ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

「閥」は、×か○か?

2010-07-26 19:24:06 | スポーツ
「ばつ」は、バツかマルか・・・わたしたちの周りでも、「閥」って聞くことありますよね。例えば、閨閥。妻の一族を中心に結ばれた人のつながり。閨閥政治。『広辞苑』にはこのように説明されています。奥さん同士が姉妹という政治家、日本にいますね。

そして、最も頻繁に聞くのが、学閥。出身学校が同じ人たちが、結びつき、助け合う。例えば、慶応出身者が多いデパート、早稲田出身者が多いデパート。さらに細かくなると、東大野球部閥のある企業。いろいろな企業でいろいろな学閥が、覇を競ったりしていますが、どんなメリットがあるのでしょうか・・・

もちろん、この学閥、日本だけにあるものではありません。例えば、フランス。グラン・ゼコール出身者のつながりはかなり密接なようです。国立行政学院(Ecole Nationale Administrative;高級官僚養成学校)出身者は“enarques”(エナルク)と呼ばれ、高等師範学校(Ecole Normale Superieur;グラン・ゼコールや大学の教員養成学校)卒業者は“normaliens”(ノルマリアン)、理工科学校(Ecole Polytechnique;理工系エリート養成学校)出身者は“polytechniciens”(ポリテクニシアン)と呼ばれ、別格扱いされていますし、出身者同士の縦のつながり、横のつながりが、フランス社会にしっかりと張り巡らされているようです。

例えば、エナルク。ごくごく一部をご紹介すると・・・(肩書には、現職・元職が含まれています)

Bernard Attali(エール・フランス会長)
Jacques Attali(官僚・エコノミスト・作家、Bernardとは双子)
Martine Aubry(社会党第一書記)
Edouard Balladur(首相)
Daniel Bouton(ソシエテ・ジェネラル会長)
Michel Camdessus(IMF専務理事)
Jacques Chirac(大統領)
Jean-François Copé(与党UMP幹事長)
Laurent Fabius(首相)
Valery Giscard d’Estaing(大統領)
Martin Hirsch(慈善団体Emaüs代表)
François Holland(社会党第一書記)
Lionel Jospin(首相)
Alain Jupé(首相)
Valérie Pecresse(文部科学相)
Jacques Rigaud(欧州最大のメディアグループRTL会長)
Michel Rocard(首相)
Ségolène Royal(環境相)
Louis Schweitzer(ルノー会長)
Jean-Claud Trichet(ヨーロッパ中央銀行総裁)
Dominique de Villepin(首相)

1945年の設立で、歴史はそれほど長くないのですが、錚々たる人物リストですね。高級官僚養成学校だけあって、政界・官界を中心に、実業界も含め、多彩な人物を輩出。そして、そのネットワークはかなりしっかりしていると言われています。例えば、政府系企業のトップがenarquesの間でたらいまわしになったり・・・もちろん、それを決定する立場にいる政治家も、enarque。

フランスのこんな細かい事例を調べたのは、日本の意外なところに「閥」が見られるような気がしたからです。その意外なところとは・・・サッカー界。日本サッカー協会の人事です。

最低2期4年会長職にとどまると言われていた犬飼基昭氏が1期2年で退任。FIFA理事の小倉純二氏が新会長に。代表の岡田監督や原技術委員長が、芸術家・東京芸大教授の日比野克彦氏とともに新理事に。

ところで、国際サッカー連盟・FIFAは“Fédération Internationale de Football Association”の略、つまりフランス語なんですね、イギリス生まれのスポーツですが、その国際団体の名はフランス語、ご存知でしたか?


さて、日本サッカー協会の新体制、その顔ぶれの出身大学と社会人としてプレーした出身企業を調べてみると・・・

名誉会長 :川渕三郎  ・早大―古河電工
名誉副会長 :釜本邦茂  ・早大―ヤンマー
会長   :小倉純二  ・早大―古河電工(プレーの経験はない)
副会長   :大仁邦弥  ・慶大―三菱重工
副会長   :大東和美  ・早大―住友金属(ラグビー選手・Jリーグチェアマン)
副会長   :田嶋幸三  ・筑波大―古河電工
理事   :岡田武史  ・早大―古河電工
理事    :原博実   ・早大―三菱重工
理事    :日比野克彦 ・東京芸大(芸術家)
*理事はほかにもいらっしゃるのではないかと思いますが、日本サッカー協会のホームページで見つけられませんでした。

さらに、今回退任した人を調べると、
会長   :犬飼基昭  ・慶大―三菱重工
副会長  :鬼武健二  ・早大―ヤンマー

退任した人も加えると、早大―古河電工が3人、早大―ヤンマーが2人、慶大―三菱重工が2人。特に、早大―古河電工は名誉会長、会長、代表監督ですから、強いですね。早大だけを見れば、上記の中に7人。古河電工出身者は、4人。一方、慶大―三菱重工は2人でしたが、たった1期2年で犬飼会長が退任。強引な協会運営をめぐり批判があったともいわれていますが、追い出されたと見えないこともない・・・

たまたまこうなっただけ、ということかもしれないですが、上下関係が厳しく、団結力の強い体育会系の出身者ですから、先輩後輩のつながりは、陰に陽に、強いものと思われますね。

サラリーマン的にみると、面白いポジションにいるのが、新しく理事になった原技術委員長ですね。大学は主流派の早大。プレーした社会人チームは、対抗派閥的な三菱重工。どちらとも話ができるので、うまく立ち回れば・・・しかし、下手をすると、どちらからもスパイ扱い・・・

まあ、こんなサラリーマン的解釈とは一切関係なく、日本サッカー協会には、ぜひとも一丸となって、日本のサッカーがさらに強く、人気が出るように、リードしていってほしいと思います。選手の自覚、Jリーグ各チームの努力も必要ですが、なんといっても、日本サッカーの進路を決めるのは、日本サッカー協会。会長交代の影響もあり、代表の新監督決定が遅れているとか。新チームの最初の試合(9月4日、対パラグアイ戦)にも間に合わない、という憶測も出ています。「閥」などにとらわれず、適材適所で、ぜひ、先頭を切って走っていってほしい・・・これからも、応援していける、日本代表、Jリーグであってほしいと思います。
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