統合医療日記

ここでの統合医療とは単に西洋医学と東洋医学の統合ではなく、病気を肉体と精神と社会及び自然環境の4視点から見ていきます。

冷えは万病のもと(インフルエンザの大流行)

2019-01-31 22:29:51 | 統合医療村

インフルエンザが大流行しているせいか、世の中が慌しい。何処のクリニックも幾ばくか止まっている車が多いようです。患者さんも「クリニックに行ってインフルエンザをチェックし治療を早めにするか」それとも「インフルでなければ一番危険なクリニックで感染のリスクを負うか」迷う所かもしれない。

ある病院から電話がかかってきました。医局の医師たちがインフルに感染していたので、彼らと接触のあった私にも注意喚起をしてきました。また産業医活動で総務課の担当者に電話をかけたら「インフルで休んでいます」とのことでした。いつも診察室がインフルエンザウイルスの培養地になっているので、私がかかるはずもナイ。軟弱な人が多い。と思うも帰ってからくしゃみが続くと「まさか」と思うこともあります。

友人がテレビ番組「冷えと免疫」についての取材でインタビューが有るので、冷え対策で漢方、統合医療的なことを教えてもらいたいと言ってきたので、ちょうど企業に出している原稿をそのまま彼に送ることにしました。参考に皆様にも読んでいただき、冬の病気に罹らないようにしてください。

誰でもわかる心療内科その99

脳血流とメンタルヘルス

―血の通った人間になるとは―

冷えは万病のもと

 私たちの身体の血流が良いことはとても重要です。何故ならば身体の血流障害は、私たちのあらゆる病気の根源です。

 たとえば、うつ病などは大脳の前頭葉や頭頂葉などにおける血流が低下しています。また不眠症患者は、脳血流全体が減少しているという研究があります。

 手は冷たいが心は温かいという人がいますが、それは反対です。手足が冷たいと脳の機能が低下し、人間らしい思考が出来なくなる可能性が高くなります。

 そこで思い出したのですが、私は20年以上前に、ビジネスマンのストレスチェック問診のため、質問項目を作成していたことが有ります。

 正常者群と患者群にストレスチェックをして、適切な尺度と項目とを作成しました。12尺度、138項目を決定し、現在も平成2015年から義務化になったストレスチェックとして使っています。

 そこのでその中の「四肢が冷えますか」という項目と「眠れない」という項目と「ゆうつですか」という項目と「うつ状態」という尺度の相関を取ってみました。

 そうすると驚いたことに、四肢の冷えが不眠や憂うつ、うつ状態と強い相関があることがわかりました。それも相関係数が0.000以上という高相関です(図1)。他の好ましくない心身の状態とも強い相関がありました。

 皮脳同根

 皮脳同根という言葉を聴いたことがあるでしょうか。あるいは脳皮相関ということも有りますが、皮膚と脳の関係は非常に大きいということです。

 発生学的にも受精卵は着床してから、内胚葉、中胚葉、外胚葉に分かれます。皮膚と脳はその最後に分化する同じ外胚葉に所属します。

 皮膚には心が有るといっても過言ではありません。「鳥肌が立つ」「身の毛がよだつ」とか「あの人とは肌が合う」とか言いますが、脳の状態が皮膚に影響することが、よくわかります。逆に皮膚の状態が脳に影響するのです。小さい頃のスキンシップが心の成長には大切です。

 外胚葉の皮膚と脳は血流が大事

 さて、内胚葉の心臓にはガンができることはほとんど有りません。それは血流が良いからです。血液の中には、ガン細胞が嫌う酸素と免疫細胞や抗体などで一杯だからです。

 さらには、心臓は温度が高く40度くらいになっているのでガンが育たないという理由もあります。

 これに対して外胚葉は、発生学的に心臓より遠くにあるため、大きな血管では血液は供給されていません。主力は毛細血管で栄養されることが多く、血流不全に陥りやすいのです。

 ですから血流が悪くなると、一番障害を受けるのは皮膚と脳です。年を取ると動脈硬化が進み、まず一番に細い毛細血管の血流が悪くなります。皮膚にはシミと皺が出来るように、脳にもシミが出来ます。すなわちβアミロイド、いわゆる認知症の原因物質です。

 血流改善に良い漢方生薬

 心療内科の初診の場合、やはりうつ病関係の患者さんが多く来ます。大体抗うつ剤を出しますが、身体に冷えがあるような患者さんであれば、漢方薬を出すことがよくあります。

 そうすると10人中9人は、その一週間か二週間後「おかげで大変楽になりました」と言って来ます。抗うつ剤も少なくてすみ治りも早いのです。

 漢方に加えて朝鮮人参を使うと、軽いうつ病はそれだけで治ることも有ります。図2はしもやけの漢方でもある当帰四逆加呉茱萸生姜湯(ツムラトウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)と瘀血(オケツ)を取り血流を改善する正官庄コージン末という朝鮮人参です。この二つを同時に使うと、冷えのある長年治らないうつ病も、すばやく改善することがよくあるのです。

 血流を良くする一番の方法

 漢方だけで無く、血流を良くする方法が色々あります。まず食べ物では当帰四逆加呉茱萸生姜湯でも使われているように、生姜や桂皮(ニッケ)その他ニンニク、玉ねぎ、陳皮(ミカンの皮を乾燥させたもの)など色々あります。ミカンは未よりも皮が大切です(図3)。

 取り分け一番心掛けなければならないことはストレスフリーです。職場の対人関係などのストレスは、交感神経を緊張させるため末梢血管が収縮し血流が悪くなります。

 そのために四肢が冷え脳が冷え、最初に提示した相関関係のように、不眠やうつ状態になることが多くなってきます。

 遠回りになりましたが、血の通った人間になるとは、いつもニコニコして怒らず、ストレスに対処する能力が高く、うつ病やその他のメンタルヘルス関連疾患にならない人になる、ということを暗示しているのです。

ちなみに一番のオケツ(血がドロドロで身体が冷える)を取るのは25番の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。


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