難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

要約筆記者事業で養成される要約筆記者

2010年12月06日 19時07分56秒 | 要約筆記事業
要約筆記事業とは、障害者自立支援法の地域生活支援事業で実施される要約筆記者派遣事業と要約筆記者養成事業。
手話通訳事業や音訳者事業などと合わせてコミュニケーション支援事業とされる。

要約筆記事業の法的位置づけは、2000年の社会福祉法等の改正時に、社会福祉を目的とする社会福祉法第2種事業となっている。

手話通訳はもちろん、介護福祉士や社会福祉士、精神保健衛生士、保育士などの他の社会福祉事業を担う人々と同じ位置づけとなる。

要約筆記者となる過程で、社会福祉や基本的人権、権利擁護の意味を学ぶのこのためだ。
単に、同じ役割を担うと言うだけでなく、それらの専門職は連携して福祉サービス、医療・保健サービスの提供にあたることになっているからだ。

専門職とボランティアでは連携が出来ない。
対象者の権利擁護のために、専門的な知識・技術を持って自立した生活を送れるように個々に支援すること、専門職としての倫理性を求められるからだ。


専門職と言えば、医師や教師、外国語通訳もそうだ。
テレビ放送のリアルタイム字幕制作者、講義のリアルタイム字幕制作者もその仕事に対する専門性を持っている。
しかし明らかに社会福祉事業とは別の専門性だ。

聴覚障害者の情報保障を担う専門職であっても、個々の対人援助までは責任を負わない。
大学の講義で情報保障を聴覚障害学生である個人に対して行ったとしよう。この場合は講義保障の範囲で、個人に支援している。
しかし、学生の持っているかも知れないメンタルな問題、周囲の学生との人間関係の構築、就活、聴覚障害者の日常生活用具の利用、聴覚補償訓練とか、難聴治療の問題には踏み込まない。

要約筆記者は支援の必要性があるかどうか、どういう支援が考えられるかは理解しているので、そのことを事業体に報告する、必要があれば事業体が自治体や他の社会資源と協議する。

これは、要約するか全文入力するか以前の違いである。
ちなみに要約筆記者は最初の養成課程では一人出かける、一人で入力できるような力を身につけることが最優先して学ぶ。
全難聴の提案した養成カリキュラムには連携入力や二人書きについては含まれていない。これは否定しているのではなく、その後学習することとしている。
最初の養成課程で二人書き、連携入力を始めると一人で書ける力が失われるからだ。


ラビット 記

要約筆記事業が地域生活支援事業である意味

2010年10月11日 13時04分11秒 | 要約筆記事業
要約筆記者派遣事業は「地域生活支援事業」で提供される(給付される)。
障害者自立支援法の地域生活支援事業メニューの一つのコミュニケーション支援事業である。

社会福祉に関わる給付など多くの措置、決定が市町村で行われるようになっている。
例えば、介護保険は住民にもっとも身近な市町村が保険者であり、第一号被保険者の保険料は市町村が徴収する。
市町村の事務は幅広く、都道府県から委譲されたものも多い。

地域生活支援事業であるということは、難聴者も一市民として地域で暮らしていることもあるし、社会の理解があって地域で暮らせる社会こそがインクルーシブな社会、共生社会であり、これを目指すのは当然ということもある。

しかし、要約筆記者派遣事業が地域生活支援事業で市町村の義務的事業であるのは、上記のように住民に対する行政サービスや措置が市町村で行われているからだけであって、真に難聴者等が地域で生活するための要約筆記者派遣事業の意味はさほど考えられていないのではないか。

高齢者の入居している施設などので難聴者は施設内の行事などで要約筆記を利用できるだろうし、利用の拡大を図る必要があるだろう。
難聴者はコミュニケーションの障害ゆえに地域の人々、社会との関わりが薄くなってしまっているが、地域で暮らすと言うことをもっと幅広くかつ深く豊かにとらえたい。


