ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

議会を欠席すると、罰金だ!

2010-07-24 19:28:56 | 政治
21日のル・モンド(電子版)に、「93人の下院議員が、ずる休みのために罰則を受けることに」(93 députés pourraient être sanctionnés pour absentéisme)というタイトルの記事が出ていました。ずる休みで叱られる・・・それも、れっきとした国会議員が!?

そうなんですね、フランスの国会議員の中には、国会審議、特に委員会への欠席がとても多い人がいるそうなんです。以前、雑誌(Le Pointだったか、あるいはl’Express)で読んだ記憶があるのですが、1年に1回とか、2年で数回とかしか出席したことがないという議員が結構いる。

じゃ、どこにいるのか・・・選挙区にいるんだそうです。そこで何をしているのか。日本と同じような状況なんだそうです。つまり、選挙民の冠婚葬祭。例えば、結婚式に招かれる。何かの記念式典に出席する。スケジュールが1日に10以上も入ることが多いとか。目的は、支持者との絆を深める。選挙民に顔を売る・・・日本と同じようですね。ヨーロッパの政治家は、政策立案に多くの時間を割いているのではないかと、勝手に思い込んでいたのですが、どうも、選挙のための活動がもっぱらという議員も多いようです。

でも、そうした議員たちにも言い分がある。議会に出席したところで、採決の際の投票を期待されているだけ。政策提案や、TV放送で画面に登場するような質疑応答は、党の要職を占める一部の議員たちに独占されてしまっている。それなら、選挙区にとどまって、支持層の掘り起こしをしていた方が、よほど次の選挙のためになる。

というわけで、欠席する議員が多くなった。確かに、国会審議をTV放送で見ると、半円形の階段教室のような議会には、空席が異常に目立つことが多くあります。それでも、特に問題視されはしなかった。

それが問題になってしまったのが、2008年の憲法修正提案(だったと思うのですが)の採決の際。与党に欠席議員が多く、なんと与党提案が否決されてしまった。これでは、なんのために多数派の与党になったのか、わかりませんね。

そこで、与党(UMP:国民運動連合)は、対策を講じました。もちろん、アメとムチ。ぶら下げたエサは、出席率のいい議員には、TV放送のある際、優先的に登壇させる。そして、ムチが、今回ル・モンドが伝えているように、ひと月に2回以上正当な理由なしに議会を欠席した場合、罰金を科す。

この決まりは、昨年の12月から実施に移されていましたが、21日、今までの7カ月分をまとめて、歳費から引き落とされたそうです。ひと月の歳費は、7,043.69ユーロ(およそ78万円、X12で年間940万円ほどですから、これに比べれば、日本の国会議員、貰いすぎではないでしょうか)。この歳費のうち、1,400ユーロほどが委員会など議会への出席に関する歳費だそうで、その25%、つまり353ユーロ(約4万円弱)が1カ月分の罰金になるそうです。21日に引き去られた額は、少ない人で、353ユーロ、多い人では2,119ユーロ。つまり、この7カ月の間に、2回以上欠席したことのある月が多い人では6回! やはり選挙区にこもっていたのでしょうか。少々のお金を払っても、貴重な時間をつぶして、パリまで行き、国会に出席するよりは、選挙区対策だ・・・こんな風に考えているのでしょうか。それなら、なんのために、国会議員になったのやら・・・

罰金を払った議員は93人。下院議員の定数が577人ですから、93人と言えばその16%。およそ6人に1人が正当な理由もなく月に2回以上、国会審議を欠席している。しかも、これでも以前よりは出席率がよくなったそうですから、昨年までの空席の目立つ議会も納得できますね。

欠席の多いフランスの議会と居眠りの多い日本の議会。どちらもどちら、としか言いようがないですね。給料泥棒の多い議会、これまた洋の東西を問わないようです。