アサファ・パウエルの驚異と葛藤。

2008年03月10日 | スポーツ全般



アサファ・パウエル。世界最速の男ながら「無冠の男」として大舞台では勝利の女神は過去微笑んでいない。

彼の原点は生まれ故郷、ジャマイカの坂道にあった。これが今の彼の驚異である「エクスプローシブ・スタート」だ。最も理想的なスタートの彼の肉体には驚かされた。それが「大腰筋」と呼ばれる、背骨、骨盤、太ももを結ぶ筋肉だ。日本トップアスリートの倍の大きさがあった。ストライド型とピッチ型の両方を実現できる身体である。他にも足の腱が引っ張る強さ、力も並外れている。当然、上体の筋力から10秒内で何をするか?熟知しているようにも

100mは陸上競技の「華」と言っても良いが僅か10秒以内で決着がつく。
ただ彼の言う「100mは戦場だ」という言葉にとてつもない練習と持って生まれた肉体こそが、彼の可能性と進化に目を見張る。

俺の好きな野球も他のスポーツも技術で補えることはある。ただ100mは、その技術があれば速く走れるとは到底言い難い。確かに走法を変えたり、重心の位置やスライド、ピッチ、歩幅の改良はあってもそれは技術よりもって生まれた天性だと思う最大の競技かもしれない。

ただ、彼の脳裏にはいつも「孤独とプレッシャー」があった。逸材、天才そして努力し続けても「どこかで限界」を感じる。

幼少の頃、兄弟で走った「楽しさ」から史上最速の男としてのプレッシャーと期待は彼にしか分からない。というよりアスリートと呼ばれる人は大抵そうだ。
見ている人間は俺をはじめ言いたいことを言っているが、故郷に帰り、家族や友人と会っている25歳らしい笑顔は今年の夏また厳しい顔で世界へ挑んでいくのだろう。