ラビット 記

※夜中にご飯にすし酢をかけていなり寿司を作った。

要約筆記者が社会福祉を学ぶ意義

2010年10月10日 10時19分35秒 | 要約筆記事業
難聴者が地域で暮らしている以上、地域の福祉の中で支援が受けられなくてはならない。

地域福祉は社会福祉の重要な分野だ。

社会福祉法は日本の地域福祉法と言われている。
「地域福祉」の言葉を最初に用いた法律であり、社会福祉法の目的に地域福祉の推進が盛り込まれた(第1条)。
地域住民、事業者、活動者、利用者が相互に協力して地域福祉を推進するのとうたわれている(第4条)。
社会福祉事業法の行政・事業者中心のサービス供給から利用者主体の福祉サービスによる生活支援が基本理念としている(第3条)。

地域福祉は、これからの「地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008年3月)のように高齢、女性、児童、障害者など統合した地域福祉という新しい考えが打ち出され、障害者計画を含む地域福祉計画が策定されることになっている(第107条、第108条)など、難聴者も市民である以上、この枠組みの中で支援される必要がある。

難聴者を支援する時、どのような主権を持った法的存在なのかを理解し、地域福祉の理念と施策、社会資源を理解しなければ、要約筆記者派遣サービスが地域生活支援事業であることの理解も浅くなってしまう。

こうしたことを理解してこそ、難聴者の権利擁護だけではなく、要約筆記者自身の身分保障、報酬の確保の重要性の意識に高まる。


ラビット 記

難聴者、要約筆記と社会福祉

2010年10月09日 13時34分22秒 | 要約筆記事業
難聴者、要約筆記、社会福祉の関係を考える。

要約筆記は人の音声コミュニケーションにおいて、話を文字で伝える行為だ。

支援の対象となる難聴者は理解が難しい障害を持つ。
難聴者当事者にすら理解が難しい。
理解が難しいということが社会の理解が不足し、生活や就労に支援が不十分だ。
必要な施策が講じられずにまた受けられずにいる。

社会福祉というと、社会の弱者救済制度や福祉制度、法律をイメージするのかもしれない。
しかし、社会福祉とは人間と社会のありようを総合的に理解し、一人一人の人格と権利を認められる社会のあるべき姿を提示するものだ。

難聴という障害を持つことが社会の中でどのような影響を受けるのか、
例えば、病院や医師とのコミュニケーションがとりにくいことから受診や通院を避けるようになってしまう。
学習の理解度が深まらないまま社会に出る。
政治や文化の関わり方が狭くなる。

難聴者の支援に関わるとき、難聴という障害を持っていることが社会の中でどのような影響があるのか、理解しなければ支援サービスの意味も分からない。


社会福祉を考える際、障害をどのように見るのかが重要であり、支援サービスを利用して自立する、つまり自立のために支援サービスを開発、提供する、その提供の社会的構造、開発の技法まで検討していく。

制度にない支援サービスをソーシャル・アクションとして、地域の社会資源をつなぎ地域で実践し、制度へつなげることもする。

要約筆記者が社会福祉の事業を担うというだけでなく、優れたソーシャル・アクションの実践者として、成長していくこと、社会福祉を学ぶ重要な意味ではないだろうか。


ラビット 記

渋谷周辺を巡航するコミュニケーター

要約筆記事業の方向はどっちに。

2010年10月07日 19時24分24秒 | 要約筆記事業
情文センターに出された要約筆記者養成カリキュラムの案は2種類しかない。

社会福祉と諸制度をきちんと学ぶカリキュラムか、それを重視しないカリキュラムかの2種類。

要約筆記を日本語と話し言葉の特徴、脳内作業まで遡って、理解させるカリキュラムか、そこまで追及しないカリキュラムか。
対人援助の考え方を取り入れたカリキュラムか、相でないカリキュラムか。

