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【防衛情報】シーウルフ級原潜衝突事故とイージス艦ダニエルイノウエ竣工,もがみ型輸出

2021-12-21 20:06:56 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は潜水艦から水上戦闘艦に揚陸艦まで海軍関連の話題について11の論点を集めてみました。

 アメリカ海軍の原子力潜水艦コネティカットが南シナ海海中を航行中に衝突事故を起こしました。コネティカットはシーウルフ級攻撃型原潜、10月初旬に事故が発生しています。アメリカ海軍が発表したのは10月7日であり、多数の負傷者が発生したと発表しています。事故にあったコネティカットは10月8日に自力航行しグアムのアプラ基地へ入港しました。

コ ネティカットが何と接触したかはアメリカ海軍は発表していませんが、CNN報道によれば元アメリカ海軍関係者の話として、南シナ海は多数の船舶が航行し海中騒音が多く、また海底地形がゆっくりと変化しており、海底地形図製図の重要性が高いと指摘しました。この海域では2021年4月にインドネシア海軍209型潜水艦の沈没事故も発生しています。
■イージス艦ダニエルイノウエ
 アーレイバーク級ミサイル駆逐艦も数が凄い事になっていますが、この一隻は一度見てみたいもの。

 新造イージス艦ダニエルイノウエが竣工し母港の真珠湾に向けて出航しました。ダニエルイノウエの艦名は上院議員として、また二世部隊として勇名を馳せた第442連隊戦闘団に所属した日系アメリカ人のダニエルイノウエ連邦上院議員仮議長の名を冠したイージス艦です。議員は2012年に亡くなっていますが本艦は2013年に起工、2021年竣工しました。

 アーレイバーク級ミサイル駆逐艦68番艦であるダニエルイノウエは満載排水量9648t、イージスシステムは最新のベースライン9を搭載しています。当初は2020年に竣工の予定でしたが、本艦を建造していたバス鉄工所でのCOVID-19新型コロナウィルス感染拡大により建造がおおきく遅れ、公試が完了したのが2月8日となり、2021年の竣工となりました。 

 ダニエルイノウエが配備されるパールハーバー近くにはハワイ州の現役部隊として第442連隊戦闘団の系譜の部隊が第25軽歩兵師団隷下に維持されているとともに、第7艦隊管内に配備されている事から、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の空母打撃群随伴艦等の任務として、系譜をたどる故郷の一つという日本の横須賀基地へも入港する事があるでしょう。
■トルコSTM-500潜水艦構想
 日本の潜水艦よりも小型といいますか特殊潜航艇並の大きさですので特殊作戦と沿岸部での運用に適しています。

 トルコの防衛企業大手STM社は8月、沿岸防備用STM-500小型潜水艦構想を発表しました。これは水中排水量540tの小型潜水艦で、トルコ海軍が運用する潜水艦は水中排水量1100tから1600t、将来導入されるレイス級潜水艦は2000tまで大型化する計画である為、水中排水量540tというものは沿岸用の小型艦、冷戦時代のドイツ潜水艦の大きさと同じ。

 STM-500潜水艦計画は、全長42mで浅海域での運用を念頭にしており、乗員は18名、安全航行深度は250m程度までをされ、ディーゼル発電機2基とリチウムイオン電池を搭載するディーゼルエレクトリック推進方式で、オプションとしてAIP非大気依存推進装置の搭載が可能、更に6名までの特殊部隊輸送能力を有し、最大30日間の航行が可能とのこと。

 500t規模の潜水艦は、秘匿性が比較的高く、特殊部隊輸送用のミゼットサブと比較すれば若干大型です、そして冷戦時代にドイツでは自国海軍向け潜水艦の排水量に第二次世界大戦後、長く厳しい制約が課された事から206型潜水艦として450tの潜水艦を採用、再装填装置の無い8基の魚雷発射管を搭載し有力な近海防衛戦力として運用した実例があります。
■ロシア,アドミラルゴルシコフ
 この戦略兵器の普及という新しい方針は日本としても注目すべきものではないでしょうか。

