ゆっくりと、着実に・・・拙速よりは、少々時間がかかっても確実にやるほうがいい、ということは多くの国々で受け入れられているのかもしれないですね。でも、度を越してしまうと・・・
7日の産経(ネット)に次のような記事が出ていました。
「ネパールは(水資源の)宝庫だ」。国際協力機構(JICA)を通して電源開発(Jパワー)からネパール電力公社に派遣中の発電事業の専門家、尾崎行義氏はこう話す。2003年、ネパール第2の都市、ポカラ近くのセティ川中流にあるダム建設の候補地を訪れた尾崎氏が「日本がやるべき事業だ」と確信したのは、切れ込んだ渓谷に戦後日本の挑んだアルプス地方のダムの姿が浮かんだからだ。脆弱(ぜいじやく)な地質でのダム建設で一日の長があるのは間違いない。
日本政府への援助要請の先頭に立った尾崎氏の奔走に対し、ネパール政府も最優先事業のひとつと位置づける。「アッパーセティ発電所」と呼ばれる建設計画にはJICAが出資し、Jパワーなどが07年、開発調査を完了。アジア開発銀行が事業化の支援を決めており、協議を続ける。
ただ、手つかずのヒマラヤの水資源は利用価値が高いだけに、インドや中国の企業も熱い視線を注ぐ。インドは自国の発電所をネパール国内に建設し、一部をネパール向けに譲渡する計画に余念がない。低コストの受注額を提示するなど、「日本企業が受注できるか流動的な状況になってきた」(関係者)という。インフラ輸出に意欲をみせる日本の底力が、試されている。
ヒマラヤの水資源に目をつけたのが2003年。開発調査を終えたのが2007年。その後、資金計画などを協議。今は、2010年。最初に手を挙げ、先行していたにもかかわらず、今や
「日本企業が受注できるか流動的な状況になってきた」・・・ということのようです。
まったくの門外漢なので詳細はわからないのですが、7年というのは、時間のかけすぎではないでしょうか。確かに、日本国内では、計画から着工まで数十年というダムもありますが、世界は待ってくれない。国内と同じスピードでやっていては、得られるものも、失ってしまう。何しろ、“Time is money”ですものね。上の記事の場合、担当の方は頑張られたのでしょうが、なかなか動かない壁があったのかもしれないですね。
この水資源、あるいは原子力は今後大きな伸びが見込める分野だそうです。そして、ここで、日本はフランスと戦うことになっている、あるいは既に戦っています。
水ビジネスのキー・プレイヤーは、フランスの2社。スエズ(Suez)とヴェオリア(Veolia Environnement)。上下水道事業や、水処理・水浄化事業、雨水利用ビジネスなど裾野が広がりをみせている水ビジネス。フランスの2社はすでに一兆円を超える売り上げがあるそうですし、さらに中国をはじめとする新興国へも、さまざまなシステムをパッケージとして売り込んでいます。
一方、原子力事業は、3大プレーヤーがしのぎを削っています。ここにもフランスが登場。フランスのアレヴァNP(Areva NP)および業務提携をした三菱重工グループ、東芝(アメリカのウェスティングハウス・エレクトリックを買収)、GEおよび原子力事業で経営統合した日立製作所グループの3企業グループ。日本、フランス、アメリカの戦いになっているようですね。
上記いずれの分野でも、日本は個々の技術には優れたものがあるそうです。しかし、ビジネス展開となると後塵を拝してしまうことが多いとか。どうしてなのでしょう。もちろん、決定の遅れなどもあるのでしょうが、もう1点、大切なのが、システム化、パッケージ化の問題だそうです。
フランス企業は、たとえば発電事業では、単に発電所だけではなく、配電盤事業や送電事業を含めて、パッケージ化して売り込んでくることがよくあるそうです。ビジネスの統合化とでも言えばいいのでしょうか。一方、日本は単体で売り込む場合が多いと聞きます。