比較するなら明確な違いは多い。


ラビット 記

全難聴の要約筆記事業の転換点

2010年10月07日 19時13分29秒 | 要約筆記事業
そもそも全難聴の要約筆記事業は2003年、全難聴と全要研で要約筆記奉仕員の資格化について取り組むことに合意していた。
その内容で厚労省に打診したところ、今後奉仕員は市民の自発的な活動が基本、財政も厳しくなる自治体、議会、国民の了解を得るにはもっと専門性のある事業にする必要があると指摘を受けた。

三位一体改革で財源の地方移行、支援費の急増などの制度変革の時だった。
2004年、障害者福祉のグランドデザイン案が発表され、今の障害者自立支援法につながる。

この2004年から福祉医療機構の助成事業で要約筆記事業の検討を始めたことから、全難聴の要約筆記事業は始まっている。
1年間かけて、「要約筆記通訳者制度のあり方」に関する事業報告をまとめた。
この要約筆記通訳者がいまの障害者自立支援法の要約筆記者に当たる。

その後の調査研究事業で解明したことは多い。

○社会福祉法第2種事業に指定された意味とその事業を担う要約筆記者の位置づけを理解。
○「二つの思想」と「5つの到達目標」に集約。
○要約筆記の専門性の解明。
○難聴者運動の限界とその理由。
○要約筆記事業における難聴者協会の役割を提起。
○要約筆記の技術の客観的な評価方法の開発。

この事業を通じて、日本の難聴者運動のレベルは高くなった。


ラビット 記

要約筆記事業の帰趨

2010年10月05日 18時49分58秒 | 要約筆記事業
要約筆記事業と障害者制度改革の関係がクローズアップされようとしている。

厚生労働省の指図の元で、要約筆記者養成カリキュラムの検討が続けられてきたが、いよいよ剣が峰に立った。

要約筆記「者」という意味をどのようにとらえるべきか。
要約筆記奉仕員より要約筆記がこなせる人としてか、それとも利用者の置かれた状況を基本的人権を守る立場で把握し、場面に応じた要約筆記をする中で、問題の解決のあり方を考える人か。

聴覚障害者のコミュニケーション支援にあたる手話通訳者と要約筆記奉仕員は養成の予算、派遣事業の予算と規模、報酬と謝礼の違い、金額の差が何故あるのか。

「者」と「員」の差は何か。
それを埋める要約筆記者の養成カリキュラムにはそれが明確なメッセージを持っている。


ラビット 記

昨日の中難協理事会の議案

2010年08月29日 09時16分11秒 | 要約筆記事業
一ヶ月ないし二ヶ月に一度の理事会なので議案は厳選される。
NPOの協会の事業を実施する上で理事会の議論と議決は非常に重視されている。
議案は必ず5日前に通知され、表紙付きの議案書、資料が準備される。

第一号議案として、月末及び来月の県議会レベルの政党のヒアリングの取り組みが提案され、これまでの要望書、当局も確認した交渉の記録、参照する条例などが資料として出された。

廃止された要約筆記者派遣事業を復活させるにはどういう論点から説明するか白熱した議論が展開された。

要約筆記はどういうものか改めて説明する、市町村の負担に格差を生じている問題は県レベル議員の関心を引くだろう、広域派遣事業は県レベルの事業であることを説明する、広域事業は県外派遣のイメージなので市町村を越える派遣事業と言うべき。区市の障害福祉課に要約筆記者派遣事業の問題点を言うと県レベルの当局から行われてやっているので責任はないと言われた、議員の理解度に合わせたシンプルな説明が必要。30分で要約筆記派遣問題を理解させるには無理。不十分。今回の30分だけでなくもっと議員との意見交換を密にすべきだ。

各政党ヒアリングには30分しかないが、OHPをヒアリング会場に持ち込んで実際に利用しながら議員と質疑応答する。

第3号議案の県レベルの事業である中途失聴・手話講習会の講師、助手の交代は報告、承認を受けた。
候補者は三役と事業委員会で理事会で定めた条件、資格などを基準に面接して、講習会に対する協会の考え方を確認することになっている。
講師や助手はやりたい人やってもらいたい人が担当するのではなく、難聴者等への自立支援の一環であるという事業の意味を自覚し、協会との関係を理解し、責任を持ってもらうためだ。


