山形のホリデイマタギ日記

山菜とキノコと魚を採って遊ぶ年寄りの冷や水日記

賞味期限より大切なもの

2023年01月24日 | 山菜料理

 ああ、そうか。

 考えてみれば当たり前だよな。うん、そうだ。

 最近、どうも食品の賞味期限に追い立てられることが多かったんだけど、ここまで来て、見えてきたことがある。

 一般の賞味期限っていうのは、表示された通り、鮮度と美味しさが楽しめる限界を示した数字。これは、基本的に生産者と販売者に従うしかないわ。

 それに対して、狩猟民族の賞味期限は、ちょっと違う。と言うか、採ってきた獲物は、即座に調理して戴くのが基本。それが一番美味しい(例外もあるけど)。

 だけど、採り過ぎたりもったいなかったりする収穫物は、今後のために保存する。じゃあ、いつそれを消費するかと言ったら、いろんな考え方がある。

 食べたくなったら食べる。  他に食べるものがなくなったら食べる。

この辺がオーソドックスなところだろう。

 ただ、いつまでに消費するのかとなると、保存の仕方によって考え方が違ってくるのだ。

       赤コゴミは、すごく美味しくて

       乾燥させると1/10に縮んで

半永久的に保存ができます。いつでもOK

       ワラビもウドも

       塩漬けすれば

       これまた長期保存が可能です

ただし、乾燥に比べると、”かさ”はそんなに減らないから、より計画的な保存と消費が必要です。

 これらの保存方法に比べて、超便利なのが、

       瓶詰め保存

 この方法の凄いところは、瓶から出した途端に食べられるところ。現代の知恵と技の賜物です。

 さらに上を行くのが、

       冷凍保存でしょう

『即戦力』として使えるのは、瓶詰と同じ。ただし、保存方法が瓶詰よりもはるかに簡単。下ごしらえをしたうえで、酸化防止のために空気を抜けば、問題なく1年間はもちます。で、ありがたいことにラップとジップロックがあるから、小分けもできるし真空保存も容易。極めて重宝します。

 この辺が、現代の山菜キノコの保存法だと思います。

 本題に戻ります。いつまでに食べるかということなんだけど、答えは、次に収穫してくるまでというのが基本だよね。乾燥保存は別にして、ほかの保存方法だと、残しておけば、どんどん保存スペースがなくなっていく。だったら、基本は、単年度決算だ。つまり、次の収穫時期を見越して消費していけば、季節が廻って来た時に心置きなく収穫できるってもんだ。考えてみれば当たり前。でも、やっと、この当たり前のことに辿り着いたのですよ(飢饉とか食糧危機が起こったら発想が変わると思うけど)。

 ・・・ということで、調理に移ります。作るのは、

   ≪山菜蕎麦≫

 保存食のうちで最も収穫時期が近いコゴミを使いましょう!そう考えたんですね。で、意気揚々と妻に提案すると、

「ちょっと待って。山菜蕎麦なら、この前戻した赤コゴミがあるわよ。」

「あっ」

そうでした。・・・ショボン。先日、贅沢な山菜の煮物を作るときに戻した赤コゴミが残っていたっけ。お雑煮のシーズンには、結構需要もあったので残した山菜も使い切れてたんだけど、今は残ったままでした。確かに使わなければならない。仕方がない。それでは、コゴミは撤回しまして、赤コゴミを使いましょう。コゴミについては、3月いっぱいで消費すればいいさ。

 さて、山菜蕎麦は、山菜一種では物足りない。キノコも入れましょう。

「ナメコも入れようと思う。」

「いいわね。でも、サワモダシ(ナラタケ)も食べたいわね。」

「そのうちにね。」

と言って、冷凍庫のキノコパックを解凍し始める。

       ぬるま湯に入れておけば間もなく戻る

       赤コゴミは食べやすい長さに切るだけ

       山菜蕎麦に必須の鶏もも肉200gを細切れに

       まず鶏肉を茹でてアク抜き

 ・半解凍のキノコを加えると溶けだします

 あれ?ナメコじゃないぞ???

 溶けて分離したキノコを見ると、傘が薄くて平べったい。ヌメリもあまりなさそう軸が茶褐色のものと黒褐色のものとがありますね。これは・・・、

       間違いありません(見づらくてゴメン)

 妻が食べたいと言っていたサワモダシです。

 普通に出汁醤油(水:出汁=3:1)と顆粒出汁を加えて、最後に赤コゴミを入れて、そばを茹でたら盛り付けます。

       はい、赤コゴミとサワモダシの山菜蕎麦、出来上がり! なんだけど・・・

 妻に言われた通り赤コゴミを使って、妻が望んだ通りサワモダシを使った山菜蕎麦です。当然、妻は大喜びで食べています。 マタギは、まるで、お釈迦様の掌の上で踊っている孫悟空のようです。

 確かに美味しいよ。我々山人間に言わせれば、春の山菜のトップスターと、秋のキノコのトップスターによる夢の共演と言ってよいでしょう。美味しくて当然です。だけどね、最初に、あれだけ偉そうなことを言っておいて、結局、当初考えていた『次の収穫時期が来る前に』という目的が全然達成されていないではありませんか。

 う~ん・・・。

 ま、いいか!

 明日から収穫が始まるわけじゃない。今は、食べたいものを食べて心を豊かにする。それが賞味期限より何より大切なことですよ。

 理屈は、あとから適当につければいいってことさ。

 山の神様、そして、ヤマノカミサマ、美味しい料理をありがとうございました。