アマゾンの電子ブックリーダーであるキンドル(Kindle)、このデバイスを使って電子書籍を読む人が増えているそうです。アマゾンを通して購入された電子書籍の部数が、ついに印刷された単行本の部数を上回った、とアマゾンが発表しました。先月には1.8倍にもなった。もちろんアメリカでの話ですが、いずれにせよ、時代の大転換点だ、とアマゾンは大きな勝鬨をあげています。
しかし、ここで、「ちょっと待て」と声をあげたのが、やはり、フランス。22日のル・モンド(電子版)によると、アマゾンの発表した数字は、一部分だけを取り出したもので、現状を正確には示していない。デバイスである「キンドル」自体の売り上げも、7月1日に259ドルから189ドルに値下げして以来、3倍に増えていると発表しているが、正確な販売台数を公表しようとしていない。公表できないということは・・・当然、良くはないのだろうと推測できますよね。
ル・モンド曰くは、アマゾンは、電子書籍化が進んでいるというイメージを植え付けるために、都合のいい数字だけを発表している・・・アメリカの出版業界によると、2009年に発売された書籍全体に占める単行本のシェアは35%で、文庫本のシェアが56%、電子書籍は3%にすぎない。短期的に、電子書籍の売り上げ部数が単行本を上回ったからといって、それだけで印刷された書籍を電子書籍が超えたとは言えない。大きなシェアを持っている文庫本も、言うまでもなく印刷書籍なのだから。確かに、電子書籍の売り上げは伸びており、2010年の5月の売り上げ部数は、対前年同月比で200%の伸びを示したが、書籍全体のシェアは、まだ8.5%にすぎない。
また、販売部数ではなく、販売額でみると、アマゾンの主張がおかしいことが一層よく分かる。単行本は1冊平均で15~20ドルしているが、アマゾンから購入されている電子書籍の80%は、その価格が9.99ドル以下。特に良く売れている作品は、3~5ドルだ。印刷された単行本1冊の料金で、2~5冊の電子書籍が購入できる。この価格差は当然、企業の業績にも影響を及ぼしているはずだが、アマゾンは詳細を公表しようとしていない。ここもおかしな点だ。
ル・モンドは、都合のいい情報を小出しにするのは、アマゾンの常套手段だと、続けています。去年の12月にも、クリスマスの日に、ついにアマゾンの顧客は印刷された書籍よりも電子書籍のほうを多く買うことになる、と言っていたが、実際にはそうはならなかった。
しかし、今回の電子書籍の売り上げ部数が単行本のそれを上回ったという発表には、ある背景がある。それは、競合他社の追い上げ。電子書籍の売り上げが大きく伸びているというアマゾンの今回の発表は、アップルの四半期業績の発表の数時間前。今のところ、電子書籍ではアマゾンに対抗しうる企業は出てきていませんが、今後は、強敵が出現してくる。そのひとつであるアップルの業績発表前に、電子書籍はアマゾン、というイメージを再度強調したかったのかもしれない・・・
今後の強敵たちとは・・・まずは、アップル。音楽や動画用の“iTunes”でユーザーを取り込んだ上で、iPad・iPhone用電子書籍アプリケーション“iBooks”を登場させています。そして、グーグル。ここには電子書籍リーダー“Google Books”があり、この夏には仮想書店“Google edition”を立ち上げると言われています。
もちろん、アマゾンも単に手をこまねいているだけではなく、iPhoneやiPadに対応したキンドルを発売したり、グーグルのアンドロイドを使って携帯でも使用できるキンドルを登場させたりしています。
競争の激化する電子書籍。アマゾン、アップル、グーグル・・・熾烈な競争が展開されそうですが、勝ち抜くのはどこでしょうか。そして、競争があれば、市場は活性化しますから、電子書籍自体の売り上げも伸びていくと思われます。しかし、最後に、ル・モンドはもう一度、しかし、と言っています。アメリカにおいてすら、明日にでも電子書籍のシェアが印刷書籍全体を上回ってしまうという状態ではない。実際、この5月、アメリカでの単行本の売り上げは対前年同月比で、43%も伸びたという。
電子書籍だなんだと大騒ぎしているが、実態は、まだまだ、印刷された書籍の足元にも及ばない。新し物好きのアメリカがどんなに騒ごうと、長い歴史を持つ印刷書籍文化は捨てたものではない。歴史ある文化大国のフランスがしっかりと守っていくぞ! そんな気概が感じられる、ル・モンドの記事です。
9月、ヴァカンスが明けると、一気に数百冊の新刊が書店の店頭を飾るフランス。今年は、どんな話題作が登場するのでしょうか。楽しみですね。
ところで、日本は・・・「印刷業界大手の大日本印刷と凸版印刷は27日、国内で電子書籍ビジネスの発展に向けた環境整備を進めるため、『電子出版制作・流通協議会』を設立した。印刷2強がスクラムを組み、出版業界を巻き込んで国内での主導権を握る構えだ。背景には、インターネットを武器に電子書籍事業を拡大しているアマゾン・ドット・コムやアップル、グーグルなど、米国のIT(情報技術)大手に対する危機感がある。」(27日:時事)
しかし、「印刷や出版社、流通取次、書店と書籍関連のプレーヤーが多く、複雑な業界形態を維持したままで電子書籍に対応できるのか。協議会の調整力が試される。」(28日:フジサンケイ ビジネスアイ)