 ロシア海軍はフリゲイトアドミラルゴルシコフよりツイルコン極超音速ミサイルの発射試験に成功しました。これはロシアで毎年開催される陸軍2021フォーラムにおいて発表されたもので、試験は7月に実施、実弾射撃は10回以上に上ったとされています。ロシア海軍は更に11月にも連続した実験を行い、水上戦闘艦の打撃力を強化する狙いがあります。

 アドミラルゴルシコフは退役した航空母艦と重なる艦名ですが、2018年に1番艦が竣工したソブレメンヌイ級以来の新型水上戦闘艦で予算不足から建造に12年を要していました。既に2隻が竣工し最終的に15隻の量産を見込む。満載排水量は5400tで防空用に3K96ミサイルをVLSに32発搭載すると共に巡航ミサイル用UKSK-VLSを16セル有しています。
■イギリスF-35B空中給油
 イギリス海軍のF-35Bに新しい一歩が刻まれましたね。

 イギリス海軍の空母クイーンエリザベス艦載機はアメリカ海軍F/A-18Eより初の空中給油を受けました。これは10月3日に実施されたフィリピン海での日米英空母及びヘリコプター搭載護衛艦参加の合同訓練に際し実施されたもので、この訓練を最後に空母クイーンエリザベスとその随伴艦は、五月に出港したイギリスへ帰港へと進路を西に向けています。

 イギリスのF-35BはF/A-18Eより空中給油を受けていますが、これは増槽を転用したバディ給油方式により実施されています。この給油の夏季的な点は、これまでイギリス空軍のF-35Bはイギリス空軍のA-330ボイジャー空中給油機より給油を受けていますが、交戦空域近傍に進出し自衛能力も高い戦闘攻撃機より空中給油を受けたのは今回が初となります。
■ギリシャFDIフリゲイト計画
 アトミラールロナルク級に選定されるまでに中古艦の譲渡が二転三転した当たりがラファール戦闘機の輸出と似ている。

 ギリシャ海軍次期フリゲイト計画へフランスのFDIアトミラールロナルク級が選定されました。これは9月28日にギリシャのミツォタキス首相とフランスのマクロン大統領がパリにおける首脳会談を通じ公表されたもので、マクロン大統領は契約が防衛装備品供与に留まらず両国間戦略的パートナーシップという新しい防衛枠組一環であると強調しました。

 次期フリゲイト計画は元々MMSC戦闘艦計画として新型フリゲイト4隻とMEKO/イドラ級フリゲイト4隻の近代化改修及び建造期間中の既存艦等暫定艦2隻を50億ドルで取得する計画で、この計画には7か国が競合していましたが、その有力案がフランスのFDI新型艦とフリーダム級沿海域戦闘艦改良型によるアメリカのロッキードマーティン社案でした。

 フランスとの合意はアトミラールロナルク級3隻の新造と近代化改修に代える小型水上戦闘艦3隻及びギリシャ空軍へ配備されるラファール戦闘機6機のパッケージ案で50億ユーロ、若干予算を超過しています。当初はジョルジュレイグ級駆逐艦の暫定貸与も検討されていましたが、両国間戦略的パートナーシップを加味しギリシャがこの案を採用しました。
■アトミラールロナルク級
 フランスが採用する当たり多少は実用的な艦艇ということなのでしょうね。

 ギリシャ海軍FDI次期フリゲイトアトミラールロナルク級について。アトミラールロナルク級は防衛介入フリゲイトと位置づけられ、フランス海軍ではステルスフリゲイトとして知られるラファイエット級フリゲイトの後継艦に位置付けられています。ラファイエット級は通報艦任務に当るべくステルス設計に対し軽武装となっていましたが、本型は違う。

 アトミラールロナルク級は満載排水量4460tで全長122m、76mm艦砲とエクゾセblock3対艦ミサイル、及びアスター艦対空ミサイルを最大32セルのA50-VLSに搭載しMU-90短魚雷発射管を搭載、更にNH-90ヘリコプター1機します。フランス海軍へは5隻が配備予定、ギリシャ海軍へは一番艦が2024年引き渡し、更に1隻のオプションが見込まれます。
■もがみ型護衛艦に再注目
 インドネシアは巨大な海軍力を編成する様な動きを昨今みせていますが、中国への牽制の一方でオーストラリアを刺激している。

