
我々、川下りも観光業であるかぎり、ひとつの商品である。
川下りという商品に磨きを掛け、魅力を高め、お客様の満足感を満たす事が出来なければ生き残ることはできない。

では、何をすればいいのか?また、どんなアイデアを出せば価値は磨かれるのであろうか?

マーケティングなんて言葉もあるが、そんな科学的や学問的にかしこまらなくても、まず我々船頭が現場で日々感じること、実際に体験して味わっていることをしっかり振り返り、今、できることを考え、実行に移していくことが何より大切だと私は考える。


この現場体験により、導きだされる感覚こそが新たなアイデアを生み出すと信じる。

よく例えられる話だが、塩と砂糖は一見すると見分けがつき難いが、実際に味わってみて初めてその味がわかるものだ。
しかし、今のような高学歴社会の上に高度情報化社会により、実体験を得ずして、
学問や理論だけで知ったような気になってしまってはいないだろうか。
つまり塩を舐めずしてその味を知った気になるということ。
しかし、そこには実体験のない弱々しい姿と自信のなさを漂わしているものだ。


日々、現場で汗や涙を流し、努力に努力を重ね、磨いた感性の中から湧き起こってくる知恵こそ、
本物であり、お客様の心を動かし、感動を生み、満足感を覚えて頂けるアイデアの源だと思う。


20世紀最高の経営者だと評されるジャック・ウェルチ曰わく
「最高のアイデアは常に現場から生まれる」
しっかり噛み締めたい言葉だ。


我々がするべきことは、現場で日々「当たり前のこと」を懸命に努力し、大切にし、
その中でいつも感性を磨き、湧き出てくるアイデアに注目したい。

いよいよ、保津峡に秋の観光シーズンが到来!

2012-11-18 21:34:12 | 保津川下り案内
保津峡の紅葉は今週はじめから見頃を迎えています。

この週末から来週末にかけ、京都は紅葉による錦絵の世界に彩られます。
その美しさは「10年に1度」とまでいわれる程、全国各地はもとより、
世界中から多くの観光客が京都を目指しやって来られています。

保津川下りでも今日、この秋、初の100艘超を果たし盛況となりました。

昨日は、日中に降り続いた雨により河川が増水し、途中運休を余儀なくされる事態となりました。
その後も増え続ける河川水位により、翌日も運休が続くという最悪の事態が心配されましたが、
朝にはなんとか運航安全基準水位まで減水し、運行を再開することができました。

増水時の保津川は、水面がうねりをあげて流れるまさに激流です。

保津川下りの操船は河川水位により、一艘に乗る船頭の人員を増やさねばなりません。
船頭は約130名いるのですが、一艘に4人が乗れば32艘の船しか用意できません。
嵐山まで約1時間10分、電車で帰る時間を加えるといくら早くても約1時間40分~50分は
かかることを見ておかねばなりません。朝9時に出航しても変えるのは11時前。
午前中の予約だけで40艘は入っているので、それに当日客がお越し下さることを
考えれば、待ち時間が出てしまうというわけです。

再開はなにより嬉しいことですが、一度、再開した限りはお客さまにできるだけ
お待ち下さることなく、廻船しなくては申し訳ない。
我々船頭は、一本でも早い電車に間に合わせるため、人ごみでごった返す嵐山渡月橋を
全力疾走でJR嵯峨山駅を目指しました。

この忙しさに、秋のシーズンの訪れを感じさせます。
急いで乗船場まで帰る、盛況に感謝しながら。

時折、時雨が混じる寒い天候でしたが、大勢の乗船客が来てくださり
日に3度、嵐山の渡月橋を渡ることができたこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

水位の高い状態での川下りは、美しい紅葉を迫力のある川下りを体験して頂けたものと思います。

この調子で11月末までがんばっていきたと思いますので、紅葉美しい保津峡へ
ぜひ、お越し下さいませ。