拝啓 松井秀喜様

私はあなたのことを星陵高校の時代から見ていました。明徳相手に5連続敬遠をされて早くもプロの選手として意識していました。長嶋監督(当時)がドラフトであなたを引き当てた時「やった!!」と思いました。巨人に怪物がやってくる。なにかどデカイことをやってくれると思っていました。第一号はヤクルト高津から弾丸ライナーでライトスタンドへ突き刺せてくれました。知り合いに頼みゲーム前にロッカーで私のフルネームを書いてサインもしてくれましたね。一生忘れません。何度もドームへ神宮へ、横浜へ行きました。あなたの懸命なプレーはプロ中のプロでした。打撃を中心に見る方が多いですがあなたの守備、走塁も一級品ですよ。何度守備で得点を防ぎ、走塁で一個先の塁を果敢に狙っていましたね。確か一度だけあなたが怒ったのは阪神戦でダレルメイにデッドボールを当てられた時、バットを捨てて向って行こうとしましたね。その前に伏線はありましたが。あなたはとても道具を大切に扱いますよね。バットやグラブ、ヘルメットを叩きつける選手がいますがあれは選手の商売道具、命です。医者がメスを叩きつけますか?しませんよね。あなたのその温和な性格で多くの日本人、メジャーデビューしてからの外国人に多くを教わったと思いますよ。渡米する時「死ぬ気でやる」という貴方の言葉に嘘はなかった。2003年の開幕戦では初ヒットをレフト前へ打点のおまけもつきました。とても1年生メジャーリーガーとしては考えられない活躍。やはりヤンキースタジアム第1戦で満塁ホームランは新人初でヤンキースの歴史に刻まれました。2004年は日本凱旋。東京ドームの開幕戦に行きました。レフト最前列であなたの守備をずっと見てビデオに撮っていました。あなたが巨人を去り、名門ヤンキースで元気にプレーしている姿に目頭は熱くなり持っていたビデオも振るえてピントが合いませんでした。試合には負けましたが鋭い2ベースはあなたの進化を感じました。今年はあなた個人としてはとてもいい成績だったと私は思います。全力で怪我なく体調管理を怠らず、過酷な移動もし不動のクリーンナップにいましたよね。セントルイスで足を怪我しても翌日はDHでホームランとあなたの凄さは一体どこから来るのか?理解不能になりました。ただそれはお父様が巨人時代毎日のように「秀さんへ」とFAX、メールであなたの技術的なこと以上に人間性を的確にアドバイスされていましたね。お母さんの作る「にんにくカレー」が大好物でにんにくパワーが強靭な肉体の原型になったのでしょう。食事はケチらないという松井一家。食こそが命ですね。苦しいヤンキースの2005年が今日終わりました。リングに手は届きませんでしたが、感動は私達にしっかり届きました。来季があります。あなたのような人から現代にはびこる多くの痛ましい事件がなくなればと切に思います。スーツを着て今日のラストゲームのインタビューに答えていた時、目が赤かったのは私の気のせいでしょうか?あなたが今日最後のバッターでアウトのコールを受けた時「終わった」という顔でした。あなたのプレーを167試合見てきて今日あなたを見て走馬灯のように今年1年が甦りポロリと目から涙がこぼれてしまいました。是非ゆっくり静養し、あなたの来季をじっくり見させていただきます。私の趣味は野球、ヤンキースそしてあなた松井秀喜ですから。遠い日本から失礼します。　敬具