ラビット 記
第2号議案は、来年1月16日の中途失聴・難聴者
の集いの企画の提案だった。
企画は実行委員会が検討しているが、理事会ではその企画の視点や
予算の不備が指摘された。
実行委員長が、最近の会員は25年前のことを知らないので昔
のことばかり取り上げないでと実行委員会の考えを言うとすかさず
手が挙がり、協会の25年の歴史を知らないからこそ伝えなく
てはならない、これまでの25年間だけではなくこれからの
25年間を見られるように、協会内部の視点だけではなく外部の団体
から見た視点も必要など立て続けに厳しい意見が出た。
協会予算には集いの決算は10万円以上の黒字を見込んでいる
のでそれに責任をもって欲しい、予算の支出は必ず増加すること、
収入は流動的なことも勘案すべきだ。

障害者権利条約と要約筆記者の到達目標

2010年08月26日 21時11分12秒 | 要約筆記事業
先日、M市で「障害者権利条約について~通訳としての要約筆記~」と題して、要約筆記奉仕員研修会で講演した。

障害者権利条約の理念が実現した社会は要約筆記がいつでもどこでも利用できる社会ということは考えていたが、障害者権利条約のもとで求められる要約筆記者とはどういう要約筆記者かという視点はもっと掘り下げられるべきだろう。
その意味では、この講演のテーマに感謝したい。

障害は機能障害を持つ元と社会の態度と障壁との相互作用によって起こるという障害者権利条約における障害の定義はいわゆる社会モデルだが、6月29日に閣議決定された「障害者制度改革の基本的方向」の冒頭に「社会の在り方との関係でとらえる」と記述されている。

難聴者は社会の中でどのような状態に置かれているのか、そこをしっかりみないと(アセスメントしないと)より良い状態を目指すための課題と施策や計画が示せない。

要約筆記者は、手話通訳と同じように社会福祉法第2種事業として派遣される事業を担うことになっている。
しかし、社会福祉法第2種事業とは何か、この事業を担うとはどういうことか、権利擁護とは何かをきちんと理解しなければならない。

難聴者等は、日頃からコミュニケーションが阻害され、人や社会との関わりも薄くなったり断絶させられている。ICFのいうところの「参加」が出来ていない状態といえる。
難聴者は会議や地域の集まりで会話に加われず、電話して用件をすませることも会話も出来ないでいる(「活動」)。
多面的複合的に問題を抱えている存在だ。

単に聞こえないことを書いて通訳することがコミュニケーション支援ではなく、もっとその内容を豊かにとらえたい。
どうやって難聴者等を支援するか、要約筆記者自身は通訳すること、通訳利用の継続、派遣先の理解を深めるなどの働きかけを行うが直接的に難聴者等に関われない。

要約筆記者は要約筆記を利用する難聴者を観察し、どのような問題があるかを見る力が必要だ。
その上で、派遣元に問題点と課題を報告する。
派遣元は必要があれば行政や相談支援事業者、その他の支援機関等と連携して問題解決策を講じることになる。

権利擁護のために多面的に難聴者等に働きかけることを理解しているのが要約筆記者だ。
奉仕員より書けるのが要約筆記者ではない。
聞く権利だけを保障する権利擁護ではない。人権全体を擁護するのだ。


ラビット 記
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1 障害者権利条約に掲げられたこと
・すべての障害者が基本的人権を守られるべき(第1条、前文)
・障害の定義。発展途上の概念、社会モデルへの転換
・コミュニケーションの定義(第2条)

2 障害者制度改革推進会議と閣議決定
・各法律のロードマップ提示
・情報・コミュニケーションに関わる記載の問題点
・全難聴の要求

3 難聴者の基本的権利と要約筆記
・難聴者のコミュニケーションに対する要求
  音声社会に所属
・社会福祉法第2種事業としての要約筆記者事業の意味
・五つの到達目標の意味。

