北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【くらま】日本DDH物語 《第三五回》はるな誕生、設計に影響を与えた護衛艦たかつき型

2018-02-10 20:03:20 | 先端軍事テクノロジー
■国産大型護衛艦建造の系譜
 ヘリコプター搭載護衛艦はるな建造、新しい防衛装備体系整備の着手はしかし一朝一夕に為されたものではなく、国産大型護衛艦建造の系譜の延長線上にありました。

 はるな型護衛艦の長崎での建造にあたって、その設計に大きな影響を及ぼした護衛艦が第二次防衛力整備計画において建造された護衛艦たかつき型です。一番艦たかつき竣工は1967年で、同型艦4隻、たかつき、きくづき、ながつき、もちづき、が建造されています。はるな型護衛艦はヘリコプター搭載護衛艦ですが、武器システム等は、たかつき型設計を応用した。

 たかつき型護衛艦は海上自衛隊創設と同時にアメリカ海軍より供与された第二次大戦型駆逐艦の後継という位置づけであり、アメリカ海軍ではこれら第二次世界大戦型駆逐艦に対しFRAM改造、艦隊段階近代化計画を行い戦力の維持を図ったのに対し、海上自衛隊では老朽度合いの非均衡や同型艦総数の多寡から生じる費用対効果の視点で新型を建造します。

 第二次大戦型駆逐艦の更新を図ると共に第二次防衛力整備計画当時では海上自衛隊では近い将来に想定される小笠原諸島返還、奄美諸島返還、沖縄返還を見越した外洋作戦能力の強化を行う必要があり、この施策として護衛艦隊の強化整備が必要とされていました。当時護衛艦隊は3個護衛隊群編成、しかも内1個護衛隊群は沿岸用護衛駆逐艦主体編成です。

 国産護衛艦は併せて第二次世界大戦型駆逐艦において設置されていたCIC戦闘指揮所、この設計自体が旧日本海軍の駆逐艦に対し、情報集約と情報整理に指揮統制を包括化した先進的な設計だったのですが、このCICの容積等で流石に近代化による拡大の上限が厳しく、新しく設計する必要がありました。国産艦は改めて新世代の設計へ脱却を図ったといえる。

 マック構造、煙突とマスト部分の一体化構造などはヘリコプター搭載護衛艦はるな型、しらね型が現代のガスタービン艦主流時代において最後までその象徴的な艦容となっていましたが、マック構造を採用した最初の艦も、たかつき型です。防衛庁はマック構造採用へ防衛産業と共に視察団を編成し、アメリカ海軍のレイヒ級ミサイル巡洋艦へ派遣しました。

 ガスタービン艦主流の時代にあって、上部構造物の巨大な吸排気機構は見慣れたものとなりましたが、排気量がガスタービン艦程大きくない蒸気タービン艦にとり、特に海戦の様相を左右する電装設備、各種レーダーを搭載する上部構造物と吸排気施設は限られた上部構造物上に相容れぬ重要な構造物で、マック構造はこの一体化による効率化を期したもの。

 はるな型護衛艦は、OPS-11B対空レーダー、OPS-17対水上レーダー、NOLR-5電波探知装置を艦橋と一体化させたマックに搭載しています。OPS-11対空レーダーは八木アンテナ28本をパラボリックシリンダー型立体並列化した戦後初の二次元対空レーダーでBバンド電波帯を独自研究御圧縮技術送受信機構を備え、最大探知距離450kmという性能を誇る。

 OPS-11B対空レーダーをマック構造に搭載した護衛艦たかつき型の設計は、はるな型へ継承されるとともに、Bバンド帯の長距離索敵能力は続くミサイル護衛艦たちかぜ型、はたかぜ型へ搭載されています。実はOPS-11は護衛艦やまぐも型搭載用にアメリカへ発注したSPS-40供与が間に合わない事で設計された機種でしたが、比較的完成度の高いものでした。

 きくづき舞鶴配備時代、護衛艦きくづき体験航海に乗艦する機会に恵まれました、当時護衛艦はるな佐世保配備時代でしたが、初めて護衛艦はるな艦容を間近に眺めた際、似ていると感じたものです。それはソナー配置とマック構造、電装品などに共通点があった為に当然といえば当然でした。国産艦故の新型艦開発を通じた技術発展の一例といえましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平成二十九年度二月期 陸海... | トップ | 【日曜特集】富士学校創設63... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

先端軍事テクノロジー」カテゴリの最新記事