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航空防衛作戦部隊論(第四九回):航空防衛力、戦闘機二八〇機作戦能力の再検討

2017-07-24 22:02:41 | 防衛・安全保障
■航空防衛作戦部隊論総集編
 緊急発進回数が遂に一〇〇〇回を越え冷戦以上の緊張度を迎えた現代、情勢は緊迫度を増してきたところ。

 航空防衛作戦部隊論、として特集記事を連載して参りましたが、この当たりで幕間としまして。総集編的な掲載とします。本特集を開始した当初は中国軍機による歴史的な規模での防空識別圏侵入が増加し、戦闘機は十分足りているのか、との一般論への回答として、運用面を強化するならば、現在の戦闘機定数280機あれば対処し得る、という論理です。

 戦闘機定数280機、という規模は航空自衛隊が冷戦時代に保有した350機という部隊規模と比較すれば確かに縮小していますが、戦闘機が縮小した一方で二桁物数の早期警戒機及び早期警戒管制機を運用し、輸送機も大型化を続けています。そして冷戦後の各国空軍力を俯瞰しますと、戦闘機世代交代による運用費用増大は戦闘機数縮小を余儀なくしました。

 280機という日本の戦闘機部隊は欧州NATO諸国と比較すればF-4という旧式機が含まれるものの恵まれています。イギリス空軍はEF-2000戦闘機125機とトーネード攻撃機が98機の戦闘機数223機です。フランス空軍はラファール戦闘機95機とミラージュ2000戦闘機124機の219機とのこと。ドイツ空軍はトーネード攻撃機が68機とEF-2000戦闘機109機の177機です。280機は多い。

 欧州各国との比較を重ねますと、イタリア空軍はEF-2000が76機にトーネード攻撃機78機とAMX軽攻撃機67機の221機です。スペイン空軍はEF-2000戦闘機43機にF/A-18戦闘攻撃機86機の合計129機という。オランダ空軍はF-35戦闘機2機を受領しつつ主力はF-16戦闘機61機の現時点63機です。NATO全体での戦闘機合計は大きいのですがね。

 環太平洋地域の空軍力はオーストラリア空軍がF/A-18F戦闘攻撃機24機にF/A-18A/B戦闘攻撃機71機の合計95機を運用、カナダ空軍はCF-18戦闘機のみ92機を運用しています。我が方航空自衛隊は要撃機の他に訓練機として運用される機体や試験機を含めればF-15戦闘機200機とF-2支援戦闘機80機にF-4戦闘機50機の以上戦闘機330機です。

 安易に戦闘機を造成すべき、という視点は簡単ではあるのですが、財政上難しく、欧州各国を個別に見るならば、280機の戦闘機定数は恵まれている状況です。ただ、日本が正面から突き付けられている脅威度合を考えますと、280機が過大であるという論理には至りません、それだけ中国軍の戦闘機は多く、しかも日本を戦闘行動半径に含めるものが増えた。

 中国空軍の2015年における作戦機は、ロシア製Su-30戦闘機73機、Su-27戦闘機75機、J-16としてSu-30の中国ライセンス生産機が24機、J-11、Su-27中国ライセンス生産機が205機、所謂フランカーシリーズで377機、イスラエルよりラビ戦闘機の技術援助を受け開発されたJ-10戦闘機250機で生産継続中、自衛隊の脅威となる機体は概ね637機です。

 日本がこの状況でも航空優勢を確保するには、機動運用部隊という視点を示しました。航空団を大型化し各航空方面隊に一個航空団を置く、航空団は隷下に三個航空隊を配置し現在北部と中部に西部の航空方面隊に各二箇所維持される要撃部隊基地へ三個航空隊を配置する、有事の際には一個航空隊を即座に脅威正面へ緊急展開し第一線を増強、というもの。

 臨時分屯基地として増援は航空攻撃の圏外にある民間空港へ飛行中隊単位で展開、分散配置する事で強靭な防空能力基盤を維持し、既存基地を拠点航空基地とし、兵站維持の拠点とする試案を提示しました。これにより第一撃の損耗から防空能力再構築と本格的な反撃に転換するまでの暫定手段です、これにより数的劣勢下でも防空任務を維持できましょう。

北大路機関:はるな くらま
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