4 地域生活と要約筆記者養成事業
・難聴者施策を充実させるためには、地域での難聴者が施策を使って 日常生活を送っていることを社会のなかに印象付けること。

障害者権利条約と要約筆記

2010年08月04日 21時55分56秒 | 要約筆記事業
うーむ、「障害者権利条約と要約筆記」かあ。
今度の講演のテーマだが、今までありそうでなかった。

要約筆記が障害者権利条約の中にどのように位置づけられているのか、障害者権利条約に基づいて改正される障害者基本法、各種法律にどのように位置づけられるか、に付いて話せばよいのか。

いまから、メモを残しておこう。

○【定義】要約筆記は難聴者等のコミュニケーション保障の具体的な方法として定義されている。文字表記。

○【合理的配慮】要約筆記は難聴者等の権利を守る合理的配慮として、提供されなければならない。

○要約筆記はリアルタイム文字表記と表記の考え方も技術も異なるがどちらも合理的配慮として選択される。

○要約筆記者は社会福祉サービスを担う立場で養成される。都道府県の福祉事業として実施される。

○なぜ社会福祉サービスを担う立場なのか、難聴者等の抱える問題を、相談支援や社会参加促進事業、他の社会資源、社会福祉サービス、制度と連携して総合的に解決するため。

○リアルタイム文字入力は現場でも、テレビの字幕でも音声を文字に変換表示することで情報支援しようとするもので、社会福祉的な意味の支援は考慮されていない。

○たとえば、裁判員制度で裁判所に派遣されねばならないのは要約筆記者と文字入力者、音声の文字起こし制作者である。それぞれ機能が違う人々だから。

○難聴者側も要約筆記者を使いこなす力を身に付ける訓練というか学習が必要だ。
要約筆記と言うのは書き手にも読み手の難聴者にも新しいコミュニケーション方法だから。そのための「場」はどうするか。

○結果が文字で表されるので、要約筆記もリアルタイム文字表記も文字起こしも混同されやすい。
かつ文字にしても伝えられないものがあり、文字にしにくいものもある。

まだある。

ラビット 記

要約筆記奉仕員の制度上の役割

2009年11月08日 03時15分56秒 | 要約筆記事業
厚生労働省の要約筆記奉仕員のカリキュラムで養成された人は、何年活動されても制度的に要約筆記奉仕員でしかないというときつく聞こえるが社会に求められていることを思えば明確にしなければならない。

厚生労働省の要約筆記奉仕員のカリキュラム自体が、手話通訳者と手話奉仕員の二つのカリキュラムがある意味も内容を検討もしないで、策定されたからだ。
つまり検討の最初から要約筆記「者」を意識していなかった。

それは、手話通訳者養成・派遣制度の成立した過程も知らずに、要約筆記奉仕員の資格制度を作ろうとしていたり、福祉分野では何年も社会福祉基礎構造改革に関わる議論が続いていたが内容も知らずにいたからだ。

その頃は、要約筆記自体の普及に力が注がれて、難聴者運動の中心も耳マークの普及、字幕放送の普及、映画の字幕等の情報バリアフリーの取り組みに傾注していたからだ。
難聴者が組織的な活動をするのに不可欠な集団の民主的な討議を保障するものが長いことなかったこと、従って自治体に要求するための基盤がなかったのだ。

多くの難聴者協会が国際障害者年をきっかけに難聴者協会が結成されて増えてはいたが、難聴者組織が自治体、それも市町村に関わるまでには会員も具体的な事業内容もなかった。

要約筆記奉仕員は、カリキュラムが出来たことで全国の自治体に予算要求する理由になって、急速に各地で開かれるようになったが名称が奉仕員であることの限界は後々までついて回ることになった。