技術者の頑張りでそのレベルは高い、しかし、技術者の領域を超えての統合・システム化を提唱・主導する人がいない、ということでしょうか。技術に優れ、製造の現場での品質管理も素晴らしいにもかかわらず、市場での売り上げに直結しない場合もある。
目の前の問題解決、技術開発には優れているものの、ビジネス全体を見渡し、その方向性を明確に打ち出す人がいない、あるいは少ない。話は、ビジネスだけにとどまらないような気がします。政策一つ一つには詳しくても、あるべき日本の国家像を提示できる政治家は少ない。一つ一つの政策は提示し実行することはできても、省をまたいでのプロジェクト、あるいは新しい分野に成長の絵を描くことのできる役人は多くない。
現場の名プレーヤーは多くいるにもかかわらず、名監督が少ない。日本の課題かもしれないですね。では、フランスには名監督が多いのか・・・日本よりははるかに多いと思います。徹底したエリート教育と、働き始めてすぐから管理者としての修業を積んでいくわけで、経営者として優秀な人物が輩出されています。しかし一方、エリート層に入れなかった人たちは、権利を主張するばかりで、仕事に打ち込む人は少ない。従って、フランス企業の提案は素晴らしいが、実際に出来上がったものはひどい品質だ、という声もよく聞かれます。
ということは、フランス人の経営者と日本人の現場が一緒になれば、素晴らしいチームになるのではないでしょうか。
でも、そこがそうはいかないのが、難しいところというか、面白いところですね。コミュニケーション、価値観、倫理観・・・克服すべき事柄が多く介在し、そう簡単にはチームとして機能しないのではないでしょうか。でも、もしそうした問題を克服できたならば・・・素晴らしいことですが、その場合、その成果をフランス人に独り占めされてしまう・・・それはそれで、怖い話です。
ここはひとつ、フランスのようなすぐれたトップの人材を日本でも養成することから始めたらどうでしょうか。でも、だれがどうやって音頭をとり、実行していくのか・・・問題の根は深い。
7日の産経(ネット)に次のような記事が出ていました。
「ネパールは(水資源の)宝庫だ」。国際協力機構(JICA)を通して電源開発(Jパワー)からネパール電力公社に派遣中の発電事業の専門家、尾崎行義氏はこう話す。2003年、ネパール第2の都市、ポカラ近くのセティ川中流にあるダム建設の候補地を訪れた尾崎氏が「日本がやるべき事業だ」と確信したのは、切れ込んだ渓谷に戦後日本の挑んだアルプス地方のダムの姿が浮かんだからだ。脆弱(ぜいじやく)な地質でのダム建設で一日の長があるのは間違いない。
日本政府への援助要請の先頭に立った尾崎氏の奔走に対し、ネパール政府も最優先事業のひとつと位置づける。「アッパーセティ発電所」と呼ばれる建設計画にはJICAが出資し、Jパワーなどが07年、開発調査を完了。アジア開発銀行が事業化の支援を決めており、協議を続ける。
ただ、手つかずのヒマラヤの水資源は利用価値が高いだけに、インドや中国の企業も熱い視線を注ぐ。インドは自国の発電所をネパール国内に建設し、一部をネパール向けに譲渡する計画に余念がない。低コストの受注額を提示するなど、「日本企業が受注できるか流動的な状況になってきた」(関係者)という。インフラ輸出に意欲をみせる日本の底力が、試されている。
ヒマラヤの水資源に目をつけたのが2003年。開発調査を終えたのが2007年。その後、資金計画などを協議。今は、2010年。最初に手を挙げ、先行していたにもかかわらず、今や
「日本企業が受注できるか流動的な状況になってきた」・・・ということのようです。
まったくの門外漢なので詳細はわからないのですが、7年というのは、時間のかけすぎではないでしょうか。確かに、日本国内では、計画から着工まで数十年というダムもありますが、世界は待ってくれない。国内と同じスピードでやっていては、得られるものも、失ってしまう。何しろ、“Time is money”ですものね。上の記事の場合、担当の方は頑張られたのでしょうが、なかなか動かない壁があったのかもしれないですね。
