習氏に衛星写真見せ南シナ海軍事化抗議 ヘーゲル元米国防長官が明かす
2023/2/26 16:39
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南シナ海のティトゥ島から見える、スプラトリー(南沙)諸島の人工珊瑚礁上に立つ中国の建造物=2017年4月21日(AP)
【ワシントン=坂本一之】
チャック・ヘーゲル元米国防長官はインタビューで、ロシアのウクライナ侵略などが中国の台湾侵攻や核戦力増強を促す事態になることへの強い危機感を示した。
中国が南シナ海で岩礁を埋め立てて人工島を造成し軍事拠点化を図った問題では、国防長官として会談した中国の習近平国家主席に対し、人工島に関する衛星写真を見せて抗議したことを明らかにした。
ヘーゲル氏は、プーチン露大統領が米露間で唯一残る核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行停止を表明したことに関し、「核兵器を増やし続けている中国」のさらなる核戦力増強を招く恐れを指摘した。
新STARTが機能しなくなると、「米露が好きなだけ核兵器を製造できるならば、中国も製造できる」と中国が主張すると強調。
ロシアの行為は「非常に危険で、中国に核兵器増強の扉を開けることになる」と警鐘を鳴らした。
また、露軍がウクライナを占領することになれば、「第二次大戦以降の世界秩序の終焉(しゅうえん)となり、中国やイラン、北朝鮮に間違ったシグナルを送ることになる」と指摘した。
米国はグアムの米軍基地に加え、日本やフィリピンなど「インド太平洋地域の国々に米軍を派遣し、中国に『台湾を侵略するな』というメッセージを送っている」と述べ、侵攻を抑止する重要性を訴えた。
南シナ海問題では、2013~15年の国防長官時代に習氏と会談した際、衛星写真を見せて軍事拠点化につながる人工島造成などの動きを指摘したことを明かした。
習氏は米側の主張を受け入れず「楽しい話し合いではなかった」と述べ、緊張する場面があったことを示唆した。
当時、中国側は人工島に関して「商業」目的と説明していたが、米側は虚偽は認めないという姿勢で会談に臨んだという。
習氏に対し「米国は南・東シナ海だけでなく世界のあらゆる場所で、『航行の自由』への脅威に対処する」との考えを伝えたことも明かした。
米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に日本やインドが加わる議論については、「各国の判断だ」と述べた上で、「より強力で効果的なグループとなる可能性がある」と前向きな姿勢を示した。