ひきた小児科クリニック(群馬県桐生市 疋田小児科医院)

小児科専門医が群馬県桐生市やみどり市で流行している病気や,予防接種,アレルギーなどこどもの健康に関する情報を提供します.

インフルエンザワクチン、脳症による後遺症の発生率

2009-08-21 19:45:48 | 日記・メモ (Weblog)
インフルエンザワクチン、脳症による後遺症の発生率

 コメントで、インフルエンザワクチンの発売時期と、脳症による後遺症の発生率に関してご質問を頂きました。

質問1) ワクチンの発売が10月ごろとのことですが、遅いのではないか?

 ワクチンに関しては10月まで待たないとなら無いのは、単に作ることができないのです。ワクチンを作成するためにはウイルスを増やす必要があるのですが、ウイルスが簡単にウイルスが増えないために、ワクチン製造に時間がかかっているとお考えください。それと、ウイルスを増やすためにニワトリの卵を使っているのですが、卵の供給も増やそうとしても簡単に増えないので、やはり多く作ることが困難になっています。

質問2) ワクチンを接種したら脳症にならないか?

 どんなワクチンでも接種したら安心と言うことはありません。麻疹風疹ワクチンも以前は1回接種だったのが2回接種になりました。インフルエンザワクチンは接種しても罹患する可能性の高いワクチンです。しかし、ワクチンである程度は防ぐことが出来ますので、接種した方が良いです。

質問3) インフルエンザ脳症によって後遺症の残る確率は?

 インフルエンザ脳症で後遺症が残る確率は、正確な統計結果は出ていません。
何故かというと、インフルエンザ脳症の診断が難しいからです。
何故難しいかというと熱性けいれん(複雑型)という病気があって、インフルエンザ脳症との区別が難しいのです。他にも熱せんもうなども区別が難しいことがあります。熱性けいれんは通常は後遺症を残しませんので、熱性けいれんが計算に多く含まれると、統計上は脳症で後遺症が発生する確率は低くなり、重症例ばかりを脳症とすると、後遺症発生率が高くなります。(注:熱性けいれんは単純型と複雑型があり、単純型は軽症で脳症と間違われることはありません。)
私もインフルエンザ脳症の研究をして検査で脳症と熱性けいれんを区別したり、治療法を検討したりして論文を書きましたが(http://shoni-iji.com/papers/0811.html)、特殊な検査は誰でも出来ることではないため全国から情報を集めて後遺症の発生率を調べることが困難なのです。私が診療したインフルエンザ脳症の患者さんには特異的治療法を12名に行って後遺症が残ったのは1名でした。しかし、1/12が多いのか少ないのか分かりません。治療による効果なのか、軽症の脳症の患者さんは後遺症が無くて、重症の患者さんに後遺症が残っただけという可能性もあります。このような統計を取るのは本当に難しいのです。
ただ、現在も様々な研究が行われていますから今後明らかになると思います。
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