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百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

伊部焼の真髄を希求/直向(ひたむ)きなる探検家/備前焼作家【平川忠】さん

2012-01-21 12:00:45 | 日記
 今回から平成24年度の本来のブログのスタートであります。初っ端を飾りますは、昨年の続きではあるのですが、新しい年の門出に まさに打ってつけの方、備前焼の更なる高みへ と言うよりか、備前の土と赤松ほか雑木の炎が織りなす究極の味わいを、これぞという焼き具合を、洗練された造形の上に、窯の構造までも遡って、ひたすら追い続けてらっしゃる 作家【平川忠】さんであります。


津山【M&Y記念館】での【古窯復元展】が終わって一週間ほど経った折、予約しておいた作品をいただきに 初めて 平川さんの工房へ伺ったのでありますが、結局のところ、その折から 4 度ほどもお邪魔いたしておりまして、その結果とでもいいましょうか、現時点の愚生の手許には この 4 点のお茶碗が揃っている次第にございます。


何故そうなったかと申しますと、まさに どれもが素晴らし過ぎるからであります。従来の備前焼の抹茶茶碗の一群があるといたしますならば、これらの作品は そこから 頭一つも二つも 抜け出ているように思えまして、そして多分、今 買っておかないと、この値段では 直ぐにも 求められなくなってしまうのではないかと 考えたからであります。ただし、器物で利殖しようだなんてことは一切 考えたことはありませんで、一重に 好いお茶碗と抹茶して和みたい との一心に ただただ尽きるのでございますが。

平川さんの作品を見て、オイラはふと「【パウル・クレー】さんの絵と 何か似とんなぁ」と思いました。外人作家さんの中では オイラの一番好きな画家さんであります。それでです。試みに クレーさんの絵を数点 並べてみることといたします。これらの写真は、2002年2月9日~3月31日まで【神奈川県立近代美術館】で開催された【パウル・クレー展】で購入した図録を撮影させてもらったものですが、さて 如何です?「何となく似ているなぁ」と思えないでしょうか?




 
平川さんは、金重陶陽さん荒川豊蔵さん加藤唐九郎さんという いずれも各窯場の【中興の祖】と呼ばれ 人間国宝になられた 陶芸の歴史を刻む超ビッグネームの方々と、まさしく様相を一とする命題に 何十年にもわたり 挑戦し続けてらっしゃるのであります。で 近年 その手応えを捉まれた由にございます。で その片鱗が示されておりますのが まさに此度 オイラが手にした作品なのであります。

太古の昔から粛々と培われ眠っていた土の命が 引き出されているかのようであります。そして何十年 いや百年以上も 酷寒酷暑にめげず 営々と太陽のエネルギーを蓄え続けた樹木たちが、その生きた証を 渾身の炎をもって、氏の 両手を通して入念された 己が精神および美意識の幼き権化である 形成された土器の上に、「この世への最後の贐(はなむけ)ですよ」と言うように、惜しみなく しっかと 降り注いで下さったかのようであります。

多くの抹茶愛好家の方々が 口ぐちに こうおっしゃいます。「備前焼のお茶碗は よく茶筅が痛むから どうもねぇ」と。確かにそうでありまして、その点 回避すべく、近年 滑りがよくなるよう仕向けられたお茶碗が多く見受けられるようになって参りました。でもオイラは思います。並みの茶碗なら そのように思われるかもしれない。しかし 平川さんのお茶碗を前にしたら決してそんなこと思いもつかないだろう。それでも 指摘される御仁があったとしたら、「それがどうしたというのですか?痛んだところで如何ほどのことがあろう。そんな些細なことなんぞ この器の前では、芥子粒のように 吹き飛んでしまうぜよ!」と、竜馬さんの如く バシッと 切り返すでありましょう。 

オイラは今から35年ほど前、30~35歳の時ですが、尾張旭市に住んでいました。焼き物が大好きで、瀬戸・多治見・瑞浪・土岐・四日市・常滑に よく出掛けました。常滑に行ったときのことです。余りに繊細で やわらかくて 素晴らしく美しい急須と出合いました。求めずには おられませんでした。「この方は絶対 人間国宝になられるだろう」と思いました。それから 17年後、その方は 見事、常滑焼で最初の人間国宝となられました。3代【山田常山(やまだじょうざん)】さんであります。

