仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*A-.+ : ライオン: 大人のファンタズィー 

2024年05月24日 09時50分27秒 | *現代ドイツ短篇選

     ハンス・ウンヴィルシュの家にライオンが棲みついている、という噂が俄かに起った。  夫人が2年前に失踪して、三か月ほど過ぎたころかららしい、というのである。
 それは 或る寝苦しい 暑い日の夜中のことだった。 
 ライオンが開きっぱなしのドアから 手探りするように入ってきて、ベッドの傍らで横たわっていたのだ。  --   ウンビルシュは 鈍重な足音は耳にして、動く陰は 真っ暗闇の広い部屋では わからなかったが、傍らに来るや、苦し気な息遣いをし、また、何か黴臭い木の葉の匂いが鼻を突いた。                       少し後になって、ライオンだとわかったのだが、湿った土と獣の匂いには違いなかった。                                       ライオンの体からは 露がしたたり、その為か、少し涼しく感じられると、  ウンビルシュは吹き寄せてくる爽やかな風と相俟って、以後ぐっすりと寝入っていたのだ。                                    朝方、寝入っていると思っていたライオンは、いなく 玄関ドアに目を向けると 玄関前で ぽつねんと河のほうを眺めていた。
  ウンビルシュは怖れずに、来るように合図すると 肉の切れ端を与えてやった。                                       
  これを機に 言葉の一つでも理解しあえればと思ったのだ。 だが、肉を食べ終えても口を開けないまま、黒いまなざしでどこかを見つめているだけだった。    --ライオンは何も伝えたがっている風はなく、待たなければと思ったが、ウンビルシュは粘り強く言葉をかけようと決めた。

  こうして、ライオンが棲みつくや 何日も過ごしていると、昼間は近くの丘の上に立ち、逆光を受け黒い影となり 立っていたかと思えば、首をうなだれて 河を見つめていたり、玄関の壁際で 陽の光を浴び横たわっているときもあった。そんな折り、近くに寄っては、言葉をかけていたのだ。   
   C.Meckel : Der Lowe  Reclam. ebd. S 35ff...            
   メッケル: 「ライオン」より   Ubersetzung von : M.NATSUME

***  ))) *

戦後ドイツの作家メッケルは短篇に長けたファンタジー物語を書いたユニークな作家でありグラフィカーでもある。>>

戦後ドイツの短篇は、ヘミングウェイなどの謂わば、失われた世代The lost generation: の作家が書いたアメリカのショートストーリーの影響を受けつつ、独自の文学的伝統を築き上げ、ナチス時代に、より簡潔で直接的な表現で戦後の混乱と再建の時代に活躍したことは記憶に新しい。。。

それらの作家たちは戦後のドイツ荒廃した社会に新たな視点を提供し、今日でも読まれ、文学の力がいかに人々の心に響くかを示している。そんな例として、例えば、パトリック・ジュースキントは、「香水」の著者としてよく知られ、独特の感性と深い洞察力で、ファンタジーの枠を超えた文学的価値を持っているのである。。。

 戦後のドイツ文学は、その多様性と深い歴史的背景により、読者を魅了し、そんな中、ごく短い掌編ではあるがメッケルの「ライオン」という作品もある。。。「ライオン」という短編は、そのタイトルからも想像されるように、力強さと威厳を持つ生き物を題材にしながら、親しみやすいように書かれ、意外や意外、ほんのりとあたたかな人間的なメッセージを伝えている。>>>

因みに、訳者はドイツ文学史の専門家で、彼の訳にはランゲッサーや現代作家の短編他、ドイツのバロックから現代にいたるまでの抒情詩の翻訳に長け、その翻訳は原文のニュアンスを尊重し、親しみやすい形でなされている。。。

The art of translation is a bridge between cultures, a means of sharing the wealth of literature and knowledge across language barriers.                          One such architect of this cultural exchange is Masahiro Natsume, a Japanese translator  .。。。He  was born in Ngano Prefecture . His transition in the literary world is a testament to the diverse paths that lead to the realm of translation. Natsume's proficiency in English and modern Japanese,  has allowed him to contribute significantly to the translation of literature.

  --His  approach to translation goes beyond mere word-to-word conversion; it involves a deep understanding of the context, the author's intent, and the cultural nuances that shape a narrative.--- This meticulous process ensures that the translated work resonates with the target audience while remaining faithful to the source material.---- His translations serve as a gateway for Japanese readers to explore the vast landscapes of foreign literature, enriching their literary experience and broadening their horizons.

The role of a translator is not just about converting text from one language to another; it's about capturing the essence of the original work and faithfully recreating it for a new audience. ----This requires not only linguistic skills but also empathy, cultural insight, and an artistic touch.--**     ->  )) )* 


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