保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

突然の雷雨!自然が演出するアトラクション効果とは。

2011-04-25 21:12:49 | 船頭
今日は青空が広がる爽やかな天気だ!

と清々しい気持ちで正午の出航!

「茨城県から来た」というお客さんも「本当にいい天気に恵まれてよかった~」と
大変お喜びのご様子だったが・・・

約30分ほどして船が切り込んだ山間の渓谷に差し掛かった頃、
後方の空が濃い灰色の空へと姿を変え、我々の船を追いかけて
来るのが見えました。

後方から冷たく湿った風が吹き出し、徐々に私たちの船の背を押し出すのが感じ取れました。

「これはヤバい!雨が来るぞ」これは長年の(といっても16年ほどですが…)経験から
確信へと変わります。

まあ、運航の途中で雨に見舞われることはそれほど珍しいことではありませんが、
今日は少し事情が違います。今日の川の水量は、普段の平均水量より約70㎝も
高い増水状況ので運航です。雨が降り出しても途中で屋根を設置できる川岸が
非常に少なく限られているのです。

船のハンドルで舵を任されている私にとっては、雨が降る出すタイミングと
停船して屋根を設置できる場所をシュミレーションしておかねばならない責任が
あり、しかもそのシュミレーションを船を流している‘今’にしておかないといけないのです。

普通に操船していても慎重で確実な操船が求められる増水船頭用語でいうところの‘4人水’。
しかもその最高値である水量です。自分の頭の中では二つの事を同時進行で解析する作業です。
右脳と左脳をの回路を別々に起動させ、答えと身体行動を導き出すのです。

これは口でいうほど容易いことではありませんが、日頃の鍛錬と経験で掴んだ‘自分の腕’
技術を頼りに手際よくさばいていくわけです。

そうこうしている内に「ポタ、ポタ・・・」と顔に大きな水滴が当たりだします。

「もう、降り出してきたか!予想より少し早いな・・・」と思うと同時に
空に稲光が走り渓谷の山を振動させるほどの轟音が鳴り響き、強烈な雨が降り出したのです


止められる川岸まではあと600~700m。時間して約2分ほど。

仕方がないです。それぞれに傘をさしてもらいましょう。

基本的は傘は操船する際に前方の視界を遮るため、できるだけ控えて頂いているが
この状況では仕方がありません。屋根の作れる川岸までの間に限り、了解するしかありません。

豪雨と横殴りの強風、水面には小刻みに舞い上がる波が風上から風下へ規則正しく流れていきます。

さあ、船を着岸できる場所が近づきます。

この水量と強い押し風では船に勢いが付き過ぎて、進行方向のままでは
横付けすることはできません。

緩やかな流れの川岸手前で、船の舵を‘取り舵いっぱい!’船を一回転させます。

川岸付近にできる渦の流れを利用し、一気に回します。
渦に巻かれた船はきれいに一回転します。
一回転すると渦により川上に向かう流れに乗り、船は静かに停止することができるのです。

こんな水量の時でも川の流れを読み、その流れを利用することで自然のブレーキを利かせ
船の速度は見る見る落ちて安全に停止させることができるのです。

これも‘保津川船頭の400年の伝統から生まれた技’なのです。

停止した船から、一人の船頭が川岸の岩場に飛び移り、船が流れ出さないように
ロープをつなぎ固定します。
その間に残りの船頭が手際よく、屋根に骨組みを組み立てビニールの屋根で
お客さんの座られている頭上を覆います。その間、僅か1分。これで雨は防げます。

屋根が設置されるとお客さんから拍手が沸き起こります。

屋根を付け屋形船と形を変えた保津川の船は再び、漕ぎ出し
流れのある航路へと戻り、終着点・嵐山を目指します。

しばらくすると、暗く覆われていた雨雲は去り、青空とまぶしい太陽が
射し込み、先ほどの豪雨が嘘のように、再び爽やかで清々しい天気へと
姿を移したのです。

少し濡れた衣服もこの日差しが乾かしてくれます。

嵐山へ近づく頃、お客さんが「色んな趣向を凝らした川下りが楽しめた!」
と喜んで下さいました。本当に感謝です。

また、「さっきの豪雨は夢だったようだ」とも。
本当にそう思います。
まったく異なる天候を経験すると夢から覚めたような錯覚にとらわれます。

1時間15分ほどの自然の中のアトラクションに乗り込み
「晴れのゾーン」「曇りのゾーン」「強風のゾーン」「雷・豪雨のゾーン」
「船が1回転するスペシャルゾーン」を越え「青空ゾーン」で嵐山へ到着。

めまぐるしく移り変わる天候の日の川下りは、まさに自然アドベンチャー体験です。

これは最先端科学技術によるCGによるアトラクションとは全く異なる
雄大さと生身の人間が演じる伝統の技を垣間見れ、迫力やスリル感、また爽快感
でも、他のそれらに引けを取らないものと確信しました。

これからGWに突入します。

今年はどんな天候のGWになるか?予報に頼るしかありませんが、
どんな天候になろうとも「楽しく・安全」な川下りを提供できるの
‘川根性’が備わっているのが我々、保津川下りです。

GWの予約状況は、例年に比べて少し少な目な感じで、スムーズに
乗船していただける日が殆どだと思います。

これは今の国内状況では致し方ないところではありますが、
こんな時だからこそ、元気を出して盛り上げる為に精一杯務めたいと思います。

保津川下りのGWをよろしくお願い致します。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (ひより)
2011-04-25 23:09:22
はじめまして。
京都の研究テーマを探していまして、保津川下りのことを調べていると、こちらのブログにたどりつきました。
私も亀岡市に住んでいるのですが、まだまだ知らないことばかりです。

今日は本当に変な天気でしたね。
突然の雷雨。
室内にいたのにビックリしたぐらいですから、川の上だとすごかったんでしょうね。

また、お邪魔させてもらいます。
返信する
Unknown (さだ)
2011-04-26 22:47:31
いつもながら、船頭さんたちの操船技術には感動します。櫂を使ったブレーキ、いつぞやの、さいたに屋さんの「逆噴射!」が忘れられません(笑)

GWもどうぞ安全運航で、楽しい船旅をお願いします!
返信する
よろしく。 (はっちん)
2011-04-28 08:53:49
ひよりさんへ。

はじめまして。
京都を研究されているのですね。
ぜひ、保津川も調べてみてください。

地元民でも知らない面白い話がいっぱいありますよ。

これからも京都情報や保津川情報をお伝えしていくのでよろしくお願いいたます。
返信する
迫力、スリル満点 (はっちん)
2011-04-28 08:56:19
ありがとうございます。

今日も最高水量です。

気の抜けいない操船になります。
でもそのぶん、お客様には迫力のある川下りを体験していただける条件が整っています。

GW,水量の多い保津川下りを楽しんでもらえそうです。
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