それと同じことが 起きるのではないかと思っております。そんな予感がございます。それは何より 作品が指し示してくれております。きっと 当たるでしょう。本当に素晴らしい作品ですから。それにもうひとつ 理由があります。氏の奥様の存在であります。

富士銀行金沢支店の看板娘、市内を歩いていたら、♪振り向かないで~♪という話題になった CM のディレクターにスカウトされたという ちゃきちゃきの金沢美人であられた奥さんは、若くして足が不自由であった義母さんを最期までお世話し、3女1男という子達を立派に育てあげ、焼物馬鹿とでも言えるぐらいの亭主の公私に亘る面倒を見続け、特筆すべきは今でも地域の人から「ご養子さん」といわれるほどに 一切の雑事に感(かま)けず、備前焼の坂田三吉か桂春団治かと言えるぐらいに、脇目も振らず 研究にのめり込む亭主の経済面でのサポートでありまして、元行員といえども あまりの厳しい金策に、一度目は腸捻転で、二度目は盲腸をこじらせてと 二度も死にかけたと言われるほどに、まさに【浪速恋しぐれ】の世界が、まさかまさかこの現代 ここ備前の地に於いて展開されていたとは……オイラはこのことを聞かせていただいたとき こう言いました。「奥さん、奥さんが金沢のご出身だから乗り切れたんですよ。もしこのへん出身の奥さんだったら、我慢が無いから とっとと逃げ出してるんじゃないでしょうかねぇ」と。

こんなにも素晴らしい奥方が ついてらっしゃるんですから、平川さんには 思う存分 突き進んでいただきたいと、とことん 目指すものを 目指していただきたいと 思っているのであります。オイラも、微力ならまだしも、微風ぐらいかもしれないのですが、それでも精一杯 応援させていただく所存でございます。

こうしてここまで書いてきますと、【平川忠】さんは紛れもなく「備前焼を新たなステージへ導くのですよ」と、神様が この世に差し向けられた方ではないだろうかと思えてくるのであります。大事を為された方々は皆さん そうであります。天から、それぞれ特別なる命題を与えられ 派遣された人たちなのです。分かりやすい例は【美空ひばり】さんと【石原裕次郎】さんですが、このお二人は神様から「敗戦で打ちひしがれた昭和の日本人を元気にするのだよ」とのことで この世に遣わされた方なのであります。まぁこんなこと、言わずもがななことでありましたです。
 
ところで オイラは何者だんべ? こう思った愚生は ある日 神様にお伺いしました。そしたらこう言わはりました。こげんこと書きたかぁないですが 仕方がないので記すとします。「アンタはのぉ エキストラや。日本語でゆうたら その他大勢や。そういう人も要るやさかいな。まぁ、大概の人はみんなそうや。安心しい」との事。そう言われてましても 何か 泣けてきましたぞな。
 
< 追伸 >
 備前焼の抹茶茶碗を 今回 四つも買ったということは、今まで 家の者には何も話しておりません。このブログが 我が家での 初公開であります。荒れなきゃ いいのですが・・・わが連合いは平川さんの奥さんに負けてなかったです。閃光が一瞬 降り掛かりはしましたが、それ以上のことはなかったです。ハイッ、安堵しました。よかったです。

< 補足 >
 奥さんに申し上げたことがあります。「平川さんの器には、ただひとつ 欠点があります」と。「なんですか?」と やさしく言わはりますから 答えたんです。「それはですねぇ、作品が重いんです。器のウェイトではありません。それはむしろ軽いと言えます。重いといいますのは【バリュー】です。これが何とも重たいものですから、毎日使っていますと堪えるんです。器と対峙するために こちらも背筋を伸ばしたり、シャキッと気合も 入れ直さなきゃいけませんからねぇ」と。
 またこんな話もいたしております。「個展を いろいろ開かれると思いますが、その折には どうぞ遠慮なくお申し出ください。器は私の手許にありますが、これらの器は いろんな人に見ていただき、ぜひともその素晴らしさを できる限り大勢の方に実感してもらいたいと思っております。ですから喜んで提供させていただきます。こんなスゴイモノ、私ごときが独占していいはずがありませんから」と。

 
 




 

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1 コメント

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炎の美 (√6意味知ってるパウル・クレー)
2022-09-14 20:44:21
 メラメラと鉄が生み出すタブローと

 クルクルと△燃えて実線に
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