ああ、そうか。
考えてみれば当たり前だよな。うん、そうだ。
最近、どうも食品の賞味期限に追い立てられることが多かったんだけど、ここまで来て、見えてきたことがある。
一般の賞味期限っていうのは、表示された通り、鮮度と美味しさが楽しめる限界を示した数字。これは、基本的に生産者と販売者に従うしかないわ。
それに対して、狩猟民族の賞味期限は、ちょっと違う。と言うか、採ってきた獲物は、即座に調理して戴くのが基本。それが一番美味しい(例外もあるけど)。
だけど、採り過ぎたりもったいなかったりする収穫物は、今後のために保存する。じゃあ、いつそれを消費するかと言ったら、いろんな考え方がある。
食べたくなったら食べる。 他に食べるものがなくなったら食べる。
この辺がオーソドックスなところだろう。
ただ、いつまでに消費するのかとなると、保存の仕方によって考え方が違ってくるのだ。
赤コゴミは、すごく美味しくて
乾燥させると1/10に縮んで
半永久的に保存ができます。いつでもOK
ワラビもウドも
塩漬けすれば
これまた長期保存が可能です
ただし、乾燥に比べると、”かさ”はそんなに減らないから、より計画的な保存と消費が必要です。
これらの保存方法に比べて、超便利なのが、
瓶詰め保存
この方法の凄いところは、瓶から出した途端に食べられるところ。現代の知恵と技の賜物です。
さらに上を行くのが、
冷凍保存でしょう
『即戦力』として使えるのは、瓶詰と同じ。ただし、保存方法が瓶詰よりもはるかに簡単。下ごしらえをしたうえで、酸化防止のために空気を抜けば、問題なく1年間はもちます。で、ありがたいことにラップとジップロックがあるから、小分けもできるし真空保存も容易。極めて重宝します。
この辺が、現代の山菜キノコの保存法だと思います。
本題に戻ります。いつまでに食べるかということなんだけど、答えは、次に収穫してくるまでというのが基本だよね。乾燥保存は別にして、ほかの保存方法だと、残しておけば、どんどん保存スペースがなくなっていく。だったら、基本は、単年度決算だ。つまり、次の収穫時期を見越して消費していけば、季節が廻って来た時に心置きなく収穫できるってもんだ。考えてみれば当たり前。でも、やっと、この当たり前のことに辿り着いたのですよ(飢饉とか食糧危機が起こったら発想が変わると思うけど)。
・・・ということで、調理に移ります。作るのは、
≪山菜蕎麦≫
保存食のうちで最も収穫時期が近いコゴミを使いましょう!そう考えたんですね。で、意気揚々と妻に提案すると、
「ちょっと待って。山菜蕎麦なら、この前戻した赤コゴミがあるわよ。」
「あっ」
そうでした。・・・ショボン。先日、贅沢な山菜の煮物を作るときに戻した赤コゴミが残っていたっけ。お雑煮のシーズンには、結構需要もあったので残した山菜も使い切れてたんだけど、今は残ったままでした。確かに使わなければならない。仕方がない。それでは、コゴミは撤回しまして、赤コゴミを使いましょう。コゴミについては、3月いっぱいで消費すればいいさ。
さて、山菜蕎麦は、山菜一種では物足りない。キノコも入れましょう。
「ナメコも入れようと思う。」
「いいわね。でも、サワモダシ(ナラタケ)も食べたいわね。」
「そのうちにね。」
と言って、冷凍庫のキノコパックを解凍し始める。
ぬるま湯に入れておけば間もなく戻る
赤コゴミは食べやすい長さに切るだけ
山菜蕎麦に必須の鶏もも肉200gを細切れに
まず鶏肉を茹でてアク抜き
・半解凍のキノコを加えると溶けだします
あれ?ナメコじゃないぞ???
溶けて分離したキノコを見ると、傘が薄くて平べったい。ヌメリもあまりなさそう。軸が茶褐色のものと黒褐色のものとがありますね。これは・・・、
間違いありません(見づらくてゴメン)
妻が食べたいと言っていたサワモダシです。
普通に出汁醤油(水:出汁=3:1)と顆粒出汁を加えて、最後に赤コゴミを入れて、そばを茹でたら盛り付けます。
はい、赤コゴミとサワモダシの山菜蕎麦、出来上がり! なんだけど・・・
妻に言われた通り赤コゴミを使って、妻が望んだ通りサワモダシを使った山菜蕎麦です。当然、妻は大喜びで食べています。 マタギは、まるで、お釈迦様の掌の上で踊っている孫悟空のようです。
確かに美味しいよ。我々山人間に言わせれば、春の山菜のトップスターと、秋のキノコのトップスターによる夢の共演と言ってよいでしょう。美味しくて当然です。だけどね、最初に、あれだけ偉そうなことを言っておいて、結局、当初考えていた『次の収穫時期が来る前に』という目的が全然達成されていないではありませんか。
う~ん・・・。
ま、いいか!
明日から収穫が始まるわけじゃない。今は、食べたいものを食べて心を豊かにする。それが賞味期限より何より大切なことですよ。
理屈は、あとから適当につければいいってことさ。
山の神様、そして、ヤマノカミサマ、美味しい料理をありがとうございました。