池浦山 順慶寺(じゅんきょうじ)
愛知県刈谷市泉田町池之浦３－１ Visit :2005-09-01 15:30
§第八代水野平蔵近房作 喚鐘 文政三年(1820)
水野平蔵家は、その系譜によれば水野太郎左衛門家より早い時期に分家し、同じく鋳物を生業とする別家となった。初代は水野平右衛門家勝と称し、平蔵の名を継承するようになるのは、三代政義以降のことである。
第九代水野太郎左衛門政武は、別家五代水野平蔵雅易の九男平九郎であり、宝暦十三年(1763)太郎左衛門家の養子となり九郎左衛門と改名、寛政三年(1791)に隠居した。
また十一代水野太郎左衛門政辰は、幼名保次朗で、文化七年(1810)一旦は久米氏の養子となったが、文政三年(1820)水野家へ還籍した。父第十代水野太郎左衛門政和の逝去に伴い、十一歳で当主となったことで、幼少の間は八代水野平蔵近房が後見するなど、両家の関係は親密なものであったことが伺える。
第八代水野平蔵近房は、明和七年(1770)に生まれ、天保八年(1837)に六十七歳で没している。このことからこの喚鐘は、近房晩年五十歳の円熟期に造られたものと判る。鋳造されてから、およそ百二十五年後の第二次世界大戦下においては、全国各地で金属製品の強制供出により、多くの秀作や貴重な作品が次々と溶かされ武器に変えられていった。当寺の喚鐘もその対象となったが、それを惜しんだ当寺の住職が、窮余の一策として戦火を報知する半鐘としての使命を与え、近くの火の見櫓に掛けたことで漸く難を逃れることができた。この間、風雨に晒される火の見櫓に吊されていたのは二年程度のことで、その後は再び当寺の堂内で大切に扱われたことにより、鋳造後百八十五年も絶ったとは思えぬほど喚鐘の状態は良好であった。他の水野家の鋳た堂外に吊された喚鐘は、どこも長年の風雨により緑青が吹き、銘も判別し難い状況にあることから、今後も末永く、このままの美しい状態で、涼しい音色を放っていただきたいと願うものである。
銘文
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三 州 碧 海 郡 重 原 庄 泉 田 之 郷
池 浦 山 順 慶 寺
願 主 十 二 世 現 住 了 静 代
後 住 三 尾 麻 呂
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寄 進 人 肝 煎 同 行
惣 門 徒
于 時
文 政 三 庚 辰 歳 十 一 月 十 八 日
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尾 州 名 古 屋 住
冶 工 水 野 平 蔵 近 房
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§順慶寺の由緒
寺伝によると、順慶寺はもと天台宗（本山は比叡山）の寺院であった。応仁年間（1467年室町時代）、本願寺の第八代門主蓮如上人が三河来訪時、当寺住職了往が、蓮如上人の教えに道を開かれ、後に蓮如上人から、六字名号（順慶寺に現存）を賜り、浄土真宗に転宗した。明応八年（1499）、蓮如上人が往生を遂げられ、翌明応九年（1500）には、第九代実如上人より絵像のご本尊（順慶寺に現存）が下付され、名実ともに浄土真宗の寺院となった。
当山は、他には珍しく、当寺独自のホームページを開設されています。
順慶寺のホームページhttp://www.junkyoji.com/#
☆旅硯青鷺日記
当御山にも、突然推参したにも係わらず、御老院様が御庫裏に招き入れ、冷たい抹茶で持てなしてくださった。文化財保護に関連したお仕事もなさっておられるとのことで、私の採訪記にもご興味を示され、嬉しいことに水野氏の系図にまで話が及んだ。その後
後堂に案内され、喚鐘をゆっくりと撮影させていただいた。こうして各地のお寺を採訪していると、見知らぬお寺のご本尊様を拝することが出来、さらにはご住職やご関連の方々の優しいお心に触れることができることに、改めて感謝しています。
水野平蔵家系図http://blog.goo.ne.jp/heron_goo/e/7551e73084352a9a4d23ed9ccc7f9104