ラビット 記

要約筆記事業が市町村の義務的事業になった意味。

2009年10月19日 12時57分17秒 | 要約筆記事業
091017-140534.jpgこれは国と地方公共団体は人権を守る責務があり、人権を守る事業を公費で行わなければならない。
つまり要約筆記者派遣事業が人権を守るための事業ということだ。

派遣されるのは、要約筆記「者」としての派遣事業であり、要約筆記奉仕員ではない。


必須事業がどのように行われるべきか、障害者自立支援法が障害者 が地域で人権を保障された生活を送るための事業のあり方、給付の方法を示した法律である。

なぜ地域か。これは、社会福祉基礎構造改革で打ち出された社会福祉法でも「地域福祉」がそれまでの高齢者、女性、児童、障害者と縦割りのサービスではなく、地域で統合されて提供されるべきという考えがある。

私たち難聴者、中途失聴者が地域を意識することが少ないのは、コミュニケーションの障害のために地域との交わりが阻害されていること、地域との関わりを避けて来たことが要因だ。
難聴という障害は自分でも周囲にも重い障害と見られずに、自覚的に社会と関係を持つことが難しい。さらに、難聴者自助組織に加わるにも、地域的に集まったりすることが出来ない地理的な問題、体力的な問題、家庭環境等の問題があると難しい。

要約筆記事業(要約筆記者は検)が地域生活支援事業で実施されるという意味は、大きく分けて二つある。
一つは、これまで難聴者自助組織に結集していない難聴者、中途失聴者を支援するためである。
膨大な難聴者を支援するには地域社会の社会資源が難聴問題を理解し、多面的に関わる必要があるからだ。

もう一つは、難聴者であっても社会との関係性は地域から始まるということだ。これは、人のライフステージを見ても地域が基盤である。就労・就学しているかに関わらずどういう生活を送るかはどこに住むかから始まる。

防犯・防災は言うに及ばず、各種手続きも選挙も地域で行われる。
高齢者施設に入所していようと、域外の学校に通っていようと各種の行政サービスは住居のある市町村で提供される。

地域の中で、難聴問題が理解され、住民としての生活、自立した市民としての活動が保障されるには、地域で要約筆記者派遣事業が確立されなければ成らない。

問題は、この権利擁護の事業である要約筆記者を養成する仕組みが出来ていないことと約半数の市町村で要約筆記者を派遣※する事業が始まっていないことである。

※専門性のある要約筆記者の養成事業は都道府県事業


ラビット 記




新政権障がい者施策改革本部と要約筆記事業の方向(1)

2009年10月12日 20時32分22秒 | 要約筆記事業
091010-143242樹木と空155KB.jpg本来は、来年が障害者自立支援法の障害計画の見直しの年だが、新政権の長妻厚生労働大臣が障害者自立支援法の廃止を打ち出したことから、どのように新法が策定されるのかに注目が集まっていた。

日本障害フォーラムJDFが、障害者問題に取り組んできた障害者施策推進PTの民主党議員と会合の報告があった。
JDFは、障害者権利条約の批准とそれに合わせた法整備を最優先課題にしている。

会合では、障害者権利条約を基本とし、4月8日に発表した「障がい者施策改革推進法」を中心に進めること、障害者自立支援法は廃止するが廃止までのつなぎ措置をどうするか検討中とのことだ。
「障がい者施策改革推進本部」は改革法成立前にも発足させ、本部の下に置かれた検討の場で当事者を含む20人程度が施策を検討することになるようだ。

聴覚障害者の必要としているのは情報・コミュニケーション支援だけではないが、民主党の「障がい者施策改革推進法」案にも、その障害者福祉における「障害者総合福祉法」案にも聴覚障害者関係条項が極めて少ない。

聴覚障害者の「障害」が社会にも当事者にもわかりにくいこと、そのことも関係して、政府、行政も、私たち自身の取り組みがまだ不十分だったこともある。

聴覚障害者全体として、何を要求するのか、幅広い聴覚障害者の議論が欠かせないだろう。


ラビット 記