日本市場での、電子書籍と印刷書籍の戦い、今後どう推移していくのでしょうか。窮鼠猫を噛む、火事場の馬鹿力・・・日本企業の頑張りに期待しましょう。
しかし、ここで、「ちょっと待て」と声をあげたのが、やはり、フランス。22日のル・モンド(電子版)によると、アマゾンの発表した数字は、一部分だけを取り出したもので、現状を正確には示していない。デバイスである「キンドル」自体の売り上げも、7月1日に259ドルから189ドルに値下げして以来、3倍に増えていると発表しているが、正確な販売台数を公表しようとしていない。公表できないということは・・・当然、良くはないのだろうと推測できますよね。
ル・モンド曰くは、アマゾンは、電子書籍化が進んでいるというイメージを植え付けるために、都合のいい数字だけを発表している・・・アメリカの出版業界によると、2009年に発売された書籍全体に占める単行本のシェアは35%で、文庫本のシェアが56%、電子書籍は3%にすぎない。短期的に、電子書籍の売り上げ部数が単行本を上回ったからといって、それだけで印刷された書籍を電子書籍が超えたとは言えない。大きなシェアを持っている文庫本も、言うまでもなく印刷書籍なのだから。確かに、電子書籍の売り上げは伸びており、2010年の5月の売り上げ部数は、対前年同月比で200%の伸びを示したが、書籍全体のシェアは、まだ8.5%にすぎない。
また、販売部数ではなく、販売額でみると、アマゾンの主張がおかしいことが一層よく分かる。単行本は1冊平均で15~20ドルしているが、アマゾンから購入されている電子書籍の80%は、その価格が9.99ドル以下。特に良く売れている作品は、3~5ドルだ。印刷された単行本1冊の料金で、2~5冊の電子書籍が購入できる。この価格差は当然、企業の業績にも影響を及ぼしているはずだが、アマゾンは詳細を公表しようとしていない。ここもおかしな点だ。
ル・モンドは、都合のいい情報を小出しにするのは、アマゾンの常套手段だと、続けています。去年の12月にも、クリスマスの日に、ついにアマゾンの顧客は印刷された書籍よりも電子書籍のほうを多く買うことになる、と言っていたが、実際にはそうはならなかった。
しかし、今回の電子書籍の売り上げ部数が単行本のそれを上回ったという発表には、ある背景がある。それは、競合他社の追い上げ。電子書籍の売り上げが大きく伸びているというアマゾンの今回の発表は、アップルの四半期業績の発表の数時間前。今のところ、電子書籍ではアマゾンに対抗しうる企業は出てきていませんが、今後は、強敵が出現してくる。そのひとつであるアップルの業績発表前に、電子書籍はアマゾン、というイメージを再度強調したかったのかもしれない・・・
今後の強敵たちとは・・・まずは、アップル。音楽や動画用の“iTunes”でユーザーを取り込んだ上で、iPad・iPhone用電子書籍アプリケーション“iBooks”を登場させています。そして、グーグル。ここには電子書籍リーダー“Google Books”があり、この夏には仮想書店“Google edition”を立ち上げると言われています。
もちろん、アマゾンも単に手をこまねいているだけではなく、iPhoneやiPadに対応したキンドルを発売したり、グーグルのアンドロイドを使って携帯でも使用できるキンドルを登場させたりしています。
競争の激化する電子書籍。アマゾン、アップル、グーグル・・・熾烈な競争が展開されそうですが、勝ち抜くのはどこでしょうか。そして、競争があれば、市場は活性化しますから、電子書籍自体の売り上げも伸びていくと思われます。しかし、最後に、ル・モンドはもう一度、しかし、と言っています。アメリカにおいてすら、明日にでも電子書籍のシェアが印刷書籍全体を上回ってしまうという状態ではない。実際、この5月、アメリカでの単行本の売り上げは対前年同月比で、43%も伸びたという。
電子書籍だなんだと大騒ぎしているが、実態は、まだまだ、印刷された書籍の足元にも及ばない。新し物好きのアメリカがどんなに騒ごうと、長い歴史を持つ印刷書籍文化は捨てたものではない。歴史ある文化大国のフランスがしっかりと守っていくぞ! そんな気概が感じられる、ル・モンドの記事です。
9月、ヴァカンスが明けると、一気に数百冊の新刊が書店の店頭を飾るフランス。今年は、どんな話題作が登場するのでしょうか。楽しみですね。
ところで、日本は・・・「印刷業界大手の大日本印刷と凸版印刷は27日、国内で電子書籍ビジネスの発展に向けた環境整備を進めるため、『電子出版制作・流通協議会』を設立した。印刷2強がスクラムを組み、出版業界を巻き込んで国内での主導権を握る構えだ。背景には、インターネットを武器に電子書籍事業を拡大しているアマゾン・ドット・コムやアップル、グーグルなど、米国のIT(情報技術)大手に対する危機感がある。」(27日:時事)
しかし、「印刷や出版社、流通取次、書店と書籍関連のプレーヤーが多く、複雑な業界形態を維持したままで電子書籍に対応できるのか。協議会の調整力が試される。」(28日:フジサンケイ ビジネスアイ)
日本市場での、電子書籍と印刷書籍の戦い、今後どう推移していくのでしょうか。窮鼠猫を噛む、火事場の馬鹿力・・・日本企業の頑張りに期待しましょう。