 インドネシア海軍は日本の護衛艦もがみ型に関する議会予算案を提示しています。インドネシア海軍は6月10日に沿岸作戦艦としてイタリアのフィンカンティエリ社よりカルロベルガミーニ級フリゲイト6隻の導入を発表していますが、選定に際しても護衛艦もがみ型輸出仕様は提案され、各国提示案のなかでもっとも大型のイタリア案が採用されました。

 もがみ型4隻。インドネシア海軍が先行してカルロベルガミーニ級フリゲイトを選定した際には、もがみ型でさえ過大な大型艦と考えられていたものを、更に大型艦が選定され世界を驚かせたことを思い出します。議会予算案は選定結果を示すものではありませんが、沿岸作戦用として新たに一回り小型の艦を別枠で必要とした可能性が考えられるでしょう。

 カルロベルガミーニ級フリゲイトは満載排水量は5950t、対して護衛艦もがみ型は基準排水量3900tで満載排水量5500t、若干小型となっています。大胆なステルス設計が外見上の特色ですが、一番艦もがみ竣工は2022年で現在公試中、対してカルロベルガミーニ級は2013年より運用され、アメリカ海軍やエジプト海軍と輸出実績の大きさで優位な点があります。
■ロシア原潜ツイルコン試験
 ツイルコンの配備を今後順調に拡大させアメリカを牽制させる方針ですね。

 ロシア海軍は10月4日、原子力潜水艦セベロドヴィンスクよりツイルコン極超音速ミサイルの発射実験を成功させました。これは北極海のバレンツ海において実施されたもので、ミサイルは2発が発射、内一発は水深40mの海中から発射され、ロシア領海内に設置されたミサイル標的に命中したとのこと。セベロドヴィンスクはヤーセン級原潜の1番艦です。

 ツイルコン極超音速ミサイルは射程1000kmから2000kmで音速の五倍という速力を発揮する。ヤーセン級原子力潜水艦は2014年より就役が始まった新型潜水艦で、水中排水量13800t、攻撃型原潜と巡航ミサイル潜水艦の二つの任務に対応します、ミサイル用VLSを8セル備えており、ツイルコン極超音速ミサイルは魚雷発射管等を通じ32発を搭載できる。
■アルズバラ級防空コルベット
 小型ではあるが防空艦という位置づけの艦艇で僚艦防空能力は小国には広域防空艦並に扱えるということですね。

 カタール海軍が発注したアルズバラ級防空コルベット三番艦アルホールが9月、イタリアで進水式を迎えました。建造はカルロベルガミーニ級ミサイルフリゲイトなどの豊富な経験を有するフィンカンティエリ社が担い、アルズバラ級は艦種こそコルベットに区分されていますが、満載排水量は3300tあり、フリゲイトに区分されるべき水上戦闘艦です。

 アルズバラ級防空コルベットは2017年にイタリアとの間で建造契約が画定し2018年にDIMDEX海事装備展にて4隻の取得が発表、一番艦アルズバラは2021年に竣工です。クロノス防空レーダーとアスター30艦対空ミサイル16発を搭載し一定の防空能力を有すると共に76mm艦砲やエクゾセミサイル、艦載機にはNH-90哨戒ヘリコプターを搭載します。
■フィリピン揚陸艦計画
 フィリピン海軍も編成強化を急いでいるもようですが日本の輸送艦よりも性能は劣るも安価そうで選択肢を感じますね。

 フィリピン海軍は10月、一時中断していた2隻の揚陸艦調達計画を再開しました。フィリピン海軍にはインドネシアのPTパル造船所が建造した、ターラック級揚陸艦2隻が配備されていますが、今回新たに同型艦かその発展型、若しくは全く別の揚陸艦を構想しており揚陸艦2隻と揚陸艇4隻及び複合高速艇4隻を1億1010万ドルにて導入する計画です。

 ターラック級揚陸艦は2016年に就役、全長123mで満載排水量11583t、MAN社製ディーゼルエンジンを搭載し16ノットの速力を発揮、最大500名の兵員を輸送可能で、ウェルドックにはフィリピン海兵隊の運用するAAV-7両用強襲車を、飛行甲板からはA-109軽ヘリコプターの運用が可能です。PTパル造船所のほか、韓国の大宇造船も入札へ参加します。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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