ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

第二次大戦は、まだ続いている?

2010-07-15 20:50:09 | 政治
7月14日、フランス革命の記念日(le 14 juillet)。今年も恒例の軍隊パレード(le défilé)がシャンゼリゼで行われました。どこかの国をゲストに招待し、行進に参加してもらうこともよくありますが、今年招かれたのは、サハラ以南の13カ国。旧フランス植民地の国々です。

今年これらの国々が独立50周年を迎えるということ、そしてこれを機に、フランスとアフリカの国々との長い歴史ある絆を将来へ向けてより強固なものにしたい、という意向がこの招待の理由だと、サルコジ大統領は述べています。

しかし、何事にも一家言を持っているというか、一言言わないでは気が済まないフランス人のことですから、植民地時代へのノスタルジーにすぎないといった批判、あるいは社会党(le PS)や人権団体からは、フランス革命を記念するこの日のパレードに、独裁者、虐殺者、人権を蹂躙する者たちが加わるとは、何たるパラドックスか、といった非難の声が上がっていました。

しかし、大雨に見舞われたとはいえ、今年も無事行進が行われました。その雨、日本のマスコミなら、フランス革命に命をささげた先人たちの、庶民を抑圧するアフリカの政治家・軍人に対する抗議の涙だ、などと伝えるところでしょうね。

行進には、4,400人、241頭の馬と騎兵、82台のオートバイ、79機の飛行機と38機のヘリコプターが参加。招待されたアフリカ諸国の元首たちはサルコジ大統領と並んで、そのご夫人方はカーラ夫人と並んで、勇壮な隊列が通り過ぎるのを見ていました。通常ですと、この行進の後、エリゼ宮でガーデン・パーティ(園遊会;英語嫌いにもかかわらず、“garden party”と、なぜかこれは英語のまま)が行われるのですが、今年は緊縮財政のため、取りやめになっています。ただし、駐中国フランス大使館では、中国の要人や有名人を集めてガーデン・パーティが行われたようですし、駐日フランス大使館のホームページにも、グラスを手にする緒方貞子JICA理事長の写真も掲載されており、東京でもお祝いが行われたようですね。緊縮財政策などどこ吹く風、でしょうか。見方によっては、外交官特権ならぬ、外務省特権。どこの国にもあるようですね。

さて、旧フランス領の国々を迎えての革命記念日。この日に合わせて、もう一つの政策が発表されました。第二次大戦中、フランスの解放を目指し、アフリカを中心とした旧植民地の人々が銃を取り、ともに戦ってくれた。しかし、その人たちの年金が、フランス人の旧軍人のそれより低くなっている。それを同じレベルに改善する、という決定です。

長年、この差別は放置されてきたのですが、2006年、ある映画の上映を機に、改善の動きが見られました。その映画の名は、“Indigènes”(アンディジェーヌ;現地人とか土着民といった意味、英語のタイトルは“Days of Glory”)。自由フランスのために戦った、北アフリカ・仏領出身の兵隊たちの過酷な日々を描いたアルジェリア・ベルギー・フランス・モロッコの合作映画で、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した(Jamel Debbouzeをはじめ5人の男優による共同受賞)、名作です。

そのエンディング場面で、フランス人と植民地出身者との間に、退役後の待遇に大きな開きがあることが紹介され、話題となりました。特に、当時のシラク大統領夫人がいたく感動し、フランスのために戦った人たちの間で待遇に差があるのはおかしい、ねぇ、ジャック、何とかしてあげて、とシラク大統領に頼み込んだことが改革の発端だったとか。2007年1月から差別解消策が実施されてきたのですが、一部にまだ格差が残っていたようで、ようやく完全に同一レベルにしようということになったみたいですね。ヴァカンス明けの国会で、審議、可決される予定だそうです。

なお、2006年、軍人年金の改善を決定した当時、ド・ヴィルパン首相曰くは、支給が見直される旧植民地出身の退役軍人の数は8万人ということでしたが、それから4年近く、今年の決定で恩恵に浴するのは3万人ほど。戦後65年、記憶の風化、そして体験者の高齢化と減少も進んでいるようです。

では、我らが日本とその周辺国では、事情はどうなっているのでしょうか。先日、仙谷官房長官が、韓国への戦後個人賠償はまだ終わっていない、といったニュアンスのコメントを出していましたが、さて、フランスのように曲がりなりにも解決できるのでしょうか。それとも、普天間問題のように、いわばパンドラの箱を開けただけで、放り出すことになってしまうのでしょうか・・・そして何より、よく分からないのは、菅政権としての、あるいは民主党としての意見なのか、単に個人的見解なのか。民主党政権では、個人的意見がどうも勝手にそこかしこから飛び出しているような気がしてなりません。政権に一体感がない。サッカーの日本代表のように、しっかり団結して、チームプレーができれば、個の力は弱くても、世界に伍して戦える。民主党政権には、たとえばフランスのように個の力で突破できるだけのパワーのある政治家が多くいるのでしょうか。弱い「個」が自分勝手に動いたら・・・国民を不安にさせる一因なのではないでしょうか。日本の政治よ、どこへ行く・・・と、思わず天を仰ぎたくなってしまいます。日本の政治よ、しっかり。がんばれ!