この水資源、あるいは原子力は今後大きな伸びが見込める分野だそうです。そして、ここで、日本はフランスと戦うことになっている、あるいは既に戦っています。
水ビジネスのキー・プレイヤーは、フランスの2社。スエズ(Suez)とヴェオリア(Veolia Environnement)。上下水道事業や、水処理・水浄化事業、雨水利用ビジネスなど裾野が広がりをみせている水ビジネス。フランスの2社はすでに一兆円を超える売り上げがあるそうですし、さらに中国をはじめとする新興国へも、さまざまなシステムをパッケージとして売り込んでいます。
一方、原子力事業は、3大プレーヤーがしのぎを削っています。ここにもフランスが登場。フランスのアレヴァNP(Areva NP)および業務提携をした三菱重工グループ、東芝(アメリカのウェスティングハウス・エレクトリックを買収)、GEおよび原子力事業で経営統合した日立製作所グループの3企業グループ。日本、フランス、アメリカの戦いになっているようですね。
上記いずれの分野でも、日本は個々の技術には優れたものがあるそうです。しかし、ビジネス展開となると後塵を拝してしまうことが多いとか。どうしてなのでしょう。もちろん、決定の遅れなどもあるのでしょうが、もう1点、大切なのが、システム化、パッケージ化の問題だそうです。
フランス企業は、たとえば発電事業では、単に発電所だけではなく、配電盤事業や送電事業を含めて、パッケージ化して売り込んでくることがよくあるそうです。ビジネスの統合化とでも言えばいいのでしょうか。一方、日本は単体で売り込む場合が多いと聞きます。
技術者の頑張りでそのレベルは高い、しかし、技術者の領域を超えての統合・システム化を提唱・主導する人がいない、ということでしょうか。技術に優れ、製造の現場での品質管理も素晴らしいにもかかわらず、市場での売り上げに直結しない場合もある。
目の前の問題解決、技術開発には優れているものの、ビジネス全体を見渡し、その方向性を明確に打ち出す人がいない、あるいは少ない。話は、ビジネスだけにとどまらないような気がします。政策一つ一つには詳しくても、あるべき日本の国家像を提示できる政治家は少ない。一つ一つの政策は提示し実行することはできても、省をまたいでのプロジェクト、あるいは新しい分野に成長の絵を描くことのできる役人は多くない。
現場の名プレーヤーは多くいるにもかかわらず、名監督が少ない。日本の課題かもしれないですね。では、フランスには名監督が多いのか・・・日本よりははるかに多いと思います。徹底したエリート教育と、働き始めてすぐから管理者としての修業を積んでいくわけで、経営者として優秀な人物が輩出されています。しかし一方、エリート層に入れなかった人たちは、権利を主張するばかりで、仕事に打ち込む人は少ない。従って、フランス企業の提案は素晴らしいが、実際に出来上がったものはひどい品質だ、という声もよく聞かれます。
ということは、フランス人の経営者と日本人の現場が一緒になれば、素晴らしいチームになるのではないでしょうか。
でも、そこがそうはいかないのが、難しいところというか、面白いところですね。コミュニケーション、価値観、倫理観・・・克服すべき事柄が多く介在し、そう簡単にはチームとして機能しないのではないでしょうか。でも、もしそうした問題を克服できたならば・・・素晴らしいことですが、その場合、その成果をフランス人に独り占めされてしまう・・・それはそれで、怖い話です。
ここはひとつ、フランスのようなすぐれたトップの人材を日本でも養成することから始めたらどうでしょうか。でも、だれがどうやって音頭をとり、実行していくのか・・・問題の根は深い。